■ユニクロ・カンボジア国内製造請負工場における労働者大量解雇の概要■
- FR社のサプライヤーであるZhong Yin B工場の50名余の労働者が、2015年9月にカンボジアの労働組合であるC.CAWDUにおける活動を理由に解雇されました。2016年12月、カンボジアの仲裁委員会は全員の職場復帰を命じましたが、会社側はこれを拒絶。2016年、こうした会社側の姿勢を抗議するため、Zhong Yin B工場の同僚労働者がストライキをおこしましたが、大量解雇されました。
- さらに、工場経営陣は、解雇された50名余の労働者を被告として、労働契約終了を確認する訴訟を提起しました。
- 2015年9月の解雇から、1年が経過し、一部には諦めてしまった労働者たちもいましたが、100名を超える労働者たちは依然として復職を求め続け、彼らや家族の生活は困窮を極めました。
<困窮する労働者の写真>
■国際NGO共同公開書簡の送付■
- カンボジア、アメリカ、ヨーロッパ、香港、日本のNGOは、FR社に対し、Zhong Yin 社の経営陣が労働者の権利を保障するように命じた仲裁委員会の決定に従うようにメッセージを送るよう、数度にわたって要請してきましたが、FR社は積極的な対応を取ることはありませんでした。
- カンボジア、アメリカ、ヨーロッパ、香港、日本のNGOは2016年9月29日、カンボジアにおけるユニクロの委託先工場の労働者権利侵害について、FR社に対応を求める共同公開書簡を送付しました。同公開書簡は、FR社が委託先工場の経営陣に対して労働者の職場復帰を促し、問題解決のための交渉に参加することを促すよう要請しました。
<公開書簡署名NGO>
C.CAWDU(カンボジア) Central(カンボジア) 香港職工会連盟(香港) 全球化監察(香港) SACOM(香港)
Clean Clothes Campaign(ヨーロッパ) Workers United-SEIU (米国) International Union League for Brand (世界)
ヒューマンライツ・ナウ(日本) 日本消費者連盟(日本) アジア太平洋資料センター(日本)
公開書簡に関するウェブ掲載記事はこちら:http://hrn.or.jp/activity/8819/
■国際NGO共同アクション■
- また、同公開書簡に署名したNGOは、世界各地で、FR社に対応を求める共同アクションを行いました。
- ヒューマンライツ・ナウでは2016年10月13日、東京で記者会見を開き、FR社のカンボジア国内製造請負工場における労働者不当解雇の経過について説明し、FR社の行動規約に従って状況改善に取り組むよう要請しました。
- また、同日18時40分からは、ユニクロ銀座店前で、同問題を消費者に呼びかけるNGO共同行動を行いました。参加者は、消費者に同問題についてより関心を持ってもらうように、「カンボジアの労働者の人権を守ってください!」「首切りファッションなんてきたくない!」と呼びかけ、同店を訪れた人々にアピールしました。
記者会見・呼びかけ行動の掲載記事はこちら:http://hrn.or.jp/activity/8981/
■メディア報道・FR社の反応■
- ヒューマンライツ・ナウが行った記者会見の模様は、各メディアで報道され、社会的な関心を集めました。
- また、FR社も2016年10月19日にプレスリリースを発表し、8月以降、Zhong Yin B工場での生産を停止し、和解の早期実現を促してきたことを説明しています。
- さらに、FR社は、取引先工場向けに定めた行動規範「ファーストリテイリンググループ 生産パートナー向けコードオブコンダクト」でも、商品生産の過程における適切な労働環境と持続可能性の実現を重視すること、組合結成の自由を尊重すること、などを明記し、すべての取引先工場にその遵守を求めていることを公表しました。
メディアに紹介された記者会見に関する掲載記事
FR社のプレスリリースに関する掲載記事
■工場経営陣と労働者側の和解■
- 国際NGO共同アクションの直後である10月14日から19日にかけて工場経営陣とカンボジアの労働組合であるC.CAWDU(Coalition of Cambodian Apparel Workers’ Democratic Union:カンボジアアパレル労働者民主連盟)の間で交渉が行われ工場側が労働者の不当解雇について是正措置を取ることが合意されました。
2016年10月19日に合意された工場経営陣側の是正措置の主なポイント
- 工場側は、2015年12月に仲裁評議会が復職を命じた46名の労働者を復職させ、解雇の日から復職する日までの期間における賃金の80%を支払う。
- 現在仲裁評議会で審議されている、54名の労働者の解雇事例については、仲裁評議会における仲裁手続きを進めること、その決定に従うことを合意する。
- 両当事者は、労働者、活動家、経営側に対して提起したすべての訴訟を取り下げる。
C.CAWDUによれば46人の労働者の職場復帰は12月15日、補償の支払いは10月24~28日とされています。
ヒューマンライツ・ナウでは、引き続き、工場側が合意をきちんと履行するよう、また、FR社がカンボジア製造請負工場の労働者の人権を保障するとともに、サプライチェーン全体における人権の尊重をさらに促進するよう、モニタリングしてまいります。
本件キャンペーンに参加、報道、そしてご注目をいただいたすべての方に感謝するとともに、今後とも本件についてご注目いただくようお願いいたします。