【プレスリリース】「フィリップ・アルストン国連特別報告者の訪日―フィリピン、スリランカなどで続く超法規的殺害・即時・恣意的処刑をなくすために」(2007/3/27)

フィリップ・アルストン国連特別報告者の訪日―フィリピン、スリランカなどで続く超法規的殺害・即時・恣意的処刑をなくすために

【東京 2007年3月27日】
本日、東京に拠点を置く人権NGO ヒューマンライツ・ナウは、2007年5月に、国連人権理事会が選任した、超法規的殺害・即時・恣意的処刑に関する特別報告者であり、国連人権高等弁務官の「ミレニアム開発目標と人権」特別顧問であるフィリップ・アルストン氏(ニューヨーク大学ロースクール教授)を招聘することを発表した。
フィリップ・アルストン氏は、5月7日に大阪、5月8日に東京(東京大学)において、国連の課題、アジア地域における人権の現状とその打開のための市民と外交の役割などに関する講演を行うほか、NGO・政府関係者とも意見交換を行う予定である。
フィリップ・アルストン氏が取り組む超法規的殺害・即時・恣意的処刑に関し、アジア地域では無縁ではない。 フィリピンでは2002年以降800人にものぼる人権・社会活動家が殺害されており、またスリランカにおいても、政府とタミル・イーラム解放のトラ(LTTE)双方による大規模な軍事攻撃により市民に多大な犠牲が発生している。アルストン氏は2005年11月から12月にかけてにスリランカを訪問、2007年2月には殺害の続くフィリピンを訪問した。同氏は、今年2月のフィリピン訪問後、虐殺に関与した国軍の責任を厳しく指摘し、「虐殺を止めるためにフィリピン政府と国際社会の果たすべき役割はたくさんある」と呼びかけた。アルストン氏は今年の5月中にフィリピンの人権侵害に関する報告書を公表する予定と言われており、来日の際にも、フィリピンの人権状況に関する詳細が報告される見通しである。
日本は、フィリピン、スリランカ両国のトップドナー国として援助対象国の人権状況の改善のために国際社会で積極的な役割を果たすことが期待される。とりわけ、最近、外務省が「価値の外交」「人権・民主主義支援」を打ち出す中、人々のかけがえのない人権を守るために何をなすべきか、日本の外交政策が問われている。
ヒューマンライツ・ナウ事務局長伊藤和子弁護士は、「日本はトップドナーとして、フィリピン、スリランカの人権状況の改善にむけて、積極的に行動・発言する国際的責任がある。日本政府は、両国の人権保護・促進のための働きかけを強力に進めるべきである。フィリップ・アルストン氏の来日を通じ、この点について国内の議論が深められることを期待する。また、市民社会の間でも我々の近隣のアジア諸国での人権侵害について広く認識が深まることを期待する」と語った。
フィリップ・アルストン氏は、国連人権理事会が選任した特別報告者であるが、同氏を含む「特別手続き」と呼ばれる独立した人権問題の専門家は国連の人権保障システムのなかで大きな役割を果たしてきた。ところが、国連の人権機構改革の過程でこの制度の見直しが提案されるなかで、同制度が改悪されることも危ぶまれている。6月に予定されている人権理事会において、この特別手続きの見直しが終了する見通しとなっており、これを目前に控えた今回の来日では、アルストン氏は、国連人権保障システムの改革に関しても言及する予定である。
また、G8サミットを2008年に控える日本にとって、「ミレニアム開発目標と人権」の国連特別顧問であるアルストン氏の発言に学ぶ意義も大きく、NGO・政府関係者との懇談では、この点での実質的な議論が深まることが期待される。

 

 

【フィリップ・アルストン(Philip Alston)氏の略歴】

ニューヨーク大学ロースクール教授(国際人権法、国際組織法)。同ロースクール人権センター(Center for Human Rights and Global Justice)所長現在、超法規的殺害、即決・恣意的処刑に関する国連特別報告者(Special Rapporteur of the United Nations Human Rights Council on Extrajudicial, Summary or Arbitrary Executions)をつとめ、アジアではフィリピン、スリランカなどの実情を調査・報告している。「ミレニアム開発目標と人権」に関する国連人権高等弁務官事務所特別顧問。国連社会権規約委員会議長、国連条約機関議長会議議長を歴任。また、現在の国連人権高等弁務官事務所の前身である国連人権センタースタッフを長らく勤めた。研究者としては、ヨーロッパ大学ロースクール教授、オーストラリア国立大学 教授 ハーバード大学ロースクール客員教授を歴任。