10月1日より9日まで、HRNスタッフ4名(伊藤和子、山本晋平、芝池俊輝、小豆澤史絵) が、今年7月に動き出したカンボジア特別法廷への要請およびNGOとの意見交換と、カンボジアの人権状況、とりわけ子ども・女性の人権状況に関する調査のため、HRNとして初のカンボジア訪問を行いました。
まず、訪問団は、特別法廷を訪問し、クメール・ルージュ政権下でのジェノサイド・人道に対する罪などの被害者が、特別法廷の手続に参加し、補償措置を求める権利を認められるべきだ、という要請を行いました。
この問題について、HRNは訪問に先立つ今年9月に、意見書「被害者に正義を」を発表、特別法廷に提出していました。特別法廷事務局を訪問したところ、特別法廷の内部規則制定委員会が、内部規則案の検討の真っ最中であり、特に被害者の参加・補償問題が焦点になっている、そして、HRNの提言は同委員会でも配付され、検討対象となっているとのことでした。訪問団は、再度カンボジアの平和構築と国民和解のプロセス全体から見た被害者参加と補償措置の重要性を指摘し、この点を規則に盛り込むことを重ねて要請しました。
その後訪問団は、アドホック、ドキュメンテーション・センター・フォー・カンボジア、オープン・ソサエティ・ジャスティス・イニシアティブ、カンボジアン・ディフェンダーズ・プロジェクトなど、NGOともこの問題に関する意見交換とHRNの立場に関する説明を行いました。
その後、訪問団は、司法省、女性省、ユニセフ、UNDP、IOMなどの国連機関、さらに子どもの権利について取り組む、国境なき子どもたち、LSCW、HCC、AFESHIP などのNGOを訪問し、カンボジアの子どもを蝕む人身売買の実情やその原因としての法規制の不備、司法関係者のトレーニング不足や腐敗などの説明を受けつつ、各団体の取組みの紹介を受けて意見交換をしました。
今後成立が予定されている人身売買を禁止する新法については、NGOから様々な期待や注文が寄せられましたが、同時に、HRNに対して、この新法が、本当にカンボジアにおける人身売買を根絶するためのツールとなるようにするため、法律の施行・普及・定着を手助けしてほしい(特に法曹関係者の教育や、法律のコンメンタール作成)との期待も寄せられました。
訪問団は、その後バッタンバン郊外において刑務所を視察しました。少年法がない下、少年は成人と一緒に、未決・既決の区別なく刑務所に収容され、その処遇が著しく劣悪である状況を視察しました。
さらに、児童虐待や児童労働など、カンボジアの子どもを取り巻く状況は課題山積であることが、各団体の訪問を通じて浮き彫りになってきました。こうした実態については、11月21日の報告会で皆さんに詳しくご報告したいと思います。
HRNは、カンボジア特別法廷に対するアドボカシー活動を今後も継続するとともに、今回の訪問でカンボジアの人々から出された要望 に基づき、子どもたちの困難な状況を改善するために、現地NGOと協力しながら活動をしていく予定です。
詳細は、
カンボジア調査報告part1~クメール・ルージュ法廷 【山本晋平】
カンボジア調査報告part2~トラフィッキング被害について【小豆沢史絵】
カンボジア調査報告part3~バンテアイミンチェイ刑務所訪問【芝池俊輝】
をそれぞれご覧ください。