【イベント報告・動画】~Human Rights Cafe~「紛争解決請負人 伊勢崎賢治さんと語る 安保法制、そして日本のあるべき貢献」

2015年9月13日に

~Human Rights Cafe~

「紛争解決請負人 伊勢崎賢治さんと語る 安保法制、そして日本のあるべき貢献」
を開催致しました。
当日は、多くの方が参加され、非常に内容の濃いトークイベントとなりました。
ご来場いただいた方ありがとうございました。
また、今回参加できなかった方も、今後もヒューマンライツ・ナウではHuman Rights Cafeや様々なイベント・セミナーを開催していきますので、ぜひ次の機会にご参加いただければ幸いです。
イベントに参加したインターンの方の報告をご紹介します。
またイベントの動画を配信していただきましたので、お知らせします。
「紛争解決請負人 伊勢崎賢治さんと語る 安保法制、そして日本のあるべき貢献」
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Human Rights Café 開催報告
紛争解決請負人 伊勢崎賢治さんと語る〜安保法制、そして日本のあるべき貢献〜
  9月13日、安保法制の採決が目前と言われる緊迫した状況の中で、ヒューマンライツ・ナウは、世界各地で紛争処理、武装解除などに携わってこられた伊勢崎賢治さんをお招きしてトークイベントを開催しました。会場に用意した席が全て埋まり、立ち見の方がでてしまうのではないかと心配するほどの盛況ぶりでした。
  伊勢崎さんには、「安保法制、そして日本のあるべき貢献」とタイムリーなテーマで幅広い視座から日本の抱える問題について語っていただきました。そのいくつかを紹介します。
◯憲法9条の解釈の相場が変動
  伊勢崎さんは30年前と現在を比べると「自衛隊は違憲だ」とはっきりと言う憲法学者は少なくなっているとして、この変化を「憲法9条の解釈の相場が変動した」と表現しました。その意味するところは「憲法は一言一句変わっていないが、私たちは時代で9条の解釈を変えている」とのことです。そして、安倍総理はこの変化と同じように集団的自衛権行使も受け入れられると思ったのではないかと話し、このような考えに対して対抗していかなければいけないと強調しました。
◯自衛権は暫定的な権利
  自衛権は、国連安全保障理事会の常任理事国である五大大国が地球上の問題全てを処理できるはずがないということからできたもので、国連が措置を取るまでの暫定的な権利であると説明しました。
  また、ある自民党議員が「集団的自衛権は国連憲章上の義務だ」と発言したことに触れ、集団的自衛権も個別的自衛権も生存のために許されている暫定的な権利であって「義務でもなければ、特権でもない」と強調しました。「あえて言うならば、集団的安全保障が国連加盟国の義務だ」とも指摘し、他国防衛は集団的自衛権で行うものではなく、国連加盟国の義務であるとして、この点が日本では整理されずに安保法制が議論されているといいます。
 
 
◯武力行使の理由の問題点
  安倍総理はよく、「他国で日本人を助ける」という集団的自衛権の行使事例を用います。ですが、国際法上、個別的自衛権・集団的自衛権・集団安全保障の3つ以外を理由とする武力行使は認められていないので、そうした事例は「侵略とみなされる」と指摘しました。また、資源確保を理由とする武力行使も禁止されているので「原油がないからといって武力行使をすると公然と語ってはいけない」と批判しました。
◯日本は既に集団的自衛権を行使
  日本は集団的自衛権を既に行使していると指摘し、その例として「テロ対策特別措置法」(2001年)と「イラク特別措置法」(2003年)を挙げました。
  9.11同時多発テロ後、アメリカと北大西洋条約機構(NATO)はアフガニスタンなどを攻撃しました。当時日本は、インド洋でのテロ対策に名乗りを上げ、海上自衛隊の海外派遣を可能とするテロ特措法を成立させました。
  また、アメリカが国際法で禁止されている予防的自衛権を行使したのではないかという議論があるイラク戦争においても日本は、イラク特措法を作り、陸上自衛隊を派遣しました。
  これらの日本の行為は、海外からは集団的自衛権を行使しているとみなされていると指摘します。そして、日本が民主党政権下で、ジブチにソマリア沖の海賊対処のための拠点基地を建設したことに触れ、「リベラルな政党が政権を取ったとしても、我々は政権に対して批判的でなければいけない」と警告しました。
◯PKO活動が一番危険
  安保法制が成立した場合、最も危険な自衛隊の海外派遣の現場は、国連平和維持活動(PKO)であると指摘しました。現在のPKOは住民保護のために活動しているため、かつての中立性はなくなり、武装部隊が投入されている現状を説明しました。伊勢崎さん自身も、自分の所属部隊が武装勢力10人を殺害したと明かし、現在のPKOの危険性を語ってくれました。このような現場に現状の法整備のままで自衛隊を派遣できるのかと疑問を投げかけます。
◯日本ができること
  最後に伊勢崎さんは、日本が国際社会にできることについて「国連軍事監視団に自衛隊を派遣すること」と話しました。国連軍事監視団とは、中立を守っており、敵対勢力とも対話ができる部署のことです。「日本がここで経験を積み、『自衛隊はここに部隊を派遣するから、そこ以外には派遣しない』と言えるようになるといい」と提案しました。
  伊勢崎さんの講演は中身が濃く、国際法などの専門知識が乏しい私には、ついていくのがやっとという場面もありましたが、知らなかったことやしっかり理解していないことが少しは整理できたと思っています。ここで紹介しきれなかったことも多くあるので、興味のある方はぜひ映像をご覧下さい。(高木あずさ)
◆◆◆イベントの写真◆◆◆
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     <伊勢崎 賢治氏>
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    <伊勢崎 賢治氏と HRN事務局長 伊藤和子氏の対談>
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    <会場の様子>