【提言】11月21日公表 刑法改正市民プロジェクト改正試案を公表します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

11月21日、刑法改正市民プロジェクトが開催した院内集会

多くの市民、メディア、議員の方々のご参加を得て大きく成功いたしました。心より御礼申し上げます。

この集会で発表した刑法改正提案を公表いたします。

ダウンロード(PDF): 私たちが求める刑法性犯罪規定改正案(叩き台)

これはヒューマンライツ・ナウが最終的に取りまとめましたが、

性暴力をなくすために集まった12団体の総意として発表されたものです。

まだたたき台であり、これから多くの方の意見を聞きつつ進めていきたいと思っていますが、

これを一つの土台として、性暴力被害者が泣き寝入りをすることなく、

守られるような法制を2020年に目指したく、真剣な討議を進めることを、

法務省とすべての国会議員、関係者の皆様に呼びかけます。

院内集会当日は、法務省への要請も行い、その後の会見も含め、多くのメディアで報道いただきました。

どうぞ皆様の引き続きの応援をよろしくお願いいたします。

 

ヒューマンライツ・ナウ事務局長 伊藤和子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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私たちが求める刑法性犯罪規定改正案(叩き台)

                         刑法改正市民プロジェクト

                         発表 Human Rights Now

   2019年11月21日院内集会

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改正案

176条 不同意性的接触罪・加重不同意性的接触罪・若年者不同意性的接触罪

1項  他の者の認識可能な意思に反して、その者に対して性的接触をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。

2項  前項の性的接触を暴行又は脅迫を用いて行った者は、加重不同意性的接触罪とし、3年以上の有期懲役に処する。

3項 第1項の性的接触を16歳未満の者に対して行った者は、若年者不同意性的接触の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。但し、16歳未満同士の場合は除く。

 

(補足説明)

*「他の者の認識可能な意思」に関しては177条の説明参照のこと。

*現行の性交同意年齢13歳について、性的自由や性的自己決定権が保護法益とされている現在においては、立法当時の女子の妊娠可能年齢という身体的成熟を基準とした考え方は除去されるべきである。

当該性的行為の意味や内容、その行為の結果生じるリスク等に関する知識や理解力を有するであろう社会的成熟度によって設定すべきであり、若年者保護の観点から、義務教育終了年齢である16歳未満が適切であると考え、提案する。

なお、就学前および学校教育における性教育や非暴力の年齢に応じた段階的実施と相俟って若年者の保護を確保していく必要がある。

*「わいせつ」はあいまいな概念であるため、構成要件を明確にするため、「性的接触」と定義することを提案する。

「性的接触」とは、性的部位(口、胸、尻、陰部)に接触する行為を指すものとし、性的部位以外の身体(腕や肩・背中など)を執拗になで回す等の行為については、暴行罪の範囲で犯罪とする、あるいは、例えば法定刑を引き下げたセクシュアル・ハラスメント罪を新設して対応することも検討の余地があると考える。

*2項、3項について、行為態様の悪質性及び若年者保護の観点から、但し情状による執行猶予も射程に入れ、法定刑を3年以上の有期懲役として提案する。

 

改正案

177条 不同意性交等罪・加重不同意性交等罪・若年者不同意性交等罪

1項 他の者の認識可能な意思に反して、性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」)を行った者は、不同意性交の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。

2項 前項の性交等を暴行又は脅迫を用いて行った者は、加重不同意性交の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。

3項 第1項の性交等を16歳未満の者に対して行った者は、若年者不同意性交の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。但し、16歳未満同士の場合は除く。

    

*ドイツ刑法を参考に、不同意であることを客観化するために、他の者の認識可能な意思に反した性的行為を処罰とすることとし、認識可能な意思は、明示・黙示(涙を流している場合が典型)に表明された不同意である。

