【声明】カンボジア・縫製産業で違法な搾取労働が横行
1 東京に本拠をおく国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、2015年2月8日から12日にかけて、カンボジアの縫製工場における労働環境に関する調査団をカンボジアに派遣し、調査を行った。
東南アジア諸国には、日本を初めとして、数多くの衣類・靴の海外ブランドの工場が存在する。しかしながら、そういった企業は販売時の競争力向上のため販売価格を下げることをまず優先する傾向がままあり、結果、労働者の人権侵害が生じるリスクが非常に大きくなるという問題が存する。
カンボジアでは50万人を超える労働者が衣料製品の製作に従事しており、衣料品を含む縫製品が輸出全体の約80%を占める。カンボジア国内の工場で作られた衣料品はGapやNike、H&M、ユニクロ等の国際的なブランド・メーカー向けに輸出されているが 、下請けであるカンボジア労働者の賃金は未だに低い。縫製工場労働者の90%を占める若い女性たちが労働搾取をされている。
2013年12月にバベット地区から始まった労働者のデモは、縫製工場労働者の最低賃金を月額80ドルから160ドルに上昇させることを求めて拡大したが、2014年1月はじめにプノンペンにおける労働者デモがカンボジア政府・治安部隊によって暴力的に鎮圧され、少なくとも4人が死亡し、39人にものぼる負傷者が出たうえ、多くの参加者が逮捕・拘束される事態となった。こうした事態が国際社会の批判を呼ぶ中、政府は最低賃金の向上等の施策を打ち出している。しかし、ヒューマンライツ・ナウの短期間の調査の結果からも、現実の労働者の権利状況は未だ深刻であることが判明した。
2
最低賃金
カンボジア政府は、縫製・織物工場・靴工場労働者に関する最低賃金を2013年12月31日に100ドルに引き上げ、その後、128ドルに引き上げている。しかし、これはとりわけ都市で生活する労働者の生活賃金には程遠く、このために、労働者は長時間残業を余儀なくされている。労働組合は引き続き160ドル以上の生活賃金を求めており、労働問題を取り扱うNGOは、国際的なブランド各社に対し、公平価格を保障するよう要請し、そのための協定(Fair
Wage Agreement)の締結を求めている。
他方、縫製・織物工場・靴工場労働者以外には全く最低賃金が定められておらず、搾取労働からきわめて脆弱な立場に置かれたままであり、労働者の地位は縫製工場労働者より劣悪であることは想像に難くない。