【イベント報告】14/12/8このままで良いのか ヘイト・スピーチ  明らかになった被害の実態~聴き取り調査から見えてきた真実~

このままで良いのか ヘイト・スピーチ 
明らかになった被害の実態~聴き取り調査から見えてきた真実~
2014年12月8日(月)、HRNでは、人権デーの一環としてヘイトスピーチに関する
シンポジウムを青山学院大学内にて行いました。当日は、会場に入りきらないほど
多くの参加者の皆さんとこの問題について考えることができた有意義なシンポジウムでした。
ヒューマンライツ・ナウでは、イベントに先立ち11月下旬に、
ヘイトスピーチ被害実態調査委報告書(http://hrn.or.jp/activity2/topic/post-306/)を
公表、その内容がTVや新聞各紙、インターネットでも大きく取り上げられ、
イベントと併せて社会的な反響を呼びました。
パネリスト 
○三輪章義 HRN・弁護士
○梁 英聖氏 在日コリアン青年連合(KEY)
○安田 浩一氏 ジャーナリスト
○師岡康子氏 弁護士
ヒューマンライツ・ナウのヘイトスピーチ調査報告
                
 シンポではまず、被害実態の聴き取りと調査報告書作成に携わっ
た三輪氏が、聴き取り調査から明らかになった被害実態を報告しま
した。「 デモを見て自分たちの存在が否定されたと思い、身体が震え
てドキドキした。」「 面と向かって憎悪感情を投げかけてくることに
対し恐怖を感じた。」「殺せ、殺せ、朝鮮人」と言われ、殺されるんじゃ
ないかという恐怖が襲ってきた。」「 自分でどうしようもできないこ
とを理由に、『死ね、殺せ』と言われることの不条理。」などの訴え、
ネット上のヘイトスピーチに晒され続けて精神的に不安定になって
しまった男性の証言、誰にも相談できないなか、自分の出自を公表
することを恐れている子どもの悩みなど、深刻な実例が次々と紹介
されました。
在日コリアン青年連合(KEY) の梁氏のお話
 梁氏は、KEY が行った在日コリアンに向けたアンケート調査の結
果をもとに、深刻なヘイトスピーチの実態を紹介されました。ある
在日コリアン青年が、迫害されるのを恐れて自らがネトウヨになっ
てヘイト発言を書き込むようになってしまった例などから、どれほ
どヘイトスピーチが在日コリアンの方々の心を追い詰めているかが
明らかになりました。梁氏は、最近のヘイトスピーチ以前から存在
する根強い差別にも注目してほしいと強調。そもそも日本には差別
の定義すらなく、在日コリアンへの差別が横行し放置されてきたこ
と、その行きつく先としてヘイトスピーチにまで至ったことという
危機感を訴えられました。そして、反差別規範がなく、差別が心の
問題・多様性の問題と捉えられている日本では、社会が差別を撤廃
しようとする力が弱いと指摘。「国が差別して、なぜ国民が差別して
いけないのか。」という梁さんの言葉は、日本政府の問題を問いかけ
るものでした。
安田浩一氏(ジャーナリスト)のお話    
 安田氏のお話しの前に、安田さんが編集されたヘイトスピーチの
ビデオが会場で流され、あまりに暴力的で恐怖心を与える憎悪表現
や行動に会場は凍り付きました。在日コリアンの方々が日々体験し
ている恐怖を、イベント参加者が疑似体験した瞬間でした。ビデオ
を見た後で安田氏は、ジャーナリストとして、何度も目撃してきた
ヘイトスピーチの経験を「だれも止めることができない、咎めるこ
とができずに、デモが行われている。どこに行っても、中学生、大
学生、主婦、普通の会社員がいる。普通の人が参加している」と強調、
その名宛人となった在日コリアンの方々がどんなに恐怖を感じてい
るかを話されました。
 安田氏は、「取材のために現場でヘイトスピーチ集団に見つかると、
『死ね、安田』なんて暴言を吐かれるのは日常だが、自分はなんとも
思わない」と話されました。
 一方、安田氏は、在日コリアンのライターの方とヘイトスピーチ
の取材に出た際、そのライターの方を名指しする誹謗中傷が連呼さ
れなかったことについて「よかったですね」と話しかけた際、「何が
良かったんですか? あの時『殺せ、死ね』と言われていたのは私自
身です、標的にされたのは私です」と言われたことを紹介。安田氏
は被害の深刻さを改めて深く認識し、それ以降、「言葉の暴力」とい
う言葉でヘイトスピーチを表現するのをやめたと話されました。「ヘ
イトスピーチは言葉の暴力ではなく、暴力そのものだ。ヘイトスピー
チは人の人格・人権を否定し続け、人を傷つけている」と訴えました。
師岡康子氏(弁護士)のお話  
 師岡氏は、日本が加盟している自由権規約や人種差別撤廃条約では
締約国はヘイトスピーチを違法とすべき義務があると指摘、日本が国
連の人権条約機関から、ヘイトスピーチを是正するための対策を講ず
るよう、勧告を受け続けていることを指摘しました。師岡氏は、ヘイ
トスピーチに関する国としての実態調査及び差別禁止法の制定の必要
性を強調し、また、差別的表現の規制に関しては、表現の自由を尊重
しつつ、差別的表現については限定的に規制をかけることは可能であ
る、と解説し、日本が国連勧告に基づいて、早急にヘイトスピーチ規
制の法整備をする必要性があると訴えました。
ヘイトスピーチ・キャンペーンで啓発を
 以上の報告を受けて、会場からの多くの質問が出され、議論は深め
られて行きました。最後に阿部浩己理事長が、HRN としても日本政
府に対しヘイトスピーチ規制と差別是正に向けた提言をしていること
を紹介、今後その実現に向けて取り組んでいくことを訴え、多くの人
に引き続き関心をもっていただくようお願いし、閉会しました。
 HRN では12 月13 日には関西でも同じテーマでシンポジウムを
開催。梁氏、三輪氏、そしてHRN の元百合子氏が登壇してさらに議
論を深め、メディア等でも大きく取り上げられました。
 HRN では、人権デーに向けて、このイベント・キャンペーン
と連
動して「#ゆるさないヘイトスピーチフォトアクションキャンペー
ン」も実施しました。このキャンペーンでは、ヘイトスピーチを許
さないというメッセージを書いたボードと共に写真を撮影し、ハッ
シュタグ「#ゆるさないヘイトスピーチ」をつけてキャンペーン参
加者自身のSNS やHRN ホームページに投稿するというものです。
さらに、このキャンペーンに共感してくださったジャーナリストの
志葉さんによる撮影がHRN 東京オフィスと獨協大学キャンパス内で
(大学ゼミの協力により)行われました。大学での撮影では、多くの
学生がヘイトスピーチについて関心を持って参加してくれ、キャン
ペーン全体では総勢120 名の写真を撮影することができました。集
まった写真はコラージュ画として、HRN ホームページなどに掲載し
ています。今後も、私たちの身近に今も続いている人権侵害・ヘイ
トスピーチの問題に関心を持ち、多くの人が是正のために力とアイ
ディアを出してくださることを期待しています。