国連科学委員会(UNSCEAR)議長、カール・マグナス ラーソン氏より、
10月24日送付した共同声明
「国連科学委員会に対する声明
~日本の市民社会は、国連科学委員会の福島報告の見直しを求める」
に対する回答がきましたので、原文および和訳(暫定)を、公開いたします。
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UNSCEARからヒューマンライツ・ナウ伊藤事務局長あての回答
この文書は、国連科学委員会から ヒューマンライツ・ナウ事務局長に宛てられた書簡の暫定の仮訳です。遂次の正確性は原文と照らし合わせていただくようお願いいたします。
題目:
10月24日付の伊藤事務局長からのメール
「日本の市民社会はUNSCEARの福島に関する報告書内容を見直すよう求めます」
親愛なる伊藤さま
UNSCEARの第60期国連総会への報告について、事務局にご連絡いただき、貴殿の懸念を提示していただき深く感謝いたします。
私は、市民社会の重要な活動を認識、称賛するとともに、多くの人々の権利にかかわる、また懸案する事項について、貴組織のような団体が市民社会の意識を啓発する役割を称えます。
この文書では、UNSCEARの役割や立場について、双方共通認識に近づくことにつながることをめざし、また貴組織に提示されたいくつかの問題に回答します。
まず、はじめに、わたしたちの使命を要約します。
UNSCEARはその名の通り、国連の科学委員会でありわたしたちは科学に焦点を当てます。UNSCEARはしかしながら、IAEAやWHOのような国際機関ではありません。27か国の加盟国で構成される「電離放射線による被ばく量や影響を国連総会に報告する義務がある」委員会で、国連総会に科学的な報告書を提出します。
UNSCEARが長年にわたり、科学的権威に基づき、独立した判断を行って任務を遂行してきたことは、評価を得ています。
UNSCEARの独立した役割の意義は、各国、機関、企業、ロビーからも左右されません。
UNSCEARは核に賛成でも反対の立場でもない、特殊な分野の専門家にすぎません。
ご存じのとおり、UNSCEARの事務局はUNEP(国連環境計画)が司っています。
委員会の80人以上の代表者が関わって、「2011東日本大震災後の原発事故に起因する放射線量や被ばくの影響」という報告書を作成しました。これらメンバーは全員、潜在的にでも利害関係の衝突がある立場にある場合はそのことを公式に宣言しています。
このことは、彼らが彼らの政府や所属機関の代表者としてではなく、その専門性に基づいて任務を遂行したことを意味します。
彼らのウイーンや日本で開かれた必要な会合への出席のための費用は、寄付や加盟国からの実費寄付で賄われました。
注:UNSCEAR自体は1957年と1948年に国連・IAEA・WHOと結んだ一般的な協定はありますが、IAEAやWHOと正式な協定はありません。
わたしは、2013年10月24日付のあなたのメールで示された懸念を精査いたしました。
(1)はじめに、私の理解では、あなたの提示したことの多くは、人権の大変重要な側面に関わるもの、また保護政策に関わるものです。
しかしながら、この委員会の使命と能力は科学的な評価に限定され、これを越えてこれ以外の問題について勧告する立場にありません。
したがって、保護のための基準や政策、さらにいえば人権の視点を反映するために、科学的評価を改訂することは適切ではありません。
国連の中では人権理事会がこの役割を担います。あなたもご承知の通り、国連の「達成可能な最高水準の健康を享受する権利」に関する特別報告者アナンド・グローバー氏によってこの問題はすでに取り上げられています。
このことは、報告書にかかわった科学者たちが人権につながる要素に無関心ととらえるべきではありません。むしろ彼らは国連機関のなかで人権に関する権限を付与されておらず、また、必要とされている能力もないため、議論に加わらないことが望ましいのです。
この点から、間もなく刊行される報告書や付属文書にこの委員会の役割の範囲は明確にされます。
(2)二つ目に、あなたの懸念の多くが「第60期国連総会に提出されたUNSCEARの報告書」に含まれる事項であります。これはこの総会向けの要約であり、詳細は記述してありません。
UNSCEARの科学的な付属文書「2011東日本大震災後の原発事故に起因する被ばく量や影響」には、あなたが、UNSCEARが第60期国連総会に提出した報告書等の認定事実等に対して指摘した多くの事柄に関係することが示されるでしょう。
これが発行され、広く一般に公になったとき、わたしは、結論の科学的背景を議論・説明する機会を持つことをいといません。
わたしは、この返信文書があなたの求める回答に及んでいないことを理解しています。
しかし、いまは詳細にわたっての説明は躊躇いたします。報告書が発行されるまでいましばらくお待ちいただくようお願いいたします。
カール・マグナス ラーソン
国連科学委員会議長
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