【イベント報告】6月8日(金) メディアで起き始めた#MeToo 声をあげられる社会をつくるために

HRNは、6月8日、「メディアで起き始めた#Me Too  声をあげられる社会をつくるために」を開催しました。昨年秋から始まった#MeToo運動。日本では、声をあげた人がバッシングされるという状況で、世界各地で起きているような盛り上がりはありませんでした。そのような中で今年4月に財務省元事務次官の女性記者へのセクハラ問題が発覚しました。その後の財務省の対応から、日本の政治·省庁がセクハラに寛容な社会であることを浮き彫りになりました。このセクハラ問題がきっかけとなり、沈黙していた女性記者たちが声を上げ始めました。

そこでHRNは、勇気を出して声をあげた人々を支え、社会を変えていくためにはどうすればいいのかを議論する機会を設けました。この間、#MeToo運動や外務省セクハラ問題について行動を起こしてきた小島慶子氏(エッセイスト・東京大学大学院情報学環客員研究員)、浜田敬子氏(BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長/AERA前編集長)、古田大輔氏(BuzzFeed Japan編集長)、伊藤詩織氏(ジャーナリスト、ドキュメンタリーフィルムメーカー)をお招きし、セクハラや性暴力をなくす社会をつくるためにできることをについて議論を行いました。
始めに申惠丰HRN理事長は「財務省のセクハラ問題や詩織さんの事件から、日本はセクハラに寛容で、性暴力被害者を守る法整備がないこと分かった」と今の日本社会のおかしさを指摘し、今回のイベントを行う意義について話しました。

小島慶子氏は、日本で#MeToo運動が盛り上がらないまま終わってしまうのはいけないと思い、思いを同じくするメディア関係者たちとともに小さな記事でも1分でもいいからと#MeToo運動を取り上げてもらえるように、それぞれの現場で闘っていたことを明かしました。メディア業界のセクハラに寛容な風土を変えるためには、女性の採用を増やすことだと言います。まずは、ハラスメントはいけないことだということを業界内に浸透させていく必要があります。また、メディアは情報の受け手がいなければ、成り立たないことを指摘し、私たちがメディアに対して「ハラスメントをするメディアから情報はいらない」などと声をあげ、メディアを育てていくことも大事だと訴えました。

浜田敬子氏は、自身も取材相手からセクハラを受けたことがあると語りました。ただ、それは30年以上も前の話で未だにセクハラが起きているとは思っていなかったそうです。メディアで働く女性たちに行った緊急アンケートでは、8割以上の人がセクハラにあったと回答し、それについて相談できる人がいないことや自分が仕事のできない人だと思って、何も言わずにいる人がほとんどだということが分かりました。浜田氏は、セクハラをなくしていくためには「誰もが発言しやすく働きやすいダイバーシティーにする必要がある」と言います。浜田氏は、男性が女性ばかりの環境では発言しにくかったという事例を紹介しました。

古田大輔氏は、テレビ朝日の記者会見の写真を見せながら、「会見をしているのも男性で、取材をしているのも男性」と言い、メディアに女性が少ないことを現したものであると指摘しました。また、メディアの幹部向けに倫理イベントを開催したときには100人近くの参加者のうち女性は2人しかいなかったと言います。その一方で海外のメディアでは、会社の事業報告で1番初めに話されることがダイバーシティーであり、BuzzFeedの報道部門は5 8%が女性であることを紹介しました。BuzzFeed Japanで採用に関わっている古田氏は、「普通に採用していたら、女性が少し多い数になった。他のメディアではなぜ男性が多くなるのか謎である」と疑問を投げかけました。

 

イベントでは3人以外にも声を上げた女性たちが発言を行いました。

「メディアで働く女性ネットワーク」を立ち上げた柏崎智子氏は、「メディア業界で女性は増えてきているがまだまだだ。記事を載せる決定権を持っているのは男性。性暴力の記事を載せたいと思っても、現場の私たちと決定権をもつ人と考えが違うので、扱いがよくならない」と現場で起きていることを話してくれました。

テレビ局関係者からの性暴力被害を告白し、性暴力被害撲滅のために活動している伊藤詩織氏は、「この1年で性暴力問題に対する状況は変わった。 #MeToo運動によって世界規模での連帯ができたことはとてもいいこと。その一方で、日本の行政のトップが『番記者を男にすればいい』と言ったことは世界とは真逆の動きだ」と喜びと悲しみの言葉を口にしました。

4月24日に新宿で「私は黙らない」というデモを開催した福田和香子氏は、そのデモで自身が体験したレイプ事件を告白しました。告白後、福田氏に届いたのは、応援する声自身の体験を告白する声、そして福田氏を批判する声でした。福田氏は「このような状況では被害者は布団にくるまっているしかない」「やれる人がやれるだけのことをしなければいけない」と考え、団体を立ち上げ、性暴力の被害者の場所を作ることにしたと言います。最後に福田氏は「周りに性暴力被害に遭った人がいたら、ただ一言『信じる』と伝えてあげて下さい」と語りました。

 

イベントでは、HRN理事の三浦まり氏が司会を務め、小島氏、浜田氏、古田氏のゲスト3人と伊藤詩織氏を交えたディスカッションが行われました。会場からの質問に答える形で行われたディスカッションは、小島氏の笑いを誘うトークに大いに盛り上がりました。詳しくは動画をアップしておりますので、こちらをご覧ください(1ヶ月一般公開)。