【声明】森内閣府担当大臣にDV防止法改正等を要請

NPO法人全国シェルターネット 近藤恵子代表と、HRN事務局長 伊藤和子は、
2014年7月1日、森雅子内閣府男女共同参画担当大臣と面会し、
国際スタンダードに基づく女性に対する暴力からの被害者保護への抜本対策を求め、
第四次DV防止法改正に向けた要望を行いました。
要請書は
1 保護命令の対象の拡大、2  保護命令期間の延長、3 緊急保護命令制度の創設
などを求めたものです。
要請書全文
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内閣総理大臣        安倍晋三 殿

内閣府男女共同参画担当大臣 森 雅子 殿

 

第四次DV防止法改正を求める要請書

【要請の背景】

国連は2015年までに各国政府が国際スタンダードに即したDV防止法を制定し、女性に対する暴力根絶に努めるべきとするキャンペーンを展開しています。女性の権利の実現と暴力の根絶は日本にとって極めて重要な課題ですが、日本のDV防止法その他法制は国際スタンダードから下回っており、暴力や殺害の犠牲となり、命を奪われる女性、恐怖の中に生活を続ける女性は後を絶ちません。国際スタンダードに即したDV防止法の改正を2015年までに実現することは日本にとって急務の課題です。

20136月、相次ぐDV型ストーカー殺人被害に対応し、交際相手にも保護の対象を拡大する第三次DV防止法改正が実現しました。しかしながら、第三次改正は、交際相手に対する保護命令を求める要件として「生活の本拠を共にする」を要件とし、その立証が容易でなく、緊急保護命令制度の創設も見送られたため被害者にとっては使いにくい制度のままです。施行後4カ月、元交際相手に対する保護命令は、全国で51件、各都道府県で1件程度という運用となっています。こうしたなかで、女性が元交際相手からつきまとわれた末に殺害される事件は後を絶ちません。

また、DV離婚・別離後、長期間経過後につきまとわれ、殺害される事件も報告され、女性達が別離後いつまでも安心できない環境に置かれていることが改めて浮き彫りになっています。

【要請の趣旨と背景】  

国際人権NGOヒューマンライツ・ナウはDV被害者の実態調査を踏まえて、20136月に調査報告書「女性に対する暴力報告書」を発表し、政府に包括的な法改正を提言しました。現在、続いているDV被害の深刻な事態を踏まえ、女性達を被害から保護する実効的な制度として、少なくとも以下の法改正を緊急に求めます。次期臨時国会で、以下の点についてDV防止法改正を実現されるよう要請いたします。

1
交際相手に対する保護命令に関して、「生活の本拠を共にする」との要件を撤廃し、すべての未婚カップルのDVについて保護命令の対象とすること。

(理由)  前述のとおり、第三次改正は、交際相手に対する保護命令を認めるにあたり「生活の本拠を共にする」交際相手からの暴力を要件としていますが、その立証は容易でなく、被害者を保護する有効な制度として活用されているとは言い難いのが実情です。生活の本拠を共にしたことがあるか否かで、被害者の保護・救済に差があることは、被害者保護の観点から著しく合理性を欠いています。同居の有無を問わず、全ての交際カップルが元交際相手からの暴力から保護されることが必要です。

2
保護命令期間を現行の半年から1年に延長すると共に、子以外に対する接近禁止命令については、特段の事情がない限り再度の接近禁止命令が申立人の申立に基づいて認められるものとすること

(理由現行の保護命令制度は半年間のみ有効とされ、被害者は再度の保護命令を求めるためには、半年ごとに再度の申請をし裁判所の決定を得ることを求められています。そして、実務上、半年の保護命令期間中に加害者からの接触その他の問題行動がない事例では、再度の保護命令が出されにくいのが実情です。このような保護命令期間の設定は、諸外国と比較して著しく短く、被害者の保護に著しく欠ける制度構造と言わざるを得ません。

特に接近禁止命令について原則半年しか効力がないとするのは、被害者の安全を確保するに著しく不十分です。最近の殺害事件が示す通り、加害者が長期間にわたって被害者の行方を追跡し、ある日突然何の前触れもなく凶行に及ぶというケースも少なくありません。

こうした事態から被害者を保護するために、保護命令期間を延長すると共に、接近禁止命令(子への接近禁止命令を除く)については特段の事情がない限り再度の命令を認め、切れ目のない支援を継続すべきです。

3
緊急保護命令制度を実現すること

  現行の保護命令制度は、緊急な事態に対応し、無審尋で即座の保護命令を出す、緊急保護命令の規定を欠いています。急迫不正の暴力の犠牲となりかねない緊急事態にあたっても後期的かつ迅速に被害者保護を図れない我が国の法制度は諸外国から見て著しく不十分なものとなっています。

  緊急保護命令制度が存在しない下では、緊急に危険が迫っている事案について、被害者は法的救済を断念せざるを得ません。特に加害者からの凶行の危険性が高まっている事案において、加害者を呼び出し、審尋しなければならないとする現行法制は、「加害者を刺激したくない」と怯える、差し迫った危機的状況に置かれた被害者の心情および状況に即したものとは到底いえません。

これ以上の暴力の犠牲から女性たちを守るために、今こそ、緊急保護命令制度を創設し、被害者保護を図るよう要請いたします。

 

以 上

 

添付資料  報告書: 国際スタンダードに基づく日本のDV防止法等の改正に向けて

                  女性に対する暴力報告書