【声明】福島: 国連「健康に対する権利」特別報告者の勧告に基づき、日本政府は今こそ、原発影響後の住民保護について、抜本的な政策転換を図るべき

福島:  国連「健康に対する権利」特別報告者の勧告に基づき、日本政府は
今こそ、原発影響後の住民保護について、抜本的な政策転換を図るべき<
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2013年5月27日、国連「健康に対する権利」に関する特別報告者アナンド・グローバー氏は、国連人権理事会に対し、福島原発事故後の人権状況に関する事実調査ミッションの報告書を提出し、日本政府に対する詳細な勧告を提起した。http://www.ohchr.org/Documents/HRBodies/HRCouncil/RegularSession/Session23/A-HRC-23-41-Add3_en.pdf<
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この調査ミッションは2012年11月の特別報告者来日時に実施されたものである。<
東京に本拠を置く国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(Human Rights Now)は、この報告書と提言が示す明確な結論を歓迎する。<
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1  福島原発事故により放出された放射性物質の影響により、今も周辺住民、特に妊婦、子ども、若い世代は深刻な健康リスクにさらされている。多くの人々は、政府の設定した「年間20ミリシーベルト」という避難基準のもと、放射線量の高い地域に住み続け、移住・避難のための経済支援も十分な健康対策も図られていない。政府は、「100ミリシーベルト以下の低線量被曝は安全」との見解を普及し、低線量被曝の影響を過小評価し、すべての政策をこうした見解に基づき、住民の意見を十分に反映しないまま決定・実行してきた。<
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2  こうした状況のもと、特別報告者は、低放射線被ばくの健康影響に関する疫学研究を丁寧に指摘し、低線量被曝の影響が否定できない以上、政府は妊婦や子どもなど、最も脆弱な人々の立場に立つべきだと指摘し、「避難地域・公衆の被ばく限度に関する国としての計画を、科学的な証拠に基づき、リスク対経済効果の立場ではなく、人権に基礎をおいて策定し、公衆の被ばくを年間1mSv以下に低減するようにすること」(勧告78(a)) を勧告した。また、帰還について「年間被ばく線量が1mSv以下及び可能な限り低くならない限り、避難者は帰還を推奨されるべきでない」と指摘した。<
これは公衆の被ばくを年間1mSv以下にするよう明確な基準を求めた、極めて重要な勧告である。<
私たちは、日本政府に対し、この勧告を受け入れ、公衆の被ばく限度を厳格に見直し、安全な環境、少なくとも年間1mSv以下の環境で生きる権利を人々に保障するよう求める。<
同時に、特別報告者の勧告に従い、学校教育その他の情報提供にあたり、低線量被曝の安全性でなく、リスクを正確に教育・情報提供するよう求める。<
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3   特別報告者が正確に分析している通り、健康影響調査は極めて限定的で不十分であり、私たちは健康管理調査の改善を求める特別報告者の勧告を支持・歓迎する。<
政府は、年間1mSv以上の地域に居住するすべての住民と原発労働者に対して包括的で長期間にわたる健康調査を実施すべきであり、血液・尿検査も含め、すべての可能性のある疾患・症状に調査範囲を拡大すべきである。<
また、特別報告者が詳細に指摘する通り、検査の頻度、情報へのアクセス、セカンド・オピニオンの保障の点で、子どもに対する甲状腺検査のあり方を抜本的に改めるべきである。<
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4   政府は、原発被災者への対応を怠っており、2012年6月に成立した基本法である「子ども被災者支援法」については、約1年経過後も、基本計画を策定せず、原発被災者の切実な要望を放置している。<
 この点、特別報告者は、同法によって支援を受けるべき人々は、事故当時居住していた地域が1mSvを超えて汚染されたすべての地域であるべきだ、と指摘する。そして、政府に対し、「移住、居住、雇用教育、その他の必要な支援を、年間1mSv以上の地域に居住、避難、帰還したすべての人に提供する」よう求めている。<
これは、健康の権利を保障するために、重要かつ合理的な勧告である。私たちは、政府に対し、この勧告を直ちに実現し、影響を受けたすべての地域の居住者・避難者を対象とする包括的な施策の実施を進めるよう求める。その際には、住民、特に子どもや母親など、脆弱な立場に置かれた人々の声を十分に聴き、政策決定への参加を求めるべきである。<
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5  このほか、特別報告者の報告・勧告は、事故原因、緊急対応、復旧、生活再建、放射線からの保護に関する日本政府のこれまでの政策を包括的・客観的に検証し、健康の権利の視点から明確で具体的な改善点が勧告として提示されている。<
政府はひとつひとつの指摘に誠実に向き合い、政策の改善・変更を行い、明確なタイムテーブルを決めて直ちに実行すべきである。<
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6 福島原発事故から2年以上が経過したが、政府の対応は、チェルノブイリ事故等の住民保護政策から見ても著しく劣悪であり、極めて不十分な対策しか講じられないまま今日に至っている。<
私たちは、今回の国連特別報告者の調査報告書提出を契機に、日本政府と東京電力に対し、改めて原発事故の影響を受けた人々に対する政策の問題点を真摯に反省し、勧告を誠実に実施するとともに、人権の視点に立った抜本的な政策の改善を求める。<
それは、子どもや将来世代への深刻な健康影響を防ぐ唯一の道であると考える。<
以 上<
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アナンド・グローバー氏の勧告(Recommendations )<
76. The Special Rapporteur urges the Government to implement the following recommendations in the formulation and implementation of its nuclear emergency response system:<
特別報告者は、日本政府に対し、原発事故の初期対応 の策定と実施について以下の勧告を実施するよう求める。<
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(a)    Establish regularly updated emergency response plans that clearly demarcate the command structures and specify evacuation zones, evacuation centres, and provide guidelines for assisting vulnerable groups;<
原発事故の初期対応計画を確立し不断に見直すこと。対応に関する指揮命令系統を明確化し、避難地域と避難場所を特定し、脆弱な立場にある人を助けるガイドラインを策定すること<
(b)    Communicate disaster management plans, including response and evacuation measures, to residents of areas likely to be affected by a nuclear accident;<
原発事故の影響を受ける危険性のある地域の住民と、事故対応やとるべき措置を含む災害対応について協議すること<
