【共同要請書】日本政府はミャンマーに対する経済協力事業の全面的な見直しを

 

国際人権NGOヒューマンライツ・ナウが賛同した要請書が、6月1日に日本政府に提出されました。

これまで、同様の共同要請に2回賛同しており、今回が3回目となります。

全文はこちらからご覧いただけます。

 

【過去の共同要請書】

 

日本政府からは未だに明確な回答がありませんが、引続き、働きかけを続けていきます。

 


(以下、全文)

2021年6月1日

内閣総理大臣 菅義偉様
財務大臣 麻生太郎様
外務大臣 茂木敏充様
国土交通大臣 赤羽一嘉様
国際協力銀行 代表取締役総裁 前田匡史様
国際協力機構 理事長 北岡伸一様
海外交通・都市開発事業支援機構 代表取締役社長 武貞達彦様

【共同要請書】
日本政府はミャンマーに対する経済協力事業の全面的な見直しを

ミャンマーで2月1日に国軍によるクーデターが発生してから4ヶ月が過ぎました。

クーデター後、常軌を逸したミャンマー国軍の市民への暴力が続いています。5月17日時点で802名の方が殺害され、4,120名が恣意的に拘束されています【1】。拘束後に殺害された方も少なくなく、生前の容貌を留めない遺体が遺族に返されていることが、繰り返し報道されています。「治安部隊」の市民の拘束が恣意的であることに加え、拘束者が法的な保護を受けられない無法状態が続いています。また、市民不服従運動に参加した公務員の解雇も続き、最近では大学の教員が大量解雇されています。一部の大学は、日本がこれまで人材育成や資材の供与などで支援した対象です。国営メディアでは「治安部隊」による暴力とは全く異なる内容が報じられ、市民のインターネットへのアクセスは制限されたままです。

しかし、このような状況が続いても、日本政府は自身が債務救済等で深く関与してきたミャンマーへの経済協力について、依然として明確な方針を示していません。

3月4日に日本のNGO32団体(同日以降に更に3団体が賛同)は、日本政府に対し対ミャンマー公的資金における国軍ビジネスとの関連を早急に調査し、クーデターを起こした国軍の資金源を断つことを求めました【2】。また、4月1日には、NGO19団体(同日以降に更に10団体が賛同)が同様の要請を行っています【3】。

先般、5月5日のG7外務・開発大臣会合声明において、日本政府は「我々の開発援助が国軍主導の体制を支援することを防止し、援助がミャンマーの人々、特に人道上の原則に従って最も援助を必要とする人々の利益となることを確保するために協力する」、また、「我々は、国軍関連の複合企業とビジネスを行う際にデュー・ディリジェンスを実施することにコミットし、他の者に対しても同様に行うよう求める」と表明しているにも関わらず【4】、国内では、事態の推移を見守り、どのような対応が効果的か検討するとの回答を今日まで繰り返すばかりです。

私たちはここに再度、国軍のビジネスと日本の経済協力関係を直ちに断ち切るため、日本政府に対し以下を強く要請いたします。

要請:
1.外務省と国際協力機構(JICA)は、新規の対ミャンマー支援については、「緊急・人道支援」以外は実施しないと国際社会に表明して下さい。

2.外務省とJICAは、2013年以降、ミャンマー政府との間で交換公文が交わされた政府開発援助(ODA)事業の中で、入札が終わっていない案件を明らかにしてください。また、入札がまだの事業については、民政回復までこれを凍結するとともに、そのことを国際社会に表明してください。
3.外務省とJICAは、2013年以降、ミャンマー政府との間で交換公文が交わされたODA事業の中で、入札が終わっている案件については一旦直ちに支払い実行を停止するとともに、主契約者の調達先に、国連調査団が挙げる国軍系企業【5】が入っているものがあるかを調査し、ある場合はそれを公表してください。支払い実行の停止をしない場合、日本が出資国の筆頭であるアジア開発銀行、第2位にある世界銀行がミャンマーに対する支払い実行を停止している中【6】、JICAが同様の措置をとれない理由をご説明ください。

4.海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)がミャンマーで出資している5件の案件について、JOINは、ミャンマー港湾公社とBOT契約やコンセッション契約を結んでいる「ティラワ港穀物ターミナル事業」及び「ティラワ港ターミナル運営事業」については、国軍が同公社を事実上統治下に置いていることから、関係を解消してください。ミャンマー建設省の所有地を利用する「ヤンキン都市開発事業」の土地の賃料が、国軍の収益となることが防げない場合、事業から撤退することを求めます。「ランドマーク・プロジェクト」においては、事業における収益も含め国軍を利することがないか調査をし、国軍を利することを防げない場合、事業から撤退することを求めます。「ヤンゴン博物館跡地再開発プロジェクト」(通称Yコンプレックス)事業に関しては、国軍とほぼ一体である国防省の所有地での事業であり、国軍との関係を解消できないことから、事業から撤退することを求めます。国土交通省はこれらをJOINが確実に実行するよう、指導してください。

5.国際協力銀行(JBIC)はYコンプレックス事業への融資を直ちに中止してください。ミャンマーでの他の事業への融資も一旦停止し、国軍系企業が事業に関与していないか、または、現在の状況下で、事業の実施が国軍に経済的利益をもたらすことはないか早急に調査し、国軍との関係が明らかになった事業に関しては融資を凍結してください。財務省はこれらをJBICが確実に実行するよう、指導してください。

6.日本政府は、ミャンマーで事業を実施する日本の民間企業に対し、国軍との関係を断つよう指導し、その実現に向けた支援を実施してください。国軍との関係を断つことを拒否する企業に対しては、日本政府の開発協力大綱及び国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に照らし、直ちに公的支援を取りやめてください。

【1】政治囚支援協会(AAPP)https://aappb.org/?p=13942
【2】【共同要請書】日本の対ミャンマー公的資金における国軍ビジネスとの関連を早急に調査し、クーデターを起こした国軍の資金源を断つよう求めます
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20210304.pdf
【3】【共同要請書】ミャンマー国軍を利する日本政府の経済協力事業を直ちに停止するよう求めます
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20210401.pdf
【4】原文:
https://www.gov.uk/government/publications/g7-foreign-and-development-ministers-meeting-may-2021-communique/g7-foreign-and-development-ministers-meeting-communique-london-5-may-2021
日本語仮訳
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100187048.pdf
【5】Alleged Subsidiaries and Affiliates of MEHL and MEC by Industry
https://www.ohchr.org/Documents/HRBodies/HRCouncil/FFM-Myanmar/EconomicInterestsMyanmarMilitary/Infographic3_MEHL_and_MEC_subsidiaries_and_affiliates.pdf
【6】ADB. ADB Statement on New Developments in Myanmar  (2021/3/10)
https://www.adb.org/news/adb-statement-new-developments-myanmar
World Bank. Developments in Myanmar (2021/2/19)
https://www.worldbank.org/en/news/statement/2021/02/01/developments-in-myanmar

呼びかけ団体:
アーユス仏教国際協力ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
日本国際ボランティアセンター(JVC)
武器取引反対ネットワーク(NAJAT)
メコン・ウォッチ

賛同37団体(冒頭のリンクからPDF版をご参照下さい)