【声明】北朝鮮 国連人権調査委員会の報告書および勧告を受け、 勧告の実施に向けた行動を国際社会に要請する

北朝鮮 国連人権調査委員会の報告書および勧告を受け、 勧告の実施に向けた行動を国際社会に要請する

20140228発表 北朝鮮COI報告書に関する声明.pdf

12014217日、Michael
Kirby
氏を団長とする国連人権調査委員会(Commission
of Inquiry)
が、北朝鮮での人権侵害の実態について、調査報告書を発表した[1]。調査委員会は報告書で、北朝鮮政府や最高幹部による組織的、広汎かつ重大な人権侵害が長期にわたり行われており、現在も進行中だと指摘。そしてその多くが、政府の政策による「人道に対する罪」に該当する深刻な人権侵害だと結論づけた。報告書は、(1)食糧への権利の侵害、(2)収容所での人権侵害、(3)拷問および非人道的な取扱い、(4)恣意的拘束、(5)差別、(6)表現の自由の侵害、(7)生存権の侵害、(8)移動の自由の侵害、(9)他国の人々の拉致を含む強制失踪、という9項目に及ぶ人権侵害についての調査結果を含んでいる。

同調査委員会は、2013321日の人権理事会決議で設置が採択され[2]、人権侵害に対する北朝鮮政府のアカウンタビリティを確保するため、北朝鮮国内の人権侵害を調査することを任務として活動してきた。

 

2.報告書の第4章は、「人道に対する罪」について記述され、その中で調査委員会は、現在も続く数多くの人権侵害に加えて、1990年代の大規模な飢饉や韓国人や日本人の拉致も人道に対する罪に該当すると指摘した。政治犯強制収容所に関しては、サテライト写真等を公開し、故意に引き起こされた飢餓、強制労働、処刑、拷問、レイプ、強制中絶や嬰児殺しが過去50年以上に渡り繰り返され、言語に絶する残虐行為が多くの政治犯として収容された人々の命を奪ったと指摘。収容所には現在も812万人が収容されていると発表した。同委員会に提出された元囚人の書いた絵も公開され、収容所内の非人道的な扱いが表現されている[3]

 

同調査委員会は、北朝鮮国内での調査が実施不可能であることを踏まえ、国外での公聴会、被害者の方々へのインタビューを通して調査を行った。公聴会は、ソウル、東京、ロンドン、ワシントンで開催され、その内容すべてがビデオで公開されている[4]80人以上の被害者・証人が公の場で証言し、240人以上の被害者が安全確保の見地から、身元未公開で調査委員会に対し証言したという。証言者のなかには、北朝鮮の元幹部もしくは最近脱北してきた人々が含まれているとされる。

さらに調査委員会は、サテライト写真、北朝鮮より持ち出された内部文書、ビデオ映像、写真やその他の文書を含め、80の情報源から情報提供を受け、そのすべてにおいて、信憑性を審査し、信頼に値すると判断されたものだけを報告書に反映させているとする[5]調査委員会は、こうして収集された証拠は国内および国際的司法手続において犯罪捜査を開始するに足りる十分なものであると主張している。

 

3   調査委員会自らが指摘するとおり、調査委員会は「人道に対する罪」を決定する権限を有する機関ではなく、人道に対する罪を裏付ける合理的な根拠(Reasonable Ground)を提示したものである。

東京を本拠とする国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、この点を留意しつつも、調査委員会が、広範な情報源から証拠を収集し、慎重に信憑性を吟味した証拠に基づいて事実認定にあたった手法が正当なものと考える。そして、国際社会は、この調査委員会の出した極めて深刻な人権状況に関する結論に対し、真摯に向き合い、人権侵害改善とアカウンタビリティの確保に向けた新たなステップに進む必要がある。

 

4  
報告書に示された最も注目すべき勧告は、以下のとおりである。

国連安保理に対し、

1)北朝鮮の一連の人権問題につき、国際刑事裁判所(ICC)に付託すること

2)人道に対する罪にもっとも責任があると思われる者に対し、制裁措置(targeted sanctions)をとること

国連人権高等弁務官は、人権理事会と総会からの支援を受けながら、北朝鮮のアカウンタビリティを確保する仕組みを確立すること。

 

重大な人権侵害から人々を保護するために、不処罰の克服、人権侵害を調査し、責任者を特定し、訴追・処罰し、被害者に対する補償を行うことは、人権保障を目的に掲げる国連にとって最重要の課題というべきである。

 

ヒューマンライツ・ナウ(HRN)は、この調査報告書の勧告、特にICC付託により、国際刑事司法手続によって捜査を開始すべきとする勧告を支持するとともに、国連安保理、総会、人権理事会による誠実な勧告の実施を要請する。

人権理事会、国連総会、国連安全保障理事会に対しては、今回の報告書が行った勧告を最大限に尊重し、北朝鮮政府の人権侵害に対するアカウンタビリティを確保し、人権侵害状況を改善させるための行動をとることを要請する。

今年3月、国連人権理事会では、今回の報告書に基づき北朝鮮の人権問題に関する討議が行われる。ヒューマンライツ・ナウは、すべての理事国に対し、北朝鮮の人権状況に関するアカウンタビリティ確保を前進させるため、ICC付託を含む報告書の勧告を支持する決議を採択するよう要請する。

                                      以上



[1] A/HRC/25/CRP.1

[2]A/HRC/RES/22/13

[3]http://www.ohchr.org/Documents/HRBodies/HRCouncil/CoIDPRK/Report/drawings-by-former-prisoner/coi-dprk-drawings-by-former-prisoner-kim-kwang-il.pdf

[4] http://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/CoIDPRK/Pages/PublicHearings.aspx

[5]
http://www.ohchr.org/Documents/HRBodies/HRCouncil/CoIDPRK/Report/coi-dprk-q-and-a.pdf