【意見書】「放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針骨子案」

放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針骨子案」

等に対する意見の募集(パブリックコメント)に対する意見

    

           特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ

 

1    除染に対する基本的見解

放線汚染からの原状回復は、国および東京電力が第一義的に負うべき義務であり、国および東京電力はその責任として、除染を実施すべきである。

ところが、現状では、政府による除染は、担当区分が省庁により細かく分かれており、国として総合的・包括的な除染の方針が出されて推進されているとは到底いえない。[1] 地域全体の除染に関しては、各自治体に委ねられているが、自治体は予算とマンパワーが限られていることから、民間の所有地の除染まで行うことができない状況にある。

ヒューマンライツ・ナウの除染に対する基本的見解は以下のとおりである。

      一刻も早く、政府・東京電力の責任で、最新鋭の技術を駆使した汚染地域の測定および除染活動を行い、1mSv/年以下(自然放射線を除く)までに回復すること

      国が実施主体となって除染を実施すること。住民を動員して、人々の

健康をさらに危険に晒すやり方の除染を行わないこと

・ 除染は、現在人が居住している放射性セシウムの汚染度が555Bq/m²

 を超える箇所・地域を最優先に行うこと

・放射性セシウムの汚染度が185Bq/m²を超える箇所・地域全域につ

いても速やかに行うこと

特に、福島県の全学校、教育施設や子どもの生活環境となる、通学

路、公園などは、早急な対策をとること

      現在人が避難している地域についても可及的な原状回復を行うこと

 

これまで、ヒューマンライツ・ナウは、国の除染に対する実施責任を明確にし、除染活動を早急かつ円滑に行うため、放射性セシウムなどの放射性同位体の運搬や保管を含む除染に関する法整備を早急に行うよう求めてきたが、今回の放射性物質汚染対処特措法、これに基づく基本方針案は、いずれも不十分であり、抜本的な見直しを求める。

 

2        法の構造および、「放射性物質汚染対処特措法第 11 条第1項、第 25 条第1項、第 32 条第1項及び第 36 条第1項の環境省令で定める要件案」について

(1)  法は、法25条により除染特別地域についてのみ国が実施主体となるとし、この地域に該当しない「汚染状況重点調査地域」については法35条により、国が管理する土地は国、都道府県が管理する土地は都道府県、市町村が管理する土地は市町村が実施主体となって除染を行うとする。

そして、「放射性物質汚染対処特措法第 11 条第1項、第 25 条第1項、第 32 条第1項及び第 36 条第1項の環境省令で定める要件案」によれば、除染特別地域は、警戒区域又は計画的避難区域である地域に限られ、「汚染状況重点調査地域」は、放射線量が一時間当たり 0.23 マイクロシーベルトである地域とする。

(2)  しかしながら、これでは、現在の問題は到底解消できない。現在、地域全体の除染が各自治体に委ねられ、国として総合的・包括的な除染の方針が出されて推進されているとは到底いえない状況であり、自治体は予算とマンパワーが限られているため、市民が現実に除染の負担と危険に晒されている。

ところが、今回の立法で、国はわずかに警戒地域と計画的避難区域について実施主体となり、その他の地域では市町村等がそれぞれに立案してくる計画に対し資金提供等をするという役割を果たすに過ぎず、実施は市町村等に委ねられることとなる。これでは、避難指示が出ていない広範な地域において、国としての総合的・包括的な除染の方針策定・実施がなされないこととなる。

現実に人々が居住し、健康被害に晒されているのは、避難指示が出ていない地域であり、こうした地域についてこそ、国が実施主体となって総合的かつ効果的な除染を速やかに行うべきである。

市町村に除染をゆだねるなら、不十分な実施計画しか立てることができないこと、マンパワーと財源不足により市民が除染に駆り出されることが予測される。

例えば、福島市が発表した計画では、2年間で大気中の放射線量を、毎時1マイクロシーベルトにすることを目標にするとされている。[2]しかしこの目標は、2年後に年間8.7ミリシーベルトを目指すというものであり、2年後も放射線管理地域に相当する場所で人々、特に妊婦や子どもたちが暮らさなければならないことを容認する目標である。到底容認できない値である。

そして、この目標を達成するために市民が主体的に除染をすべきとされている。福島市の計画には「市内の除染対象の面積は広大であり、行政だけで全てを行うには相当の期間を要することが予想されます」とし、「早期に市内の除染を行うためには、個人住宅や放射線量が低い身近な側溝など周辺環境については、市民の皆さんの除染への協力をお願いしなければなりません。また、民間所有地については、土地所有者・各事業所等による除染の協力をお願いします」と明記されている。さらにこのような不十分で実効性のない除染に市民、特に若い世代が動員されることになれば除染による被害も深刻に懸念される。