被害者がフリーズして黙示の意思表明が不能だった場合などの扱いは検討課題であり、この提案をまずは叩き台として議論いただきたい。

*量刑について、例えば、不同意性交を5年以上、加重を7年以上とすると、加重の場合に酌量減軽による執行猶予の可能性がなくなる。酌量減軽のある場合を想定するならば、加重を6年以下にする必要があり、「暴行・脅迫」要件のある現行法が5年以上であることから、加重について現行法と同様の5年以上とし、不同意性交罪については3年以上とすべきと考える。

*AV出演強要や売春の強要のような事態も想定し、行った、に加えて「行わせた」を入れることも検討に値する。

 

改正案

178条 同意不能等性的接触罪・同意不能等性交等罪

 1項 176条1項の性的接触を、人の無意識、睡眠、恐怖、不意打ち、酩酊その他の薬物の影響、疾患、障害もしくはその他の状況により特別に脆弱な状況に置かれていた状況を利用し、又はその状況に乗じて行った者は、同意不能等性的接触罪とし、176条2項の例による。

2項 前条1項の性交等を、人の無意識、睡眠、恐怖、不意打ち、酩酊その他の薬物の影響、疾患、障害もしくはその他の状況により特別に脆弱な状況に置かれていた状況を利用し、又はその状況に乗じて行った者は、同意不能等性交等罪とし、前条2項の例による。

 

*現行法の「抗拒不能」要件は、最高裁判例等で明確な定義がなされておらず、明確性に欠ける。構成要件の明確性確保のためにも、行為者の故意の対象を明確にして自由保障機能を確保するためにも、定義を明確化するべきである。そして、脆弱性に乗じた場合を網羅的に列挙することにより、被害者を保護する。

これは叩き台であり、これらで網羅されているか、あるいは定義の明確性については、今後の議論・検討が必要である。

*反対意思を形成あるいは表明できない状況を利用し、あるいは乗じてわいせつ行為や性的行為に及んだ場合には、その者の意思に反するものとみなし、反対意思の形成や表明ができない、又は困難な被害者に意思表明の義務を負わせずに保護し、加害者側に同意を得たことの立証責任を負わせる。

*反対意思を形成あるいは表明できない状況の列挙はスウェーデン法を参考にした。

なお、イギリス法76条を参考に、相手を「欺罔」して同意を得た場合について、自由な意思に基づく同意ではないため、一類型として「欺罔」を盛りこむことも検討に値する。

 

改正案

179条 監護者性的接触罪・監護者交等罪

 1項 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性的接触をした者は、176条3項の例による。

2項 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、177条3項の例による。

 

179条の2 地位関係利用性的接触罪・地位関係利用性交等罪

 1項 現にその者を監護又は介護する者、親族、後見人、教師、指導者、雇用者、上司、施設職員その他同種の性質の関係にある者が、監督、保護、支援の対象になっている者に対する影響力があることに乗じて性的接触をした者は、176条1項の例による。

2項 現にその者を監護又は介護する者、親族、後見人、教師、指導者、雇用者、上司、施設職員その他同種の性質の関係にある者が、監督、保護、支援の対象になっている者に対する影響力があることに乗じて性交等をした者は、177条1項の例による。

 

  • 監護者等性交等罪では、18歳以上の被害者に対するものや、親族、後見人、教師、指導者、雇用者、上司、施設職員等権力関係にある者が地位を利用した性被害事案に対応できないことから、179条の2を新たにもうける。

参照:現行法

(強制わいせつ)

第百七十六条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

(強制性交等)

第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

(準強制わいせつ及び準強制性交等)

第百七十八条 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。

2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

(監護者わいせつ及び監護者性交等)

第百七十九条 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。

2 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条の例による。

(未遂罪)

第百八十条 第百七十六条から前条までの罪の未遂は、罰する。

(強制わいせつ等致死傷)
第百八十一条 第百七十六条第百七十八条第一項若しくは第百七十九条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
2 第百七十七条第百七十八条第二項若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。