【NGO共同公開書簡】ユニクロ製造請負工場の労働者権利侵害についてFR社に対応を求める書簡を公表しました。

国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)、カンボジア、アメリカ、ヨーロッパ、香港、日本のNGOと共同で、カンボジアにおけるユニクロの委託先工場の労働者権利侵害について、ファーストリテイリング社(FR社)に対応を求める共同公開書簡を発表いたしましたので、全文をご報告します。

同公開書簡では、カンボジアにあるユニクロの委託先工場で労働環境改善を求めてストライキを行った労働者が工場経営者によって解雇された事例において、カンボジアの仲裁機関が工場経営者に対して労働者の権利を保障するように裁定した結果についてFR社が積極的に工場経営者側に対応を求める措置を取らないことは、同社の行動規約に違反していることを指摘しています。

その上で、同公開書簡は、FR社が委託先工場の経営陣に対して労働者の職場復帰を促し、問題解決のための交渉に参加することを促すよう要請しています。

同公開書簡は、ヒューマンライツ・ナウのほかに、以下のNGOが署名しています。

Hong Kong Confederation of Trade Union

Globalisation Monitor

Students and Scholars against Corporate Misbehaviour (SACOM)

Clean Clothes Campaign

Coalition of Cambodian Apparel Workers’ Democratic Union (C.CAWDU)

Center for Alliance of Labor & Human Rights (CENTRAL)

Workers United – SEIU

International Union League for Brand Responsibility

特定非営利活動法人 日本消費者連盟

特定非営利活動法人 アジア太平洋資料センター

 

以下、公開書簡の日本語訳を全文ご紹介します。

FR社に対するNGO共同公開書簡(日本語訳) 【PDF】

FR社に対するNGO共同公開書簡(英語原文) 【PDF】


                                                                                                                           2016年9月29日

ファーストリテイリング株式会社への公開書簡

最高経営責任者 柳井正様
ユニクロ執行役員兼法務部CSRチーム部長 新田幸弘様

ファーストリテイリング株式会社のサプライヤーであるZhong Yin B (Cambodia) Texitile Co.Ltd. の47名の労働者と3名の労働組合のリーダーは、ご承知のとおり2015年9月から、失職したままとなっています。

彼らは、カンボジアの労働組合であるC.CAWDU(Coalition of Cambodian Apparel Workers’ Democratic Union:カンボジアアパレル民主労働組合連合)における活動を理由に解雇されました。2016年2月、この組合つぶしの行動に抗議するためにストライキを行った彼らの同僚も200名以上が解雇されました。さらに、工場経営陣は、2月のストライキに参加した55名の労働者に対して、合法的なストライキにも関わらずサボタージュ、またはその教唆だと言いがかりをつけて、労働契約終了を確認する訴訟を提起しました。

私たち、カンボジア、アメリカ、ヨーロッパ、香港、日本の本公開書簡署名団体は、この労使紛争において貴社が行動を行わなかったことを確認しました。

事態が深刻化する中、私たちは貴社が、Zhong Yin 社の経営陣に対し、2015年9月に解雇された労働者を復職させるというカンボジア労働法の正確な解釈をしたカンボジア仲裁評議会の裁定(AC Award 306/15)に従うこと、カンボジア法によって保障された労働者のストライキ権を尊重して、評議会裁定を履行し、さらに2016年2月のストライキによって解雇された労働者も復職させることを求める、明確なメッセージを送るよう、数度にわたって要請してきました。

しかし、2015年9月の解雇事案については仲裁評議会の解釈を無視し、2016年2月の解雇事案についてZhong Yin社が起こした裁判の結果を待つという、正反対の対応をされました。裁判所は2016年7月、Zhong Yin社に対し有利な判決を出しました。しかし、カンボジアのCENTRAL(Center for Alliance of Labor & Human Rights)の弁護士らの法的分析は、裁判進行において重大な手続き上及び法的理由付け上の誤りがあったことが明らかになったほか、仲裁評議会の裁定がカンボジア労働法を正確に解釈していることを説明しています。労働組合は、決定に対し上訴しましたが、もし、判決が出るまでには数年がかかる見込みです。