国はこうした不十分な除染の実施や市民の動員で人々の健康を危険に晒すことを容認すべきでなく、一律の計画と財政投入により一刻も早く効果的な除染を行うべきであり、そのためには、国が実施主体となるべきである。

ヒューマンライツ・ナウは、年間実効放射線量が1ミリシーベルト(自然放射線を除く)を超える地域については、すべて国が実施主体となるべきと考え、法および計画の全面修正を求める。

 

3   「放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針」について

(1)   事故由来放射性物質による環境の汚染への対処の基本的な方向について

1) 「環境汚染への対処に関しては、関係原子力事業者が一義的な責任を負っていること。また、国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることから、環境汚染への対処に関して、国の責任において対策を講ずる」としている点はそのとおりである。この理念を現実のものとするためには、上述の通り、国が実施主体となるべきである。

2)      「環境汚染への対処には、地域住民の協力が不可欠である」「環境汚染への対処については、各省庁、関係地方公共団体、関係機関、事業者、国民等が総力を結集し、一体となってできるだけ速やかに行う」と記載されている。

しかしながら、被害者である住民が健康のリスクに晒されながら、自らの犠牲と危険を被りながら、除染に協力・動員されることは到底容認しがたい。

私有地であっても、国が実施主体として、住民の承諾のもとに徹底した、科学的で実効性のある除染を実施すべきである。

ヒューマンライツ・ナウは、被害者である住民に負担と危険を強いて除染を実施しようとする計画に反対し、再考を強く求める。

3)       「上記の取組を進めるに当たり、国は、国際社会と連携・協力しつつ、国内外の叡智を結集して対応すること」との点はそのとおりである。

国は財源不足等を理由に、実効的かつ徹底した除染を実施しないことを正当化することはできない。諸外国や国連環境計画等、国際的援助を受け、最先端の技術で除染を実施すべきである。

(2)   土壌等の除染等の措置に関する基本的事項

1)      「(1)基本的な考え方について」とされる部分のうち、「人の健康の保護の観点から必要である地域について優先的に特別地域内除染実施計画又は除染実施計画を策定し、線量に応じたきめ細かい措置を実施すること。特に子どもの生活環境については優先的に実施すること」については賛成である。この観点からも、人の健康の保護の観点から必要である、人々がまだ避難していない、年間1ミリシーベルト以上の地域において、国が実施主体として、実効性ある除染計画を早急に策定し、実施すべきである。

2)    「追加被ばく線量が年間 20 ミリシーベルト未満である地域については、下記の目標を目指すこと」として、

「・長期的な目標として追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下となることを目指すこと。

・具体的な目標として、平成258月末までに、一般公衆の推定年間被ばく線量を平成238月末と比べて、放射性物質の物理的減衰等を含めて約50%減少した状態を実現することを目指すこと。

・子どもが安心して生活できる環境を取り戻すことが重要であり、学校、公園など子どもの生活環境を優先的に除染することによって、平成258月末までに、子どもの推定年間被ばく線量が平成238月末と比べて、放射性物質の物理的減衰等を含めて約60%減少した状態を実現することを目指すこと。」とされている。

しかしながら、政府は年間1ミリシーベルト以下の環境を人々、特に子どもなど影響を受けやすい人々に保障する責務があるのであり、50%60%という相対的低減目標は意味を有しない。

目標は、どのようにして、何年後に1ミリシーベルト以下を実現するのか、を明確にすべきであり、「長期的な目標として追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下となることを目指すこと」というだけでは何ら内容はない。

早急に、必要に応じて最先端の国際機関等の援助と知見を得て、年間1ミリシーベルト以下とするための計画をたて、実施を約束すべきである。

3)    除染と避難、補償について

   福島県内においては、避難のオールタナティブとして除染が推奨され、除染を優先的に行うこととして、線量が高い地域であっても避難が認められない、という事態が進行している。

   子ども・未成年を動員して除染をさせ、それによって避難すべき人々の避難の権利や選択肢を狭めるのは到底容認できない。

    ヒューマンライツ・ナウは、

すべての科学的知見を総合して、政府が速やかな除染の計画を立てて、公表することとともに、

・除染によっても年間実行放射線量が1ミリシーベルト(自然放射線量)以下とならないと予想される地域については、長期的避難の権利を認め、そのための補償と財政支援措置を政府として実施すること

 を求める。

                                以上

 

  「放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針骨子案」等に対する意見の募集に対する意見.pdf

 

 

 

 


 

[1]例えば文部科学省は学校の土壌の除染を担当しており、汚染土壌の入れ替え、除染の費用を負担しているが、一歩学校の外となると文部科学省は一切関与しない。公道の土壌は各自治体が担当になるが、更に民間の家の庭の土壌は、各家庭の責任とされている。