2015年11月6日
ミャンマー総選挙:国際基準に基づいた、公正な選挙の実施を求める
1 来る11月8日にミャンマー総選挙が実施される。この選挙では、2016年から2021年の議員のうち75%が選出され、新しい議会のなかから来春大統領が選ばれることになる。
この選挙は、ミャンマーの長期にわたる軍事政権支配と内戦を終結させ、平和的な民主主義への移行を実現するために、歴史的かつ重要なステップである。
ヒューマンライツ・ナウはこの総選挙が国際基準に基づき、法の支配、透明性、公正性を確保した選挙となることを強く期待する。
2 同時に、ヒューマンライツ・ナウは、軍の優位が明記され、人権条項等に重大な問題のある2010年憲法が改正されないまま総選挙に至ったことに対し、強い遺憾の意を表明する。
そして、こうした状況のもと、実際に多くの人が選挙に参加できない事態は深刻である。
特に、ロヒンギャ族、インド・中国系住民は2010年、2012年の選挙では投票権が与えられていたにもかかわらず、今回の総選挙では政府によって投票権が否定された。
また、現地人権団体等によれば、現在も100名近い政治犯が収容されているという。[1]
さらに、完全な停戦が実現できない状況下で、シャン州の7地区、カレン州の102の村で安全面の理由などから選挙が実施されないことは特に憂慮される。
ミャンマー連邦選挙管理委員会はシャン州・カチン州を中心とし、これまで500以上の村で選挙を実施しないことを決定した。
3 参政権および投票の権利(21条)は世界人権宣言に保障された重要な基本的人権である。ミャンマー政府は、国民の参政権・投票の権利を確保するために、必要なすべての努力をすべきである。
軍の交戦行為によって国民の参政権・投票権が侵害されるような事態は看過できない。
ヒューマンライツ・ナウはミャンマー政府に対し、選挙期間までの間、停戦が実現していない地域も含め、国軍によるいかなる交戦行為・実力行使も行なわせないようにすることを強く要請する。
同時に、何人も暴力的にないし恣意的に、投票する権利を奪われてはならない。
ヒューマンライツ・ナウは、選挙管理委員会に対し、国民の参政権・投票の権利の保障と、国際水準に基づく公正・透明な選挙の実施を確保するよう要請する。
公正な選挙プロセスの確保のために、国際監視団、メディアの活動が十分に保障され、恣意的に制限されることがないよう、ミャンマー政権及び選挙管理委員会に対し、強く求める。
4 ヒューマンライツ・ナウは、投票結果が実際の投票を正しく反映したかたちで集計され、早期に公表されること、示された民意に基づき、速やかな民主的プロセスが実現されることを求める。
軍政が選挙結果認めないまま、選挙で勝利した政党を軍政が弾圧した暗黒の歴史が繰り返されることは決してあってはならない。
ヒューマンライツ・ナウは、選挙で示された民意を踏みにじる、不正行為、暴力行為を含むいかなる権力行使に対しても、強く反対する。
以上
[1] AAPP
and FPPS Call for the Release of All Political Prisoners before the Signing of
the National Ceasefire Agreement and the 2015 General Election,
Assistance Association for Political Prisoners (AAPP), December 29, 2015, http://aappb.org/2015/09/aapp-and-fpps-call-for-the-release-of-all-political-prisoners-before-the-signing-of-the-national-ceasefire-agreement-and-the-2015-general-election/