【声明】「特定秘密保護法の施行に抗議し、廃止を求める声明」を発表しました

ヒューマンライツ・ナウは本日「特定秘密保護法の施行に抗議し、廃止を求める声明」を発表しました。
全文とPDFをお知らせいたします。
特定秘密保護法の施行に抗議し、廃止を求める声明
                                               ヒューマンライツ・ナウ
1   2013年12月6日、第185回臨時国会において、日本国内外の大きな反対にも関わらず、特定秘密保護法が可決成立した。
そして、2014年12月10日、同法が施行される。
東京を拠点に活動する国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、同法が自由権規約19条やツワネ原則といった国際人権基準から逸脱して、表現の自由、知る権利等の人権を侵害するものであることから、懸念を表明してきた。同法が施行されることにより、表現の自由を含む日本の人権・民主主義を深刻に損なう危険性が高いことに改めて強い懸念を表明し、施行に強く抗議する。
2   当団体は、秘密保護法が、秘密の範囲が広範で限定がなく、国民の知る権利を侵害する危険性があること、憲法違反・重大な権力犯罪や人権侵害等が機密指定される危険性があること、秘密指定の濫用をチェックする第三者的機関の欠如、内部告発者に対する保護がないこと、「教唆・共謀・煽動」そのものを処罰する規定により、報道の自由が損なわれ、市民社会による行政監視・モニタリング活動そのものが侵害され、委縮させられる危険性があること、国政調査権、司法のコントロールという立憲主義の基本を掘り崩す危険性などを指摘し、これに反対してきた。
同様の懸念は広く国内外から寄せられ、約9万件も寄せられたパブリックコメントで8割以上の国民が反対・慎重な意見を述べ、世論調査でも8割以上が慎重な審議を求め、研究者、文化人、ジャーナリスト、市民団体等がこぞって反対を表明した。さらに、国連人権トップである国連人権高等弁務官、国連「表現の自由」に関する特別報告者、同「健康の権利」に対する特別報告者からも深刻な懸念が表明された。
日本政府は、こうした内外の懸念に一切耳を貸さず、法律を強行成立させたものである。同法は、成立プロセスにおいて重大な問題があるうえ、憲法および日本が批准する国際人権条約に違反する疑いが濃厚である。
3  強行採決後も、同法に対する国内外の批判が止むことは無かった。
2014年7月24日、国連自由権規約委員会は日本に対する総括所見を発表、秘密保護法について、秘密の定義が広く曖昧であること、秘密指定の要件が抽象的・一般的であること、ジャーナリストや市民に対しても重罰が定められていることについて懸念を表明し、秘密の限定、公益通報者の不処罰など、表現の自由・知る権利を保障するための全ての必要な措置を講ずるよう日本政府に勧告した。ところが、日本政府はこうした国際機関の勧告を一顧だにしていない。
本年10月14日に同法の施行令及び運用基準が閣議決定されたが、その内容は自由権規約委員会が指摘した懸念や、やパブリックコメントで示された国民からの要望に応えたものではない。
同施行令は、秘密指定できる行政機関を外務、防衛両省や警察庁など19機関とし、運用基準では、秘密と指定できる事項を55項目に細分化した。しかし、秘密指定のカテゴリーは未だ広範かつ曖昧であり、指定は各省庁の裁量・解釈に委ねられており、国民の「知る権利」を著しく制約する危険性が高い。
内閣官房に設置される「内閣保全監視委員会」、内閣府に設置される「独立公文書管理監」の権限は限定的で、濫用に歯止めをかける独立した第三者機関とは到底認められない。
さらに、運用基準には、漏えい罪や取得罪、それらの教唆・扇動等の罰則規定の謙抑的な運用について具体的な言及が全くなく、公益通報者に対する保護も著しく不十分である。
ジャーナリスト・市民社会による権力・行政監視活動が刑罰の威迫により萎縮させられる重大な危険は全く払しょくされていない。
4  ヒューマンライツ・ナウは、秘密保護法の施行に抗議するとともに、同法の実施を直ちに停止し、速やかにこれを廃止することを求める。
同時に、同法の発動やその威嚇によって、国民の権利が不当に侵害されることがあってはならない。政府機関・捜査当局には、同法に基づき、国民の知る権利、表現・報道の自由、市民社会による政府へのモニタリング・監視活動を抑圧、弾圧することがないよう、強く求める。
                                    以 上