【要請書】国連「健康に対する権利」に関する特別報告者アナンド・グローバー氏の勧告を受け、原発事故に関わる健康管理調査についての要請書

ヒューマンライツ・ナウは、<
国連「健康に対する権利」に関する特別報告者アナンド・グローバー氏の勧告を受け、<
原発事故に関わる健康管理調査についての要請書を公開いたします。<
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以下、本文です。<
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内閣総理大臣 安倍 晋三 殿<
復興大臣 根本 匠 殿<
環境大臣 石原 伸晃 殿<
厚生労働大臣 田村 憲久 殿<
原子力規制委員会委員長 田中 俊一 殿<
福島県知事 佐藤 雄平 殿<
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                            2013年6月4日<
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              要  請  書 <
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 私たちは、国連「健康に対する権利」に関する特別報告者アナンド・グローバー氏の勧告を受け、原発事故に関わる健康管理調査について、以下のことを要請します。<
1  健康管理調査について、「原発事故子ども・被災者支援法」の理念に基づき、国が実施の責任を負い、少なくとも追加被ばく線量1ミリシーベルト以上の地域に住む全住民を対象とすること。<
2  前項の国が実施の責任を負う健康管理調査については、低線量被曝による健康影響を真剣に評価・モニタリングする体制を確立し、低線量被曝の影響を慎重に考慮する専門家を中心に検討機関を構成し、その公開性・透明性を徹底すること。<
また、原発事故の影響を受けた住民と原発作業員の要望が反映され、特に子を持つ母、未成年者、高齢者など脆弱な立場に置かれた人々の声が反映されるような仕組みを確立すること。<
3  福島県健康管理調査の検討に当たっては、グローバー氏の勧告を踏まえ、検査内容や体制を拡充すること。また、1で要請した、国が実施する健康管理調査について、グローバー氏の下記勧告を反映した検査内容とすること。特に、<
1)放射線に起因して発生すると考えられるすべての疾患・症状に対応した、全般的・包括的な検査方法を、少なくとも追加被ばく線量1ミリシーベルト以上の地域に住む全住民を対象に実施すること。また、および積算被ばく線量の調査と、病状・自覚症状含む体調についての調査を実施し、情報を公開すること。<
2)追加被ばく線量1ミリシーベルト以上の地域に住む全住民を対象に定期的に内部被ばく検査を実施すること<
3)子どもに対する健康調査を甲状腺検査に加え、血液・尿検査を含むすべての健康影響に関する調査に拡大すること。<
4)甲状腺検査に関して所見が認められたケースには、無料による精密検査を、親や子が希望するすべてのケースで実施すること。また、少なくとも1年に一度の経過観察を実施すること。<
5) 甲状腺の検査所見・画像の開示を希望する親と子には、情報公開法の手続を経ることなく、検査直後にすべての検査結果と画像を開示すること。<
4   福島県健康管理調査に関しては、新しく設定された目的(「県民の健康状態を把握し、疾病の予防、早期発見、早期治療につなげ、もって、将来にわたる県民の健康の維持、増進を図ることを目的として実施」)に沿って、検査内容を一新すること。現在の委員会の委員に、住民の代表、低線量被ばくに関して問題提起を続けてきた専門家、提言を続けてきた市民団体、弁護士などを加えること。<
5  短期雇用、二次下請け、三次下請け等も含むすべての原発作業員を特定し、その健康診断を長期的に実施し、疾患に対し、無料の治療を実施すること。<
6  追加被ばく線量1ミリシーベルト以上の地域に住む全住民と原発作業員に対し、原発事故と被ばくの影響により生じた可能性のある健康影響について、無料で治療を行うこと。<
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              要 請 の 趣 旨<
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 福島第一原発事故により、今も多くの人々が、高線量の地域で生活を送ることを余儀なくされ、その健康影響が深刻に懸念されます。しかし、現在行われている健康管理調査は、福島県内に限られ、中でも血液検査を含む詳細な調査は避難地域からの避難者に限定されています。<
 健康影響が深刻に懸念されている子どもについては、甲状腺検査が2年に一度の頻度で実施されるだけであり、懸念されるすべての健康被害を丁寧にモニタリングし、疾病を防ぐ体制はできていません。その情報公開のあり方、セカンド・オピニオンを阻害する対応などが強く批判されてきました。避難地域外の大人に至っては、基本的には事故後の行動を詳細に回答せよとする「基本調査」が送付されただけです。さらに、原発作業員に対しては、第一線で被曝労働に従事した下請け労働者に対し、健康診断とモニタリングが十分になされていないのが現状です。<
 福島県健康管理委員会では、「100mSv以下の低線量被ばくは直ちに健康に影響はない」との発言が頻繁にされ、低線量被ばくを過小評価し、住民の要望を十分に反映しないまま、健康管理調査が実施されてきました。この調査に信用性が乏しいことは、基本調査に対する回答率の低さからも明らかです。<
 福島県健康管理調査は、上記のような批判を受け、いままでの「不安解消」という目的から、「県民の健康状態を把握し、疾病の予防、早期発見、早期治療につなげ、もって、将来にわたる県民の健康の維持、増進を図ることを目的として実施」としたことは評価します。しかしこの目的に沿って、内容を一新しなければ、形だけの改革となってしまいます。現在の委員会の委員に、低線量被ばくに関して問題提起を続けてきた専門家や、提言を続けてきた市民団体や弁護士などを加えるべきです。<
