【記録】UN Womenアジア太平洋地域ディレクター招聘企画 国際スタンダードに基づくDV法等の改正に向けて 2012/12/1

UN Women アジア太平洋地域ディレクター招聘企画
国際スタンダードに基づくDV法等の改正に向けて

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2012 年12 月1 日(土)
青山学院大学 青山キャンパス

女性に対する暴力は世界でも日本でも深刻な人権侵害です。国連は、2008 年から「団結しよう、女性に対する暴力を終わらせるために」のキャンペーンを繰り広げ、2015 年までにすべての国が国際的な人権基準による国内法を制定することを目標にしています。HRNは、NPO法人全国女性シェルターネット及び青山学院大学人権研究会と共催で、「国際スタンダードに基づくDV防止法等の改正に向けて」と題するシンポジウムを開催( 後援:UN Women 日本事務所、日本弁護士連合会、ジェンダー法学会後援)。多くの参加者を得て、女性に対する暴力を根絶するために必要な法改正や制度のあり方を活発に議論しました。

女性に対する暴力への取組みと今後のDV法へ向けて

シンポジウムでは、2010 年に発足した国連の女性に関する新しい機関UN Women のアジア太平洋地域ディレクターであるロベルタ・クラーク氏が基調講演を行いました。クラーク氏は、これまで数十年に渡る女性の暴力の根絶を目指す運動の進展のなか、各国で法律が改正され、女性たちが暴力の被害を訴えて救済を求めることができる状況が作り出されてきた一方、いまだに女性に対する暴力が世界に広がっている状況だと指摘。その背景として、女性自身が暴力を受けていることに恥じらいや屈辱を感じて名乗りをあげられないこと、また、司法に対する不信感などがあると説明しました。

女性差別撤廃条約(CEDAW)が成立し、その後、女性に対する暴力を差別として明確に位置づけるようになり、その後の1993年の女性差別撤廃宣言において、女性に対する暴力が定義されたことが紹介され、国際レベルにおいて女性に対する暴力が人権侵害として捉えられるようになった経緯を説明しました。

さらに、クラーク氏は、こうした国際法上の発展を受けて各国でDV 法等の国内法制定・改正が進んだことを紹介。 特にクラーク氏がこの間の法改正の新たな展開として強調したのが、保護命令制度の導入です。女性が危険を感じ保護が必要と感じたら、すぐ申立をすることができる制度を創設し、迅速な判断で保護命令をだし、刑事訴追までは考えていない女性たちへの暴力からの保護の方法として、適切なオプションを提示した意義を強調しました。

また、クラーク氏は、今後のさらなる法改正について、世界各国のDV 法のベストプラクティスを紹介、日本の法改正への提言として、①DV の定義を包括的にし、デートDV も含め、親密な関係で発生する暴力を包括的に対象とすること、②DV の定義の拡大に伴い、保護命令の対象も拡大すること、③保護命令の期間の延長、などを提案。さらに、加害者に対する心理的なカウンセリングの必要性についても言及されました。


日本におけるDV、ストーカー関連法の現状

次にHRN女性の権利プロジェクトの片岡麻衣会員より、日本のDV 法の概要やDV、ストーカーの相談件数、保護命令申立件数などの報告がありました。当事者や支援者からのアンケートの結果が紹介され、現状において、保護命令について時間が掛かりすぎること、DV に対する裁判所の無理解・暴力を過小評価すること、再度の保護命令が非常に難しいことなどの問題点が浮き彫りになりました。

そして、このような問題点が顕在化した不当な裁判例が2つ紹介され、そのうちの1件の当事者とその家族が直接体験をお話してくれました。当事者のお話からは、いかに女性がDV によって全てを奪われ、さらに裁判手続がいかに理不尽に救済を拒絶したのかがひしひしと伝わり、会場は衝撃に包まれました。当事者を支えた家族のつらさも伝わってきました。

国際スタンダードに基づくDV 法の改正に向けて

基調報告の後には、HRN副理事長の後藤弘子氏をコーディネーター、HRN理事・女性の権利プロジェクトの雪田樹理氏、全国女性シェルターネット共同代表の近藤恵子氏、ロベルタ・クラーク氏をパネリストとして、パネルディスカッションを行いました。まず、雪田氏は、国連が世界各国の女性に対する暴力に関する立法のベストプラクティスをもとに、国際スタンダードの女性に対する暴力に関する立法のあり方を国連が公表した「女性に対する暴力に関する立法ハンドブック」(2010 年発行・HRNが翻訳書を出版) をもとに、日本のDV 法が国際スタンダードといかに乖離しているかを説明。日本のDV 法は、他国の法制に比べても被害者のニーズや体験をどう反映させるのかという視点が弱いと指摘し、国際スタンダードに基づく法改正の必要性を強調しました。

近藤氏は、現場から見た現行DV 法の課題として、官民の支援格差が深刻になっている現状や、DV 法施行以降保護命令の運用が後退している事実を詳細に報告。今後の法改正に向けて、対象の拡大と保護命令の拡充、特に緊急保護命令の導入の必要性について述べました。これらの発言を受けて、DV 法改正、特にデートDV にまで対象を拡大する必要性や諸外国の経験について議論が深められました。

また、日本においてもワンストップの支援センターが少しずつ進んでいるが十分でない現状が指摘され、ロベルタ氏からは、保護命令申請と同時に、住宅支援等様々なサービスも開始され、女性が一ヶ所にいけば包括的なサービスを受けられる体制が提案されました。そして、保護命令をはじめ、女性の権利に関して無理解な司法をどう変えていくか、法改正が仮に実現しても実効性を担保するために制度を運用する側の意識をどう変えていくのかが問題提起され、警察・司法関係者への研修の必要性とともに、近藤さんからは「警察官・裁判所が必ず守るべき具体的なDV 対応マニュアルを、当事者の意向を汲んで作る必要がある」との提起がありました。

記録・資料
http://hrn.or.jp/activity/1942/