Zhong Yin社の解雇は、労働者の結社の自由への干渉、労働組合への加入やその活動に対する制裁を禁止する貴社の行動規約(Code of Conduct)に違反しています。Zhong Yin社の2015年9月と2016年2月の行動は明確にこれに当たります。また、違反が判明した場合、合理的期間内に問題を解消するための是正措置に合意することが貴社には求められています。

一方、解雇された労働者の状況は、ますます喫緊の対応が必要となっています。彼らは、厳しい経済的困難に直面し、彼らの家族は、収入を失ったことによって多大な困難に苦しんでいます。労働者の一部は、家賃を払えなくなったため住む場所をなくし、多くの家族にとって、日々の最低限の食事でさえ、贅沢品とみなされています。

このような事態は継続されるべきではなく、それゆえに、私たちは、本日3つの大陸において、消費者や他の人々に対し、Zhong Yin社で何が起こっているのか、そして、Zhong Yin社に関係するブランドが、労働者の申し立てにどのように反応しているのかを知らせるためのキャンペーンを立ち上げました。私たちは、H&MやLindexをはじめとする他のブランドが、工場経営陣に対し、仲裁評議会の裁定を支持し、労働者を復帰させるように求めていることを知っています。私たちが知る限りでは、貴社は、いまだに工場経営陣に対し同様のメッセージを送っておらず、他のブランドと協同し、影響力を強めようとしていないたった1つのブランドです。しかし、私たちの求めるような対応は今からでも講じることができます。そして、こうした対応は、「企業が悪影響を防止し、緩和することができる影響力を有している場合、その影響力は行使されるべきである」と定める国連のビジネスと人権に関する指導原則に合致しています。

再度申し上げますが、仲裁評議会は尊重すべき中立的な機関であり、彼らの正しいカンボジア労働法の解釈は、貴社のサプライヤーであるZhong Yin社の違反を是正するために貴社が迅速な対応をするうえでの適切な指針となるものです。

従って、私たちは、貴社に対し、以下のことを要請します。
・ Zhonh Yin社の経営陣及びその親会社であるBeijing Joywin Fashion Textile Co., Ltd.の経営陣に対し、貴社が、仲裁評議会の裁定とそのカンボジア労働法の解釈を支持する点、そして、解雇された労働者は、彼らが強制的に仕事を追われた期間分の給与を即時に支払われた上で、工場に復帰させるべきである点を伝えること。
・ Zhong Yin経営陣に対し、貴社が、行動規約に基づいた是正措置を取る義務に従って、紛争解決のためにC.CAWDUとの交渉に参加する用意があることを明確にすること。
・ 親会社であるBeijing Joywin社に対し、今後、他の工場に発注するかどうかは、Zhong Yin 経営陣による違法な労働団結権侵害の問題が迅速に解決するかにかかっていることを表明すること。
・Zhong Yin社や親会社であるBeijing Joywin社に属する多くのサプライヤーに発注を行っている他のブランド、例えばH&MやLindexと共同することで、貴社の影響力を強化すること。

 

私たちは、貴社が、迅速かつ責任をもって行動し、貴社が持つ全ての影響力を行使し、労働者の基本的権利である結社の権利を保障することを要請します。

10月4日までに、長引くこの重大な懸念すべき状況を解決するために、どのような手段を講じる計画があるのか、ご回答ください。

 

署名者一同

Athit Kong
Vice President
Coalition of Cambodian Apparel Workers’ Democratic Union (C.CAWDU)

 

Yuen-ki Yeung
Campaign Officer
Hong Kong Confederation of Trade Union

 

Edgar Romney
Executive Secretary Treasurer
Workers United – SEIU

 

May Wong
Director
Globalization Monitor

 

Chen Pin Yu
Project Officer
Students and Scholars against Corporate Misbehaviour (SACOM)

 

Carin Leffler
Urgent Appeals Coordinator
Clean Clothes Campaign

 

Tola Moeun
Executive Director
Center for Alliance of Labor & Human Rights (CENTRAL)

 

Kazuko Ito
Secretary General
Human Rights Now

 

Kazuoki Ono
Chairperson
Consumers Union of Japan

 

Noel Colina
Coordinator Asia
International Union League for Brand Responsibility

 

Shoko Uchida/ Tadaaki Ooe
Co-president
Pacific Asia Resource Center (PARC)