HRNは本日、調査報告書「猛暑のオリンピック建設現場」 をリリースしました。
2019 年8月、東京オリンピック・パラリンピック開催まで 1 年を切りました。
東京オリンピック・パラリンピックは、オリンピック憲章に基づき、持続可能なオリンピックを標榜しています。
この点で、オリンピック競技場建設に関わる建設労働者の人権、労働環境は、最も直接的にオリンピック・パラリンピック関連事業実施に関わる人権問題ですが、深刻に憂慮される状況が指摘されてきました。
建設が完成に向けて佳境に入る中、 労働者の労働環境は一層過酷なものとなるのではないか、との懸念から、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、 建設現場のモニタリングを開始しました。
ヒューマンライツ・ナウのモニタリングチームは、いくつかのオリンピックサイトを訪問し、状況を確認した結果、炎天下における作業が著しく過酷であること、労働者の人権上の配慮に欠ける深刻な懸念があること、それが死亡のリスクに直結するものであることを確認し、急遽本報告書をまとめることにしました。
厚生労働省の公式データでも2018年末までの間に、オリンピック建設関連で2名の労働者が死亡し、2019年8月にも炎天下に作業中の労働者が亡くなりました。ところが、組織委員会が労働環境改善に乗り出す動きはほとんど見られません。
報告書全文はこちらからお読みいただけます。
ヒューマンライツ・ナウは調査結果を踏まえ、組織委員会、東京都 、JSC に対し、以下の通り勧告します。
1. 国連ビジネスと人権に関する指導原則及び持続可能性に配慮した調達コードに基づきオリンピック各種建設現場における労働環境の改善に真摯に取り組むこと
2. オリンピック建設現場における労働者の労働安全、労働環境、その他人権保障に対し発注者として責任を負うことを明確にし、国内法 ILO 条約に基づき労働者保護のための人権ポリシーをし、これを労働者に周知すること
3. オリンピック各種建設現場における労働者の実態に関して独立した第三者による調査を実施し、問題点を把握し、改善のためのアクションプランを策定し、これを実施する体制を構築すること
4. 現場には一人親方いくつもの下請け構造の中で様々な零細業者とその労働者がいること、構造上労働者が労働条件に関して声を上げにくい状況に置かれていることに鑑み、全ての作業現場に統一した安全基準とルールを確立し、その実施を受注者に求めること
5. 2019年8月に作業中の死者が出たことを踏まえ、熱中症予防対策を中心に、労働環境改善に取り組み、各種建設現場統一の施策を策定、公表し、実施すること
6. 外国人労働者、外国人技能実習生は言語習慣の違いにより事故に遭いやすいこと、他業種においても過酷な労働環境の下で酷使されやすい脆弱な立場に置かれてきたことに留意し、特別な対応策を策定しそれを公表すること
7. 女性、高齢者など、体力的、健康上の理由により脆弱な立場に置かれた労働者に対する対応の施策を隔離すること
8. 上記施策を外国人労働者も含め、労働者に対し、周知、広報を徹底すること。また、施策の実施を確保するための日常的なモニタリング体制を構築すること
9. 持続可能に配慮したと調達コードに関連する通報フォームが一般の労働者から見て到底アクセス可能とは言えない現状を認識し、労働組合NGOなどによる代理通報も含め誰もが迅速に違反を通報し是正を求められるよう手続きを抜本的に改善すること
10. 調達コード違反に関する実効性ある救済メカニズムを確立し全ての労働者に周知徹底すること
11. BWI及び通報を実施した労働組合との間で速やかに話し合いの機会を持ち、改善に向けて定期的なダイアログ行うこと。合わせて関連するステークホルダー市民社会とのダイアログも実施すること。透明性確保のため一連のプロセスを公開すること