 こうしたなか、国連「健康に対する権利」に関する特別報告者アナンド・グローバー氏が2012年11月に来日し、原発事故後の健康に対する権利の保障状況について詳細な調査を行い、勧告を出しました(健康調査に関する勧告は別紙に抜粋)。この勧告は、チェルノブイリ事故等の経験を参照したうえで、影響を受けた一人ひとりの住民の人権保障の観点から具体的な勧告を行ったもので、まさに健康被害に関する住民の懸念に応えるものです。<
 私たちはこの機会に、日本政府、福島県が、人々、とりわけ子どもたちを低線量被ばくによる健康被害から適切に守ることを国・県の政策の一番の優先事項として位置づけて、グローバー氏の勧告に基づく抜本的な政策の転換を図ることを要請します。<
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                                以 上<
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・要請団体<
特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ<
110-0005 東京都台東区上野5-3-4クリエイティブOne秋葉原ビル7F<
電話 03-3835-2110 FAX 03-3834-1025 Eメール info@hrn.or.jp<
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・賛同団体<
市民放射能測定所-CRMS<
960-8034 福島県福島市置賜町8-8パセナカMisse 1F<
電話 024-573-5697 FAX 024-573-5698 Eメールinfo@crms-jpn.org<
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国連「健康に対する権利」に関する特別報告者アナンド・グローバー氏・<
日本への調査 ( 2012年11月15日から26日) に関する調査報告(A/HRC/23/41/Add.3)・抜粋    (暫定版仮訳)<
77 (a)  Continue monitoring the impact of radiation on the health of affected persons through holistic and comprehensive screening for a considerable length of time and make appropriate treatment available to those in need; <
全般的・包括的な検査方法を長期間実施するとともに、必要な場合は適切な処置・治療を行うことを通じて、放射能の健康影響を継続的にモニタリングすること<
(b)  The health management survey should be provided to persons residing in all affected areas with radiation exposure higher than 1 mSv/year; <
1mSv以上の地域に居住する人々に対し、健康管理調査を実施すること<
(c)Ensure greater participation and higher response rates in all health surveys; <
すべての健康管理調査を多くの人が受け、調査の回答率を高めるようにすること<
(d)Ensure that the basic health management survey includes information on the specific health condition of individuals and other factors that may exacerbate the effect of radiation exposure on their health; <
「基本調査」には、個人の健康状態に関する情報と、被ばくの健康影響を悪化させる要素を含めて調査がされるようにすること<
(e)Avoid limiting the health check-up for children to thyroid checks and extend check-ups for all possible health effects, including urine and blood tests; <
子どもの健康調査は甲状腺検査に限らず実施し、血液・尿検査を含むすべての健康影響に関する調査に拡大すること<
(f)Make follow-up and secondary examination for children’s thyroid check-up available to all requesting children and parents; <
甲状腺検査のフォローアップと二次検査を、親や子が希望するすべてのケースで実施すること<
(g)Simplify children’s and their parents’ access to information regarding their test results, while ensuring the protection of private information; <
個人情報を保護しつつも、検査結果に関わる情報への子どもと親のアクセスを容易なものにすること<
(h)Refrain from restricting examination for internal exposure to whole-body counters and provide it to all affected population including residents, evacuees, and to persons outside Fukushima prefecture; <
ホールボディカウンターによる内部被ばく検査対象を限定することなく、住民、避難者、福島県外の住民等影響を受けるすべての人口に対して実施すること<
