国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)は、6月2日、「国連表現の自由特別報告者 デイビット・ケイ氏を迎えて–対話と相互理解を求めて–」を開催しました。告知から開催まで数日だったにもかかわらず、用意した座席が足りず、立ち見の方が多くいらっしゃる熱気のこもったイベントとなりました。
主催者からの開会挨拶後、ケイ氏のお話が始まりました。ケイ氏は、「国連の人権システムは人権理事会を軸に世界各国の人権問題を扱っている」「国連特別報告者は、人権理事会から任命され、自身は50人いる特別報告者の1人であり、日本に限らず世界各国の『表現の自由』に関する人権問題を扱っている」と日本で話題となっている国連特別報告者について説明。特別報告者の活動内容は、(1)政府と直接意見交換を行い、人権がどのように守られているか議論をする、(2)各国に赴いて現地調査を行う、(3)テーマ別調査内容をまとめ、人権理事会に報告することだと話します。
続いて日本の「表現の自由」について昨年行なった現地調査などを交えて話されました。日本では憲法21条によって「表現の自由」が守られているものの、民主主義や市民社会が機能していくためには、私たちが努力し守っていく必要があると述べました。ケイ氏は「日本での調査内容は報道の自由が保障・促進されているかであった」と振り返り、日本の報道の独立性に対して警鐘を鳴らしました。「日本のジャーナリストは会社への忠誠心はあるが、他のジャーナリストたちとの連帯意識はなくなってしまっている」「今回の調査によって分かったのは、ジャーナリストが政府からの圧力を感じていることだ」とケイ氏は指摘し、政府から独立した報道規制機関の必要性を訴えました。
その後の質疑応答では時間内では当てきれないほど多くの方の手が挙がりました。特定秘密保護法について尋ねられたケイ氏は「秘密に規定された情報を公開すると罰則規定があることに懸念を表明していた」と言います。この規定により内部告発が難しくなり、原発事故のような凄惨な事件を報道するときに報道機関が萎縮してしまう可能性を指摘し、民主主義社会の根幹である情報へのアクセス権の重要性について語りました。
続いて、高市早苗総務大臣が「我々の立場を反映していない報告書が発表されたことは、大変残念である」などと発言したことに対する感想を求められると、ケイ氏は「報告書は1950年からある放送法に対して出したもの」「民主主義国家であれば、報道の独立性を侵害する放送法をどうにかするべきではないか」と返しました。
最後にケイ氏は「私が望むのは、今日のイベントや報告書について皆さん自身のコミュニティに持ち帰ることだ」「共通の価値観を持って民主主義を築いていきましょう」と呼びかけました。
今回のイベントでは忙しい中、足を運んで下さったにも関わらず、会場の入場手続きの関係で参加することができなかった方を多く出してしまい、大変申し訳ありませんでした。6月中に再度、ケイ氏をスカイプでゲストに迎えたイベントを企画したいと思っております。決まり次第、ホームページ等でご報告させて頂きます。
HRNは今後も国内外の人権問題に取り組み、人権が大切にされる社会に向けて問題提起を行なっていきますので、ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
当日の動画はコチラからご覧ください。
表現の自由特別報告者の報告書および日本政府の回答はコチラからご覧ください(原文掲載)。