【意見書】福島原発周辺住民に対する不当な差別に関するステートメント

福島原発周辺住民に対する不当な差別に関するステートメント.pdf


 東京に本拠を置く国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(以下「HRN」という)は、福島第一原子力発電所(以下「福島原発」という)周辺住民に対する不当な差別について重大な懸念を表明する。

 新聞等マスメディアからの報道によれば、福島原発事故発生後、旅館やホテルが福島県民の宿泊予約を拒否したこと[1]、他県へ避難した児童が避難先の小学校で「放射線がうつる」といじめられたこと[2]、他県への転入に際して放射線量検査(スクリーニング)を求められたこと[3]等、福島原発周辺住民に対する受入れ拒否が発生している。

これらの受入れ拒否行為は、福島原発周辺住民は福島原発事故により放射線に被ばくしており、福島原発周辺住民を受け入れると放射線被ばくが受入れ先にもうつり、二次的に放射線被ばくが生じてしまうとの認識に基づいているものと思われる。

 

しかしながら、放射線被ばくが福島原発周辺住民から受入れ先へとうつることはない。

このことは、独立行政法人放射線医学総合研究所発表の平成2348日付「放射線被曝に関する基礎知識サマリー版第1号」[4] などから既に明らかである。

上記受入れ拒否や差別的行為は、誤った認識に基づく不当な差別であり、日本国憲法で保障され た原発周辺住民の平等権や平穏な生活を営む権利を侵害するものである。

また、上記受入れ拒否行為は、「すべての人は法の下に おいて平等であり、また、いかなる差別もなしに法の平等な保護を受ける権利を有する。すべての人は、この宣言に違反するいか なる差別に対しても、また、そのような差別をそそのかすいかなる行為に対しても、平等な保護を受ける権利を有する。」とする 世界人権宣言第7条をはじめとする国際人権法に明白に違反するもので ある。

HRNは、福島原発周辺住民に対する不当な差別を強く非難し、こうした差別行為がただちに中止されるよう求める。

HRNは、日本政府、都道府県、市町村及び関係機関に対し、福島原発周辺住民に対する不当な差別を これ以上起こさないために必要な全ての具体的措置をただちに実行に移すことを求める。

  HRNは、法務省人権擁護局が、平成23421日付「放射線被曝についての風評被害に関する緊急メッセージ」を発表し、 この差別に対して迅速な対応姿勢を示したことは支持する。

しかしながら、上記メッセージは個々人の「やさしさ」による対応を求めているにとどまり、放射線被ばくが福島原発周辺住民から受入れ先へうつることはない旨を明記しておらず、差別への十分な抑止力とはならないことを危惧する。

HRNは、日本政府、都道府県、市町村及び関係機関に対し、外部被ばくと内部被ばくが異なること、避難してきた福島原発周辺住民を受け入れたとしても放射線被ばくが受入れ先に拡散するものではないことについて、正確でわかりやすく、かつ具体的な例示(児童同士で 遊んだり入浴をともにしたりしても被ばくがうつるものではないこと等)を多数記載した公的資料を直ちに日本国内外に発表し、上記受入れ拒否行為が不当な差別であることを周知するよう求める。

放射線による身体への影響を最も恐れているのは、他ならぬ福島原発周辺住民である。現在も不 自由な避難生活を強いられている多くの福島原発周辺住民は、プライバシーや平穏な生活を営む権利を十分に享受できない状況が 依然として続いており、放射線に関する正確な情報を入手することも困難な中、絶えず放射線の恐怖に晒されている。受入れ先以上に放射線の影響について懸念しているのは福島原発周辺住民であるにもかかわらず、誤った認識に基づいて差別することは、重大な人権侵害そのものである。 

同時にHRNは、日本政府が福島第一原発事故に起因する放射能汚染による健康被害から周辺住民を保護するための必要な対策を講じる責務を果たすよう強調する。国は、内部被ばく等により健康被害が懸念されるすべての人に対して、正確な情報を提供するとともに、医療ケアを含めた必要な対策を講じなければならない。

 最後にHRNは、 福島原発周辺住民に限らず、全ての被災者が差別されることなく平等に平穏な生活を営む権利を有することを確認し、福島原発周 辺住民を含めた被災者がいかなる差別も受けることなく基本的人権を享受できるよう、保障されなければならないことを強調する。 震災により平穏な生活が覆された被災者こそ、平等に平穏な生活が営めるよう、手厚い支援と温かい受入れが必要である。