【声明】ティンセイン大統領来日にあたっての公開書簡~ビルマ(ミャンマー)の民主化・人権の促進のために~

ティンセイン大統領来日にあたっての公開書簡
~ビルマ(ミャンマー)の民主化・人権の促進のために~

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ビルマの大統領ティンセイン氏が4月20日に来日し、
4月21日には野田首相との間で首脳会談が予定されています。
4月1日に実施された補欠選挙において、アウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟が勝利を収めたことに象徴される通り、
昨今のビルマでは、民主化が一定の進展を見せています。
しかし、国際社会がビルマに長年にわたり求めてきた人権・民主化をめぐる喫緊の課題のなかで、
未だ実現されない課題は多く、それが今後の人権・民主化の進展に不安定な影を落としています。
また、カレン州、カチン州、シャン州等の少数民族地域においては、少数民族への攻撃、
戦闘行為による殺害や避難民の発生など、人権状況が深刻化していると伝えられています。
さらに、少数民族と軍の戦闘が終了した地域では、国軍が駐留を継続・拡大し、
開発プロジェクトのために少数民族の長年住み続けた土地を軍が没収し、
強制的に移動させたという事例も少なからず報告されています。
日本政府はティンセイン大統領の来日にあたり、経済協力について議論を進めると予測されますが、
現在のビルマの人権・民主化をめぐる状況を手放しに評価して無条件で援助を拡大することは早計です。
国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、日本政府が今回の首脳会談において、
ビルマの人権・民主化の促進のために以下の課題をティンセイン大統領に対して明確に提起し、
その実現を求めるよう要請します。

1 ビルマ国内において拘束されているすべての政治犯を即時無条件に釈放すること
2  国内におけるすべての市民に、言論、表現、集会、結社の自由を完全に保障すること
3 政治犯が長期的な拘禁を強いられてきた根拠である国家緊急事態法等の弾圧立法を直ちに廃止し、
人権を「法律の範囲で」保障すると規定するに2008年憲法の人権条項の修正に直ちに着手すること
4 少数民族地域において行われている国軍による攻撃を直ちに中止し
国軍・警察により少数民族地域を中心に行われている殺害、攻撃、拷問・レイプ、
強制労働、強制立ち退き等、すべての人権侵害の即時停止を命ずること
5 少数民族との和解を速やかに実現し、和解に当たっては少数民族に対し文化・言語その他において平等な権利を保障すること。
対立するすべての問題について、武力や弾圧ではなく、話し合いによる解決を進めること
6  現在ビルマ国内で行われている開発プロジェクトが、
地域住民や少数民族の意向を無視して行われることがないよう開発地域住民との真摯な協議に基づいて行われるようにすること、
また、開発プロジェクトにおいて強制労働、強制立ち退き等の人権侵害が行われないように確保すること

  そして今後の日本のビルマに対する経済支援にあたっては、
「環境と開発を両立させる」「民主化の促進、基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払う」等の
政府開発援助大綱の実施原則を遵守し、万一にも人権侵害・環境破壊・紛争助長を発生しないよう最大限の配慮が必要です。
ヒューマンライツ・ナウは日本政府に対し、以下のことを要請します。

7 日本による経済援助プロジェクトがビルマ政府や軍の少数民族地域の人々への
迫害及び人権侵害を間接的に助長することがないよう、政府として徹底した事前調査を行い、
現地住民との協議を行うこと、その結果、人権侵害等の危険が確認された場合はプロジェクトを実施しないこと。
8 援助における透明性と説明責任を担保するための具体的な方策についてビルマ政府と協議し、
明確な方針を確立すること。

                                   以 上