(i)Ensure mental health facilities, goods and services are available to all evacuees and residents, especially vulnerable groups such as older persons, children and pregnant women; <
避難している住民、特に高齢者、子ども、女性に対して、心理的ケアを受けることのできる施設、避難先でのサービスや必要品の提供を確保すること<
(j)Monitor the health effects of radiation on nuclear plant workers and provide necessary treatment. <
原発労働者に対し、健康影響調査を実施し、必要な治療を行うこと<
81. (c) Provide free health check-ups and treatment that may be required for health effects from the nuclear accident and radiation exposure; <
   原発事故と被ばくの影響により生じた可能性のある健康影響について、無料の健康診断と治療を提供すること<
82. The Special Rapporteur urges the Government to ensure effective community participation, especially participation of vulnerable groups, in all aspects of the decision-making processes related to nuclear energy policy and the nuclear regulatory framework, including decisions regarding nuclear power plant operations, evacuation zones, radiation limits, health monitoring and compensation amounts.<
   特別報告者は、原発の稼働、避難地域の指定、放射線量限界、健康調査、補償を含む原子力エネルギー政策と原子力規制の枠組みら関するすべての側面の意思決定プロセスに、住民参加、特に脆弱な立場のグループが参加するよう、日本政府に求める。<
48. The Government assured the Special Rapporteur that it was safe to inhabit areas with radiation dose of up to 20mSv/year, as there was no excessive risk of cancer below 100mSv. However, even the ICRP acknowledges the scientific possibility that the incidence of cancer or hereditary disorders will increase in direct proportion to an increase in radiation dose below about 100mSv. Furthermore, epidemiological studies monitoring the health effects of long-term exposure to low-ionizing radiation conclude that there is no low-threshold limit for excess radiation risk to non-solid cancers such as leukaemia. The additive radiation risk for solid cancers continues to increase throughout life with a linear dose-response relationship.<
   政府は、特別報告者に対して、100mSv以下では発がんに関して過度の危険がないため、年間被ばく線量20mSv以下の居住不可能地域は安全であると保証した。しかしながら、ICRPもまた発がん又は遺伝的疾患の発生が約100mSV以下の被ばく線量の増加に正比例するという科学的可能性を認めている。さらに、低線量放射線による長期被ばくの健康影響を調査する疫学研究は、白血病のような液状癌(non-solid cancer)に関する過度の被ばくリスクについて下限はないと結論付けている。固形癌に関する付加的な被ばくリスクは、直線的な用量反応関係で一生を通して増加し続ける。<
49. Health policies put in place by the State should be grounded in scientific evidence. Policies should be formulated so as to minimize the interference with the enjoyment of the right to health. In setting radiation dose limits, the right to health dictates limits that have the least impact upon the right to health of people, taking into account the greater vulnerability of such groups as pregnant women and children. (以下、略)<
   政府によって導入される健康政策は、科学的証拠に基づいているべきである。政策は、健康に対する権利の享受への干渉を最小化するように策定されるべきである。被ばく線量限度を設定するにあたって、健康に対する権利は、特に影響を受けやすい妊婦及び子どもについて考慮し、人々の健康に対する権利に対する影響を最小にするよう要求する。(以下、略)<