成人年齢引き下げで、AV出演強要被害が増大することが懸念されるなか、国会での議論が進み、AV被害者を保護するための議員立法について与野党の協議が始まっています。18歳、19歳に限らず、全年齢の被害者に保護を拡大するというのは歓迎したいですが、一方で、未成年者取消権保護が薄まるのではないか?という懸念があります。
こうしたなか、連休明けの5月9日に支援団体などのヒアリングがあり、ヒューマンライツ・ナウは団体要請書を提出しました。そして、長年問題に取り組んできた支援団体のNPO法人ぱっぷすや、性暴力被害者の当事者団体である一般社団法人Springなどとも、この機会にあわせ、法案の課題をまとめて共同要望書を提出しました。また、ヒアリングでは、当事者の方が出された声明も配布されました。こちらにはさらに、医療、トラウマケアなど非常に重要な当事者の視点が指摘されています。
ヒアリングでは、「今国会でどうしても成立させ、一歩前進してほしい、そのためにも要望に真摯に向き合うべき」という団体からの意見表明 (ヒューマンライツ・ナウ、Spring)があった一方、「上記要望のすべてを受け入れない限り、法案に反対する」という見解を示す団体もあり、要望書に示された私たちの要求がいかに切実なものかを示す機会になりました。
午後に行われた与野党ヒアリングではAV事業者団体も招聘されており、強く違和感を感じました。苦しんでいる女性たちの陰で巨額の利益を得ている実態が伝わり、「自主規制」の実効性の有無について支援団体との間で激しいやり取りが交わされました。
こうしたヒアリングを踏まえ、被害の深刻さ、複雑さ、業界の進めてきた自主規制では到底十分でないことが改めて明らかになったと思います。
一方、業界団体であるAV人権倫理機構は、18歳、19歳をAV出演させることは犯罪とすべき、(AVで実際の性交を行うことを禁止するとの提案について)法律ができればそれに基づいてやる、と回答しました。
支援団体の要望書の提出、ヒアリングの効果は大きく、与党はヒアリングの結果も踏まえて、現在の骨子案を修正する準備にただちに入り、与野党の協議になるとのことです。
ヒューマンライツ・ナウは、与野党が被害当事者、支援者の要望に向き合って、性的搾取をこれ以上拡大せず、被害者を保護できる、実効性のある法律案を提案することを強く求めます。
ヒアリングや要望書に関する詳細は、2022年5月11日(水)に掲載されたヒューマンライツ・ナウの伊藤和子副理事長による記事「AV被害者立法 本当に被害者が保護されるために、被害者・支援者の要望に応えてほしい。」をご覧ください。