【世界の人権・アフガニスタン】2007/11/20 国連人権担当トップが、一般市民の犠牲を防ぐための保護対策を求める 

(2007年11月20日) 

 

アフガニスタンにおける国際軍事活動による一般市民の犠牲者数が、今年「ただならぬ」水準に達したことを受けて、国連人権高等弁務官は同日、無辜の人々の死を避けるための対策を立てるように、強く求めた。

 カブールでの記者会見で、ルイーズ・アルブール氏は、今回のアフガニスタン訪問前から、反政府勢力の活動と国際軍事活動の両方が原因となって犠牲者が出ており、その中で一般市民の比率が高いことを憂慮していたと、述べた。

 特に、国連派遣の国際治安支援部隊(ISAF)を含む国際軍事部隊が行った活動によって生じた一般市民の死者数が、ただならぬ水準に達していると同氏は伝えた。

 「これは国際法違反であるばかりでなく、同国政府と諸外国の軍隊駐留に対する、アフガニスタン社会の支持を損ない、またアフガニスタンへの継続的関与に向けて、協力国における世論の支持を損なうものである。」と高等弁務官は強調した。

 この点について、ISAFの指揮官が、この懸念についての「冷静な認識」と、この問題を建設的な方法で解決しようとする意志を持ち続けてきたことは心強い、とアルブール氏は述べた。

 「これは、被害を防ぐ措置および一般市民を守る保護の手段を確保することが、軍事行動決定における最重要課題の一つであるということだろう。さらに、一般市民の犠牲者が出た場合、その救済を確実に行うよう、ISAFはこれまで以上に家族に適切に対応し連絡も取りやすいようにすべきである。」と同氏は述べ、この救済には犠牲者の家族への補償も含まれうると付け加えた。

 「人権とは治安が確保された後はじめて享受される贅沢であると、考えている人があるようだ。しかし、そうではなくて、この国の不安定な状況の主な原因こそ、人権侵害、そして過去の人権侵害を効果的に解決していないことに由来しているのである。」同氏はこう述べ、強くこの問題に対する注意を喚起した。

 アルブール氏は、2005年にも同国を訪問しているが、『平和・和解・正義の行動計画』のもとでの約束の実施にその後の進展が見られないことに、失望を表明した。

 「残念なことに、移行期司法(トランジショナル・ジャスティス)の課題は、多くの人々の意識の中で、単に、過去の犯罪に責任があるとされている者、その何人かは現在も高い地位を維持しているが、彼らの起訴だけに矮小化されてしまっているのだ。しかし、トランジショナル・ジャスティスとは多面的なプロセスであり、犯罪の実行者を処罰すると同時に、真実、補償、回復(リハビリテーション)など、犠牲者のさまざまなニーズに焦点をおくものなのである。」と高等弁務官は述べた。

 同氏は、同国政府および同国に対する国際協力のパートナーらに、トランジショナル・ジャスティスの課題への取組みを進めることに再び力を傾けるよう求めつつ、「法の支配を構築し、司法部門を改革するための努力は、高い地位にある者たちの不処罰の問題が解決されない限り、成功しないであろう。」と強調した。

 深まる不安感や、犯罪に人々の意識がとらわれていることが、先頃死刑が再開されたように、アフガニスタンが後退の方向へと歩む原因になっていると、アルブール氏は付け加えた。そして、アフガニスタンは『市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)』の締約国として、それぞれの裁判で最高水準の適正手続が尊重されない限り、死刑を適用しない義務を負っている、と指摘した。

 さらに高等弁務官は、女性の権利向上が行き詰まっているその度合いに衝撃を受け、議会の議席の28%が女性に占められているのに対し、政府の各部門、特に司法府でもっとも顕著に、女性が「あまりに不在で驚くほどである。」と述べた。

“Top UN rights official urges safeguards to avoid civilian deaths in Afghanistan”
http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=24737&Cr=afghan&Cr1

 

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