【声明】新型コロナウィルス対策としてDV被害者支援の充実を求める

ヒューマンライツ・ナウは「【声明】新型コロナウイルス対策として DV 被害者支援の充実を求める」を発表いたしました。

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【声明】新型コロナウイルス対策として DV 被害者支援の充実を求める

2020年4月22日

国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ

 

新型コロナウイルスは日本においても感染が拡大し、4 月 17 日には、当初 7 都府県を対象とした緊急事態宣言の対象区域を全都道府県とする変更がありました。阪神・淡路大震災や東日本大震災時の経験からも、外出自粛と経済の悪化に伴う DV 増加および深刻化が懸念されています。

 

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、4 月 5 日に DV 増加に対する警告を出し、具体的な提言として、UN Women が、各国政府へ向け、『新型コロナ対策のためのチェックリスト』および『女性と新型コロナ:各国政府が今すぐできる 5 つのこと』を発表しました。政府が感染防止策を取るにあたり、DV 被害者への支援の充実を求め、以下のとおり、施策を講じることを要望します。

 

1 DV や虐待の被害者相談窓口の増設
緊急事態宣言ののち、相談センターが面談を中止するところが多く、また相談のために公共交通機関を利用し移動することが躊躇われることから、DV が悪化していても相談支援につながりにくくなっている現状があります。また外出自粛に伴い、虐待するパートナーや家族が常に家にいるなか、通報や避難がより困難になっています。加害者が自宅にいても安全にアクセスできる、終日対応可能な相談窓口の増設が求められます。4月 20 日から SNS やメールでの相談が、また 4 月 29 日から 24 時間対応可能な電話相談が『DV 相談+(プラス)』として開始されますが、その実効的な施行と真に必要としている人々への周知徹底を求めます。

 

2 安全な通報システム作り
警察への通報に関しても、被害者が安全に通報できるような仕組みが必要です。例えば英国では、警察に通報をする際、声を発することなく、咳などのサインで助けを求めることできます。このような仕組みが確立するよう、警察内での徹底的な訓練とマニュアルの作成を求めます。

 

3 速やかに一時保護に繋げるシステムの構築と期間の延長
今後 DV の増加が予想されますが、新型コロナ感染予防対策に追われる都道府県では、一時保護等の措置業務に遅れが生じることが懸念されます。したがって、相談窓口の増加のみならず、速やかに一時保護に繋げるシステムの構築を求めます。一例として、被害者が市町村や民間シェルターに逃げ込んだ際に、配偶者暴力相談支援センターが市町村や民間シルター等による被害者保護を尊重し、一時保護を直ちに開始するように求めます。その際、緊急事態宣言が適用される期間をカバーするよう、通常 2 週間である一時保護の期間を延長するよう求めます。

 

4 保護施設における感染予防および感染者が出た際の配慮
万全の感染予防対策を実施するために必要な石鹸、消毒剤、手指消毒剤などの必需品を、委託先を含むすべての保護施設に過不足なく継続的に配布することを求めます。また、保護施設の利用者やスタッフに感染者が出た場合、濃厚接触者情報を含め、すべての情報の秘匿が確保され、個人情報や保護施設の場所が公表されないよう配慮を求めます。

 

5 経済支援策案における被害者への配慮
昨今様々な経済支援策案が政府より出されていますが、住民票を移さず避難しているDV被害者もいることから、それらの支援が世帯を対象としたものではなく、個人が対象となるよう求めます。また、万が一世帯を対象として行われる支援に関しても、住民票を移さず避難した被害者が支援を受けられるよう、柔軟な対応と配慮を求めます。さらに、銀行口座を持たない被害者のために、民間支援団体が被害者の代わりに申請し被害者に渡す等の対応を求めます。

 

6 DV に関する利用可能なサービスの公表
例えば、英国では内務省の HP に DV 被害者支援をする NGO の一覧や緊急連絡先の情報を公開しています。日本の場合、政府広報オンラインや内閣府男女共同参画 HP にて相談ナビダイヤルや配偶者暴力相談支援センターの案内がありますが、NGO や弁護士らが提供する支援の記載はありません。支援を必要とする人々がいち早く情報を得られるよう、NGOや弁護士らの支援の情報も含めた、充実したウェブサイトの設置を求めます。また、日本語を第一言語としない被害者が情報にアクセスできるよう、政府広報オンラインや内閣府男女共同参画 HP の多言語化を求めます。

 

7 差別禁止と脆弱な人々の保護の徹底
DV 被害者への支援は、性別、性自認、性的指向、年齢、障害の有無、民族、国籍の差別なく実施される必要があります。危機の際、排外主義や差別が深刻化しやすい傾向が見られますが、政府は外国人や民族的マイノリティが DV の被害者である場合にも同様に支援をすることを明確に表明するべきです。ヒューマンライツ・ナウは政府と当局に対し、この義務を誠実に履行することを要請します。

 

以上