2017年7月、刑法性犯罪規定が110年ぶりに大幅に改正されました。しかし、様々な課題が残されたことから、施行後三年を目途として検討ならびに所要の措置を講ずることが「附則」に定められ、さらに暴行脅迫要件の認定に関する調査研究、捜査及び公判の過程における二次被害防止、性犯罪被害者支援の拡充等を求める「附帯決議」が採択されました。
附則にもとづき、2020年6月より被害当事者を委員に含む検討会が開かれ、2021年10月より法務大臣の諮問にて法制審議会が開かれ、見直しにむけた議論がなされました。
これらの議論を通じて、今般、刑法の改正案に「同意しない意思」という文言が加わったこと、また、社会全体に「同意のない性的行為はしてはいけない」というメッセージを明確に発信するためにも、罪名を「不同意性交罪」へと改める方針が閣議決定されたこと等、私たちの思いが政治、司法に届いたことは大変嬉しく、歓迎しております。
一方で、改正案については明確になっていない部分もあり、徹底した国会審議が求められています。
そして何より、私たちが当初から求めてきた、公訴時効の見直しの必要性、
- 長期反復的な性虐待・性暴力の影響により、精神的外傷性健忘症といわれる“解離”を起こして長期間記憶をなくすこと
- 記憶をなくしてない部分も、被害者は多くの場合行為者により行為について話さないよう仕向けられること
- そして記憶を取り戻し、心理的ケアを受けて、虐待の経験を外部で話せるようになるには20~40年にわたる長い年月が必要であること
等の問題の見直しについては、法制審議会での被害当事者及び支援者の再三の訴えにも関わらずすっぽり抜け落ちており、現在も苦しみを味わっている被害者が「捨象」という言葉で切り捨てられています。
上記の問題を「捨象」した理由として、法務省は、「被害申告まで時間がかかったために、あるいは時間がたって証拠が発見されたために、相当期間経過後にようやく訴追が可能になる場合というのは、犯罪類型を問わず存在し得る」とのことですが、被害申告に時間がかかるのは、他の犯罪類型とは決定的に違う被害の様態と被害者の状態、その状態を利用した加害者の悪質性によるものであり、それらを全く考慮に入れていない議論です。
ドイツやフランスなど諸外国では、長期反復的な性加害を受けた被害者の状態を実態調査により明らかにし、公訴時効を改正してドイツでは51歳、フランスでは48歳まで公訴を可能にしています。
院内集会では、刑法改正案の徹底審議について、また新たに設けられた犯罪類型の後追い調査や、公訴時効見直しに向けた実態調査の実施、地位関係性を利用した処罰規定の創設に向けた検討等を附則に明記することについて、衆参法務委員会の議員のみなさまと意見交換をする場となればと考えております。
<開 催 概 要>
【日時】2023年4月5日(水)12 : 00~13 : 00
【場所】衆議院第二議員会館B1 第7会議室
【参加方法】ロビーで通行証をお受け取りください。
【登壇者】
一般社団法人Spring
金子深雪
奥出智行(精神保健福祉士・公認心理師)
寺町東子(弁護士)
認定NPO法人Human Rights Now
中山純子(弁護士)
後藤弘子(千葉大学大学院教授)
刑法改正市民プロジェクト
徳永恭子
【対象】衆議院 参議院 法務委員会理事・委員の皆様、メディアの皆様
【共催】一般社団法人 Spring、特定非営利活動法人 Human Rights Now、刑法改正市民プロジェクト
【本件に関するお問い合わせ】lobb…@spring-voice.org(一般社団法人 Spring Mail)