【声明】核兵器禁止条約の採択を歓迎し、国連全加盟国に参加を求める。

国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)は2017年6月15日から7月7日まで米国・ニューヨークで開催された、国連の核兵器を法的に禁止する条約の制定を目指す会議(UN Conference to Negotiate a Legally Binding Instrument to Prohibit Nuclear Weapons Leading to Their Elimination, PTNW)の第2回交渉会議の閉会にあわせて、声明文を公開しました。

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核兵器禁止条約の採択を歓迎し、国連全加盟国に参加を求める。

1 歴史的な条約採択を歓迎

7月7日、ニューヨーク国連本部で開催された核兵器禁止条約交渉会議で、核兵器禁止条約が採択されました。

被爆国・日本を本拠とする国際人権NGO団体ヒューマンライツ・ナウ(HRN)は、核兵器と人類は共存できないとの強い確信から、この歴史的な条約採択を心より歓迎し、核兵器の全面的な禁止に向けて国連のすべての加盟国が条約を批准することを呼びかけます。

2    核兵器使用による非人道的な結末

核兵器は人類史上最も無差別的で非人道的、そして破壊的な兵器であり、それを使用することによってあってはならない非人道的な結果を人類にもたらします。1945年に広島、長崎に投下された原子爆弾は、街を一瞬にして焼きつくし、十数万人の人々の命を奪い、その後も、幾多の被爆者が原爆症に苦しみました。被爆者たちは、ノーモア・ヒロシマ・ナガサキを掲げて核兵器の廃絶を一貫して求めてきました。現在さらに核兵器の開発は進み、それが使用されれば、いっそう壊滅的な結果をもたらすことは疑いようがありません。

条約が前文で「核兵器の使用がもたらしうる壊滅的な人道上の結末に深く憂慮し、いかなる状況下でも二度と核兵器が使用されないためには核兵器の完全な廃絶が唯一の選択肢である」との認識を表明していることはまさしく重要です。

核兵器の使用により必然的にもたらされるのは広範な地域の破壊であり、民間人に対する無差別的な大量殺戮であり、これが、国際人道法に違反する最も深刻な人権侵害にあたることは明らかです。

この点、条約前文が、武力による威嚇・武力の行使を禁止した国連憲章に言及したのに加え、核兵器の使用は武力紛争下で適用される国際法、特に国際人道法に違反すると明記したことは歴史的に見て極めて重要です。

3     条約による核の全面禁止

条約は1条で、核兵器・核爆発装置の使用および使用の威嚇を禁止するとともに、開発、実験、製造、生産、あるいは獲得、保有、貯蔵、移譲、これらの支援、奨励、勧誘等を広範囲に全面的に禁止し、さらに、領域・管轄下における核兵器やその他の核爆発装置の配備、導入、展開の容認も禁止する徹底した全面禁止を加盟国に求めています。条約4条は、核保有国による核兵器全廃に向けた工程表を明確に示す実効的な内容となっています。私たちは核兵器の全面禁止、廃絶への道筋を明確に示した、条約の内容を強く支持します。

4 日本・核保有国は、核兵器禁止条約に参加すべき。

極めて残念なことに、核保有国はいずれも交渉会議に参加せず、米国、イギリス、フランスは採択に当たり、「署名も批准もしない」旨声明を公表しました。

日本を含む核保有国の同盟国もこうした姿勢に追随し、大きな失望を呼んでいます。

しかし、核保有国がNPT体制下で核拡散を認めずに核軍縮義務を十分に果たさないまま核独占をする一方で、核兵器使用等の禁止に反対するのは、核兵器使用による破壊的な危機を回避しようとする人類の理性に背を向けるものです。

非核保有国はいつでも核による威嚇の対象になりかねない状況に置かれ続けることになり、こうした状況は核をめぐる世界秩序をより不安定化させ、核兵器の全面廃絶を遠ざけることになるでしょう。

全ての国連加盟は、国連憲章、生命に対する権利を保障した国際人権条約、文民を無差別的な危害や必要のない苦しみから守るための国際人道法上の義務に基づき、核兵器の禁止を進める責務を有します。国連が採択した、SDGsゴール16の達成は核兵器の廃絶なくして完全には実現できません。

ヒューマンライツ・ナウは核保有国、同盟国に対し、こうした国際法上の義務に基づき、条約参加を強く求めます。

とりわけ日本政府に対しては、唯一の被爆国として、核兵器使用による非人道的結果を深く経験した国として、被爆者の苦しみを受け止め、速やかに核兵器禁止条約に署名、批准し、核兵器禁止という人類の悲願を前に進める歴史的役割を果たすことを強く要請します。

私たちの地球環境と人類の生存を保持し、すべての人が恐怖から免れて平和のうちに生きる権利をもち、それらの権利を未来の世代に安全に承継させていくため、HRNは核保有国を含む全ての国に対して、核兵器禁止条約の批准と核兵器の廃絶への積極的な取り組みを求めます。