【報告】NY国連本部における核兵器禁止条約の交渉会議の結果報告

ヒューマンライツ・ナウのニューヨーク事務所が、国連本部における
核兵器禁止条約の交渉会議に出席しました。

~採択と今後の課題~
NY国連本部で6月15日から始まった核兵器禁止条約交渉会議の第2会期は、7月7日の条約採択とともに幕を閉じました。前回の報告でも触れたとおり、交渉2週目に入ってからの交渉会議は内容非公開(ツイッターやフェイスブックでの報告、写真・ビデオ撮影禁止)という日が続きました。交渉最終日が目前に迫るにつれ、検討しなければならない項目の多さに焦りや不安を声にする参加国代表者も目立ち始めました。

7月3日に第3次草案が発表され、祭日(独立記念日)を挟んだ2日後の7月5日朝の本会議セッションでは、「NPTの中心的存在感が損なわれるため前文には賛成できない」(オランダ)、「前文19項目のCTBTの引用内容が不正確なので前文は改正が必要」(エジプト)、「我々の国民の半分は核実験の被爆者。被爆者の存在がもっと強調されるべき」(カザフスタン)、「この条約が支持され、共に生きていくに値するかが検討されるべき」(ブラジル)など、各国それぞれが草案について意見しました。不満な意見も多い中、南アフリカ代表の「民主主義のプロセスはギブ&テイク。追加したい点はまだまだあるけれど、完璧な条約など存在しない。」や、ホワイト議長の「本草案は皆で討議を重ねた成果であり、これが我々のベストを尽くした結果。」といった言葉も印象的でした。核兵器が人類に及ぼす非人道的仕打ち、国際人道法などの観点から核兵器禁止を訴えていた赤十字国際委員会(ICRC)においては、「最終草案には、我々が望んでいた内容が全て含まれている」とコメントしました。ヒューマンライツ・ナウも属する反核の国際キャンペーングループICAN (International Campaign Against Nuclear Weapons)は、「核兵器が禁止されることによって今後、人類より国家の利害を優先するという行為が通じなくなるだろう。核兵器を非合法にするという会議の目的は達成された」と喜びを表しました。

そして7月6日、条約採択の最低24時間前までに発表されなければならないと言われていた条約最終案が予定どおり発表されました。その後、各国代表者らがスペイン語圏、アラビア語圏、英語圏などの言語別グループに分かれ、翻訳版の確認プロセスに入りました。

7月7日の最終日の朝、会議室は早くから席が足りなくなるほどの人で埋めつくされていました。会議が始まってすぐに認定委員(マラウィ)が投票なしの条約採択をアナウンスすると、NATOメンバーで核傘下にあるオランダが投票記録を要求しました。投票結果はすでにメディア報道されているように、採択賛成の圧倒的な勝利でした。

(賛成122 反対1 棄権1)結果がスクリーンに映し出され始めるとともに、会議室内は総立ちになり歓喜の拍手で溢れました。ようやく拍手が静まると、議長が改めて核兵器禁止条約が採決されたことを会場に伝えました。長い交渉会議を終え、条約採択まで無事辿りついて感極まったのかもしれません。議長は何度も涙をこらえて話しました。

国連軍縮担当上級代表の中満泉氏も、会議参加者に祝辞の言葉を語りました。その後、各国代表が次々と議長に感謝の意を表し、条約内容についてコメントしました。内容の賛否は依然としてあり、課題も多く残っています。しかし、被爆者の節子サーローさんや多くの代表者が言ったように、地球を愛し人類を愛するならば、この条約を採択したであろうし、来る9月20日の核兵器禁止条約署名式で署名するべきです。市民社会団体はすでに、来年の国連ハイレベル核軍縮会議(2018 UN High Level Conference on Nuclear Disarmament)に向けて動き始めています。

今年8月で終戦72年を迎えます。広島・長崎に人類初の原爆が落とされ、たくさんの尊い命と未来が一瞬にして奪われました。今回の核兵器禁止条約の成立までに、どれだけ多くの犠牲が払われ時間が費やされたことでしょう。そこから学んで前進すること、広島・長崎の原爆投下を人類最初で最後にすることは全ての人の義務であり、国境を越えた連帯責任ではないでしょうか。
(HRN NY事務所インターン マルティネス・まろみ)