【要請書】女性など、多様なニーズに配慮した避難所の設置について

ヒューマンライツ・ナウでは、東日本大震災に関して、要請書「女性など、多様なニーズに配慮した避難所の設置について」を発表いたしました。

要請書:女性などに配慮した避難所.pdf

 

【女性など、多様なニーズに配慮した避難所の設置について】

2011年5月10日
特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ

東日本大震災から約2か月がたち、今後も少なくない人々が避難所生活を続ける状況となっています。こうした避難所生活において、人々の人権が尊重されること、特に脆弱な立場にある人々の特別のニーズに配慮した保護がなされることが必要です。
この点、内閣府男女共同参画局は、3月16 日に、「女性や子育てのニーズを踏まえた災害対応について」を取りまとめ、女性に配慮した避難所の運営として、①プライバシーを確保できる仕切りの工夫、②男性の目線が気にならない更衣室・授乳室、入浴設備、③安全な男女別トイレ、④乳幼児のいる家庭用エリアの設定など、さらに、⑤現地支援体制による女性のニーズの把握、⑥避難所の運営体制への女性の参画、⑦避難所への意見箱の設置、⑧女性医師・保健師や女性相談員による悩み相談サービスなどを行うよう求め、働きかけを行っているとされています。また、4月28日付で「被災者の多様なニーズに対応した支援について」とする文書が内閣府によりとりまとめられています。
ヒューマンライツ・ナウは、こうした内閣府による呼びかけ自体は積極的な意義があると考えます。しかし、問題はこれが各避難所で実施されているかどうかです。
ヒューマンライツ・ナウが過去三週間にわたり、被災三県で事実調査を展開した結果、
1) 未だに「仕切り」も女性の更衣室・授乳室もなく、プライバシーが保障されない避難所
2) トイレの環境が劣悪で利用に躊躇する避難所、仮設トイレが外部に設置されて安全でない避難所
3) 未だに衣服の洗濯が十分にできず、安全に女性の洗濯物干しをできるスペースが確保されず、下着を使い捨てにせざるを得ず、かつ下着の供給も不十分な避難所、など、
女性の切実なニーズに対応しない避難所が多いことが判明しました。さらには、
4) 食事の調理が避難所の炊事場で被災者によって実施される避難所があり、そうした避難所のなかには、既婚・未婚、職業の有無にかかわらず女性のみが炊事当番を強制的に割り当てられ、1日中炊事場で作業に追われる一方、男性にはそうした義務が課されていない、という性別役割分担が強要されている避難所があるとの情報も確認しました。
5) 多くの避難所では、運営に女性が参画しておらず、
6) そうしたなか、避難所を運営する区長などの判断により、仕切りはコミュニティの団結を阻害する、女性特有の要望(例えば化粧水の支給等)は贅沢である、などと決定されてしまい、女性が沈黙させられて何もいえない状況が報告されています。
7) 避難所の意見箱は誰に見られるかわからず、女性のニーズ把握には有効でありません。
8) 避難所に民間等による女性相談が設置されている避難所は少数にとどまり、こうした申し出が避難所の意思決定として許可されない避難所が多く、さらにパープル・ホットライン等、女性のための外部の電話相談に関するチラシ配布すら拒絶される避難所も少なくないことが判明しています。
これは、通達・通知が中央省庁で出されても、多くの現場において徹底していないことを示すものです。一部では通達に沿った先進的な取組みがされているものの、全体の動きになっていないのが実情です。
 避難所生活を今後も継続をせざるを得ない女性たちは、不満があっても沈黙を余儀なくされ、自ら意見を述べて現状を変えることは困難です。
 ヒューマンライツ・ナウは、政府、とりわけ、内閣府に対し、単に通達・通知を出すのみでなく、現場での徹底をはかる対応を求めます。

そのために内閣府に対し、必要に応じて県、自治体の職員や女性団体とともに、
1 現場の避難所を回って、上記通知と現状の乖離の有無、女性たちのニーズや不満を調査・把握すること
2 現場の避難所での、各種通知を掲示するよう徹底すること
3 現場の避難所で問題事例の存在を確認した場合、その場で避難所の責任者と協議して改善を求めること
4 各種女性に対する相談等の通知がすべての被災女性に行きわたるよう、必要な対策を講じ、被災女性の様々な悩みに対応できる体制を確保すること

さらに、内閣府として、
5  県・自治体の男女共同参画担当の職員の方々が、上記1-4の活動を日常的に行うよう働きかけ、実施状況を定期的にモニタリングし、改善に向けた協力・協議を日常的かつ丁寧に行うこと
6 県・自治体の職員の方々が上記1-4の活動を日常的に行えるよう、必要な支援を国として行い、支援の人員を派遣することも含めて体制拡充を援助すること
7 現場で被災女性支援にあたる女性団体、NPOからも丁寧に事情を聴き取り、こうした民間団体と連携・協議しながら改善を進めること

を要請いたします。