【要請書】「表現の自由特別報告者の日本調査の中止に関するNGO共同要請書」を公表しました。

ヒューマンライツ・ナウは11月25日にNGO共同で「表現の自由特別報告者の日本調査の中止に関するNGO共同要請書」を公表しました。
全文とPDFをお知らせ致します。
なお、ヒューマンライツ・ナウは、同日、アムネスティ・インターナショナル日本、秘密保護法対策弁護団代表とともに、記者会見を開催いたしました。会見の様子はこちらからご覧頂けます。
表現の自由SR公式訪問延期に対するNGO共同声明 [PDF]

2015年11月25日

 

表現の自由特別報告者の日本調査の中止に関するNGO共同要請書

 

 

岸田文雄 外務大臣 殿

 

 

去る11月18日(日本時間)、国連の表現の自由特別報告者デイビット・ケイ氏が本年12月1日から8日に予定していた日本公式訪問が、日本政府の要請によって中止された。私たちは、知る権利・表現の自由に関心のあるNGOとして、以下のとおり意見を表明する。

今回の訪問は、国連人権理事会のもとに定められた特別手続きに従って任命された特別報告者が、主要任務として行う国別訪問の一環として決定されたものである。特別報告者は、世界各国から招聘がある中、年に数か国を厳選して訪問する。この特別報告者による調査と人権理事会に提出される勧告を含む報告書は、人権条約諸機関の活動と並んで、日本の人権政策の向上に資するものである。日本政府は、いつでもこのような調査を受け入れること(standing invitation)を人権理事会の場で約束している。

本年10月に開催された国連総会第三委員会よりも前に、日本政府は特別報告者に対して、12月1から8日にかけての日本への公式訪問に対する招待を行った。この公式訪問における調査対象には、国連自由権規約委員会が昨年懸念を表明した2013年制定の特定秘密保護法の実施を初め、インターネット上の権利、メディアによる取材報道の自由、知る権利などに関する事項が含まれていた。

ところが、11月13日にジュネーブの日本代表部は特別報告者に対して、「関係する政府関係者へのミーティングがアレンジできないため、訪問は実施できない」という理由で、2016年秋まで訪問を延期すると示唆した。

特別報告者は日本政府に対して再度予定されていた日程での調査の実現を求めたが、11月17日、日本政府の対応に変化が見られないためキャンセルを受け入れ、このことを市民社会側の情報提供を検討していたNGO関係者にメールで連絡を行うと同時に、自身のブログでも経緯説明を行った。

以上のような経緯をふまえて、私たち知る権利・表現の自由に関心のあるNGOは、日本政府とりわけ外務省に対して次の点を申し入れる。

 

1 本年10月時点でケイ氏の12月公式訪問に対して招待を行ったにも関わらず、政府関係者との調整を理由にこれを延期することは極めて異例のことであり、二度と繰り返されてはならない。特に今回の訪問は、広く知る権利・表現の自由に関わることであるから、日本政府は延期理由を広く日本国内において十分に説明するとともに、国際社会に対しても十分に説明して説明責任を果たすべきである。

 

2 今回の決定は、日本政府の国際人権基準を軽視する姿勢の表れと国際社会から受け止められ、結果として、日本は国内の人権問題を改善する意思が欠如しているとみなされる可能性がある。このような不名誉な事態を避けるために、日本政府は、表現の自由の国連特別報告者の公式訪問を、来年の前半中のできる限り早い時期に実現すべきである。

 

3 2012年の国連人権理事会、2013年の拷問等禁止委員会、2014年の自由権規約委員会および人種差別撤廃委員会など、この数年間に実施された人権諸機関の厳しい審査・勧告に対して、日本政府はその勧告内容の実現のために真摯に努力してきたとはいえない。この点の日本政府の姿勢の抜本的な改善を求める。

 

 

共同要請団体

 

公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本

認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ

秘密保護法対策弁護団

「秘密保護法」廃止へ!実行委員会

秘密保全法に反対する愛知の会

反差別国際運動(IMADR)

沖縄建白書を実現し未来を拓く島ぐるみ会議国連部会

沖縄・生物多様性市民ネットワーク

市民外交センター

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特別報告者とは:

特別報告者は人権侵害を調査し、「特別手続き」に従って個々のケースや緊急事態に介入するための独立の人権専門家である。特別報告者は、個人の資格で務め、任期は最高6年であるが、報酬は受けない。2015年3月現在、41人のテーマ別、14人の国別の特別手続きの専門家がいる(国連人権理事会のHPより)。