【NY事務所】ニュースレター2019年6月号

Monthly E-Newsletter
June, 2019

 

 

 

 

 

 

 

6月6日、お昼時の国連内の広場では、世界中の国の料理が出店中でした。上から時計回りに、モロッコ、イラン、スリランカ、パラグアイ、パレスチナ。普段は政治的に対立している国々の国旗を掲げたお店が、晴れた青空の下で仲良く並んでいます。こんな争いのない、全ての人がささやかな幸せの一時を感じられる平和な世界が実現したら素晴らしいです。


紛争における市民の保護ウィーク(5/20~5/24) 報告
Protection of Civilians Week

「武力紛争における市民の保護」が国連安保理のアジェンダに追加されたのは20年前。けれど今日でも、多くの罪のない市民の負傷・死亡が世界各地で報告され続けています。

安保理では毎年5月に「武力紛争における市民の保護のOpen Debate」が開催され、その週は市民の保護ウィークとして様々なサイド・イベントが行われます。国連平和維持活動(UN Peacekeeping Operation) に市民の保護の任務を初めて取り入れた安保理決議1265と1270は、今年20周年を迎えました。また、1949年ジュネーブ条約も今年で70周年を迎えました。これらを機に、いろいろな問題点やジレンマが共有されました。また、市民の保護に更なる力を尽くすよう要請するNGO共同声明が、安保理メンバー国や国連事務総長や国連加盟国に向けてリリースされました。


 

写真(上)は5月21日の「市民の保護の優先」(Prioritizing the Protection of Civilians) と題された討論会の様子。この20年間で、武力紛争における市民の保護への責任に対する意識は向上してきてはいるようです。しかし、市民への攻撃が実際にどれだけ残虐でインパクトのあるものなのかを、安保理会議に参加する代表者らなどにもっと知ってもらう必要があることが強調されました。武力紛争の一般市民への被害をなくすために活動するCIVIC代表からは、イエメン、イラク、アフガニスタンなどを例に挙げながら、人口密集地域における爆撃を避けるためには軍関係者のトレーニング強化が必要である点が訴えられました。


Side Event 2: ジェンダーと虐殺
Gender and Genocide

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真(上)は、5月22日の「ジェンダーと虐殺」(Gender & Genocide)と題されたサイド・イベント。Global Justice Center と ICRtoPによる共催の本イベントでは、 女性に対する性暴力の実態と、アカウンタビリティの必要性が共有されました。

虐殺という状況下で武器として行われる女性への無差別レイプは、ジェンダーに基づく暴力の最たるものです。パネリストらによると、虐殺を理解する上でジェンダー分析は重要なポイントだそうです。女性へのレイプが虐殺で武器として用いられる理由のひとつに、社会の受ける打撃の大きさがあります。多くの国や地域では、男性は地域社会の保護人と見なされており、妻や娘などをレイプされることは男性にとって大きな屈辱であり打撃です。男性は「女性や子どもたちを守れなかった敗北者」といったレッテルを貼られ、女性自身もレイプによる肉体・精神的なショックに陥り、地域社会全体が崩れてしまいます。命を奪う行為だけでなく、そのような戦術や虐殺以前のプロパガンダなどのプロセスも全て「虐殺」と見なされるそうです。

パネルではまた、性暴力へのアカウンタビリティについて討論されました。パネリストの一人でロヒンギャのアクティビストのRazia Sultanaさん(写真左から二番目)は、これまでも国連の安保理などでミャンマー軍によるロヒンギャ女性のレイプに関して証言してきました。しかし、アカウンタビリティが問われるまでの道のりは長く、「被害から十年、二十年後に罪が問われるのでは遅すぎる。証言する被害者の行方も分からなくなっている。」と、焦りや不安を訴えました。他のパネリストからも、各国政府がアカウンタビリティに向けた行動を起こすよう呼びかけられました。根気強く呼びかけ続けることの重要さを再確認させられるイベントでした。


Side Event 3: ACTグループによる「安保理における虐殺・非人道的犯罪・戦争犯罪に関する決断のための行動規範」の実施の促進
Promoting the implementation of the code of conduct regarding Security Council action against genocide, crimes against humanity or war crimes as elaborated by the ACT Group

写真(上)は5月24日の表題のサイド・イベントの様子。スウェーデン、ベルギー、クウェート、リヒテンシュタイン国連代表部による共催。虐殺・戦争犯罪・人道に反する犯罪などに対する行動規範の実施をもっと安保理内で促進させようというのが主旨でした。

大規模の非道・残虐行為が世界各地で行われる中、安保理では一定の国の意見不一致などにより、それらを阻止したり罰したりすることができない状態が続いています。この安保理の障害ともいえる「拒否権の行使」をなくすのは至難の業である中、戦争犯罪や非道行為に関する決断を取る際の行動規範への署名の動きも出ています。

2015年の7月にACTグループ(Accountability, Coherence, Transparency) がローンチしたこの行動規範は、国際法に反するような非道行為や戦争犯罪の明らかな証拠が揃っている場合、15ヶ国の安保理メンバー国は反対票を入れないよう呼びかけるものです。2019年5月の時点では、119ヶ国が上記の行動規範を支持しているものの、多くの国がそれに署名することが求められています。


AIテクノロジーでオンライン上の性的虐待・搾取から子どもたちを守ろう!
Online child sexual exploitation and abuse

子どもに対する暴力撲滅のためのグローバル・パートナーシップであるEnd Violence Against Children が、6月7日にNY市内でイベントを開きました。「オンラインで子どもたちを守るための人口知能AIへの投資」”Investing in AI to make children safe online”と題された本イベントでは、End Violence Against Childrenが今年の夏に新しく始める基金についての説明がありました。

1600万ドルのこの基金の目的は、子どもたちに対するオンライン上の性的搾取・虐待を、人口知能技術などの力で解決しようというものです。助成金の対象となる非営利団体や国際団体や学術研究機関を募集するほかに、Equity-free投資の対象となりうる子どものための解決策に取り組んでいるテクノロジー会社なども探しています。

すでに助成金を得て活動中の団体であるTHORNからは、児童ポルノや虐待などのライブ中継を阻止するための活動などが共有されました。オンラインという誰でもアクセス可能でありながら人間の介入が難しい独特な空間では、子どもの安全を監視しきれない問題があります。まだまだ未開拓の分野ではありますが、人口知能への投資を子どもたちの安全に繋げようとするコンセプトには、注目すべきものがあります。


アラバマ州の新しい中絶禁止法の撤廃を要求する声明文を発表!

2019年5月15日、アメリカ合衆国アラバマ州では、妊娠中絶を禁止する新しい法律が定められました。近親相姦、レイプなどによる妊娠ケースも含めほぼ全面的に中絶を禁止するこの法律は、女性の自律性と自己決定権を軽視したものとして、ヒューマンライツ・ナウが法の撤廃を要求する声明を出しました。ボタンクリックで、日本語と英語の声明文がご覧になれます。


世界人権宣言

~第9条~

何人も、ほしいままに逮捕、拘禁、又は追放されることはない。


今月もご拝読ありがとうございました。
これからもヒューマンライツ・ナウNYをよろしくお願いします。
hrnnyinfo@gmail.com