(c)     Release disaster-related information to the public as soon as a nuclear accident occurs;<
原子力災害後可及的速やかに、関連する情報を公開すること<
(d)    Distribute promptly iodine prophylaxis before or as soon as the accident occurs;<
原発事故前、および事故後後可及的速やかに、ヨウ素剤を配布すること<
(e)     Provide for prompt and effective usage of such technology as SPEEDI in gathering and disseminating information on affected areas;<
 影響を受ける地域に関する情報を集め、広めるために、Speediのような技術を早期にかつ効果的に提供すること<
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77. With respect to health monitoring of the affected population, the Special Rapporteur urges the Government to implement the following recommendations:<
  原発事故の影響を受けた人々に対する健康調査について、特別報告者は日本政府に対し以下の勧告を実施するよう求める。<
(a)    Continue monitoring the impact of radiation on the health of affected persons through holistic and comprehensive screening for a considerable length of time and make appropriate treatment available to those in need;<
全般的・包括的な検査方法を長期間実施するとともに、必要な場合は適切な処置・治療を行うことを通じて、放射能の健康影響を継続的にモニタリングすること<
(b)    The health management survey should be provided to persons residing in all affected areas with radiation exposure higher than 1 mSv/year;<
1mSv以上の地域に居住する人々に対し、健康管理調査を実施すること<
(c)     Ensure greater participation and higher response rates in all health surveys;<
すべての健康管理調査を多くの人が受け、調査の回答率を高めるようにすること<
(d)    Ensure that the basic health management survey includes information on the specific health condition of individuals and other factors that may exacerbate the effect of radiation exposure on their health;<
「基本調査」には、個人の健康状態に関する情報と、被曝の健康影響を悪化させる要素を含めて調査がされるようにすること<
(e)     Avoid limiting the health check-up for children to thyroid checks and extend check-ups for all possible health effects, including urine and blood tests;<
子どもの健康調査は甲状腺検査に限らず実施し、血液・尿検査を含むすべての健康影響に関する調査に拡大すること<
(f)     Make follow-up and secondary examination for children’s thyroid check-up available to all requesting children and parents;<
甲状腺検査のフォローアップと二次検査を、親や子が希望するすべてのケースで実施すること<
(g)    Simplify children’s and their parents’ access to information regarding their test results, while ensuring the protection of private information;<
個人情報を保護しつつも、検査結果に関わる情報への子どもと親のアクセスを容易なものにすること<
(h)    Refrain from restricting examination for internal exposure to whole-body counters and provide it to all affected population including residents, evacuees, and to persons outside Fukushima prefecture;<
ホールボディカウンターによる内部被ばく検査対象を限定することなく、住民、避難者、福島県外の住民等影響を受けるすべての人口に対して実施すること<
(i)      Ensure mental health facilities, goods and services are available to all evacuees and residents, especially vulnerable groups such as older persons, children and pregnant women;<
避難している住民、特に高齢者、子ども、女性に対して、心理的ケアを受けることのできる施設、避難先でのサービスや必要品の提供を確保すること<
(j)      Monitor the health effects of radiation on nuclear plant workers and provide necessary treatment.<
原発労働者に対し、健康影響調査を実施し、必要な治療を行うこと<
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78. The Special Rapporteur urges the Government to implement the following recommendations regarding policies and information on radiation dose<
  特別報告者は、日本政府に対し、放射線量に関連する政策・情報提供に関し、以下の勧告を実施するよう求める。<
(a)    Formulate a national plan on evacuation zones and dose limits of radiation by using current scientific evidence, based on human rights rather than on a risk-benefit analysis, and reduce the radiation dose to less than 1mSv/year;<
避難地域・公衆の被ばく限度に関する国としての計画を、科学的な証拠に基づき、リスク対経済効果の立場ではなく、人権に基礎をおいて策定し、公衆の被ばくを年間1mSv以下に低減するようにすること<
(b)    Provide, in schoolbooks and materials, accurate information about the risk of radiation exposure and the increased vulnerability of children to radiation exposure;<
