国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)は、2021年1月25日(月)、日本の教育機関における性差別・性暴力の現状・施策と、タイトル・ナインからの示唆に関する記者会見を開催いたしました。
会見は、タイトル・ナインの比較研究と分析に基づく報告書「日本の教育機関における男女平等の推進」の発表に先立ち行われました。
会見には、後藤弘子(ヒューマンライツ・ナウ副理事長・千葉大学大学院社会科学研究院教授)、三浦まり(ヒューマンライツ・ナウ理事、上智大学法学部教授)、田原淳子氏(国士館大学教授)、伊藤和子(ヒューマンライツ・ナウ事務局⻑、弁護士)、中山純子(弁護士)が出席しました。
後藤副理事長は、今回の報告書に基づき、1972年に制定されたタイトル・ナインは、予防教育の充実化と問題解決の指針の明確化に成功し、アメリカの教育機関における男女平等の礎を築いてきたと解説しました。タイトル・ナインの3つの柱、スポーツにおける男女平等、高等教育機会の男女平等、性暴力とセクシュアル・ハラスメント(SH)の防止・対策は、日本でも法律上の根拠を持って実現する課題だと報告書の意義を強調しました。
田原教授は、日本の学校の体育種目に男女間で偏りがあることや、ハイレベルな競技の場で女性選手へのSHが横行していることなどを指摘しました。また、タイトル・ナイン同様の法律導入を含む、女性が平等ににスポーツ分野に参画できる社会づくりの必要性を訴えました。
中山弁護士は、医学部入試における女性差別問題について取り上げ、いかなる理由も性差別を正当化することにはならないとし、各大学の弁明を批判しました。また,一連の問題の改善を大学に要求するに際し,文科省が法的根拠を持たないため,文科省の指導に大学が従わない場合にも法令違反にならず,私学助成金の削減に留まるしかない現状を指摘しました。
三浦理事は、日本の大学における現在のハラスメント防止規定が包括性に欠け、性暴力対策への取り組みが乏しいことを指摘し、法的基盤を整備する必要性を訴えました。また、施策として、性暴力およびSHに関わる大学の実態調査と情報開示の義務化や、タイトル・ナインと同様に大学内に専門機関を設置することなどを提案しました。
各取材記者からは、初等中等教育における性差別についてや、大学主体の取り組みの例についてなど、多くの質問とコメントが寄せられました。
報告書「日本の教育機関における男女平等の推進」はこちら
(https://hrn.or.jp/activity/19282/)
(文=國末りこ)