放射線の危険性と、子どもは被曝に対して特に脆弱な立場にある事実について、学校教材等で正確な情報を提供すること<
(c)     Incorporate validated independent data, including that from the communities, to monitor radiation levels.<
 放射線量のレベルについて、独立した有効性の高いデータを取り入れ、そのなかには住民による独自の測定結果も取り入れること<
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79. Regarding decontamination, the Special Rapporteur urges the Government to adopt the following recommendations:<
 除染について特別報告者は、日本政府に対し、以下の勧告を採用するよう求める<
(a)    Formulate urgently a clear, time-bound plan to reduce radiation levels to less than 1mSv/year;<
年間1mSv以下の放射線レベルに下げるよう、時間目標を明確に定めた計画を早急に策定すること<
(b)    Clearly mark sites where radioactive debris is stored;<
汚染度等の貯蔵場所については、明確にマーキングをすること<
(c)     Provide, with the participation of the community, safe and appropriate temporary and final storage facilities for radioactive debris;<
安全で適切な中間・最終処分施設の設置を住民参加の議論により決めること<
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80. The Special Rapporteur urges the Government to implement the following recommendations regarding transparency and accountability within the regulatory framework:<
 特別報告者は規制の枠組みのなかでの透明性と説明責任の確保について、日本政府に対し、以下の勧告を実施するよう求める。<
(a)    Require compliance of the regulatory authority and the nuclear power plant operators with internationally agreed safety standards and guidelines;<
原子力規制行政および原発の運営において、国際的に合意された基準やガイドラインに遵守するよう求めること<
(b)    Ensure disclosure by members of the Nuclear Regulation Authority of their association with the nuclear power industry;<
原子力規制庁の委員と原子力産業の関連に関する情報を公開すること<
(c)     Make information collected by the Nuclear Regulation Authority, including regulations and compliance of nuclear power plant operators with domestic and international safety standards and guidelines, publicly available for independent monitoring;<
 原子力規制庁が集めた、国内および国際的な安全基準・ガイドラインに基づく規制と原発運営側による遵守に関する、原子力規制庁が集めた情報について、独立したモニタリングが出来るように公開すること<
(d)    Ensure that TEPCO and other third parties are held accountable for the nuclear accident and that their liability to pay compensation or reconstruction efforts is not shifted to taxpayers.<
 原発災害による損害について、東京電力等が責任をとることを確保し、かつその賠償・復興に関わる法的責任のつけを納税者が支払うことかないようにすること<
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81. In relation to compensation and relief, the Special Rapporteur urges the Government to implement the following recommendations:<
  補償や救済措置について、特別報告者は政府に対し以下の勧告を実施するよう求める<
(a)    Formulate, with the participation of the affected communities, the implementing framework under the Victims Protection Law;<
「子ども被災者支援法」の基本計画を、影響を受けた住民の参加を確保して策定すること<
(b)    Include cost of reconstruction and restoration of lives within the relief package;<
復興と人々の生活再建のためのコストを支援のパッケージに含めること<
(c)     Provide free health check-ups and treatment that may be required for health effects from the nuclear accident and radiation exposure;<
原発事故と被曝の影響により生じた可能性のある健康影響について、無料の健康診断と治療を提供すること<
(d)    Ensure that compensation claims by affected persons against TEPCO are settled without further delay;<
さらなる遅延なく、東京電力に対する損害賠償請求が解決するようにすること<
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82. The Special Rapporteur urges the Government to ensure effective community participation, especially participation of vulnerable groups, in all aspects of the decision-making processes related to nuclear energy policy and the nuclear regulatory framework, including decisions regarding nuclear power plant operations, evacuation zones, radiation limits, health monitoring and compensation amounts.<
 特別報告者は、原発の稼働、避難地域の指定、放射線量限界、健康調査、補償を含む原子力エネルギー政策と原子力規制の枠組みら関するすべての側面の意思決定プロセスに、住民参加、特に脆弱な立場のグループが参加するよう、日本政府に求める。<