【報告・要請】カンボジア労働組合C.CAWDU:ファーストリテイリング社に対し、同社下請け工場の労働組合員に対する差別行為への介入を要請

ヒューマンライツ・ナウは、2015年1月に「ユニクロ中国委託先工場の過酷労働に関する調査報告書」を公表後、ファーストリテイリング社に対しサプライヤーにおける労働者の人権保護を求めてきました。

2015年2月にカンボジアで行った縫製工場の労働環境調査においても、ファーストリテイリング社の3つの下請け工場において、24 時間労働を含む過酷な長時間労働、残業代の未払い、労働者の団結権の侵害、産休を含む女性労働者の保護の欠如等などの労働者の深刻な権利侵害が明らかになったため、同年4月に声明「カンボジア・縫製産業で違法な搾取労働が横行 政府および国際ブランドの責任が問われている」を公表し、改善措置を求めてきました。

この度、カンボジアでヒューマンライツ・ナウが調査をした3つの下請け工場の1つであるZhong Yin (Cambodia) B Textile Co.,Ltd(以下、Zhong YinB工場)において、深刻な労働者の権利侵害が起きているとの情報を、カンボジアの労働環境問題に取り組む労働組合Coalition of Cambodia Apparel Worker Democratic Union (C.CAWDU)から入手しました。

C.CAWDU によれば、Zhong Yin B工場では、労働組合員に対する嫌がらせが続き、2015 年9月23日、3名の労働組合のリーダーと47名のC.CAWDUメンバーが解雇されました。不当に解雇された労働者は、復職と解雇された期間の給与の支払いを求めて、同工場相手に仲裁を申し立て、これを受け、仲裁評議会(Arbitrational Council)は、2015 年12月30日、労働者の申立を認める仲裁判断を下し、同工場に対して、労働者の復職と解雇期間の給与支払いを命じました。

ところが、2016年1月18日、解雇された労働者が仲裁判断に基づいて、Zhong YinB工場に出社したところ、警備員らが工場内への立ち入りを拒否。経営陣も、労働者の問い合わせに対し、工場への立ち入りも、仕事への復帰もできないと回答したとのことです。
Zhong Yin B工場については、ヒューマンライツ・ナウの今年4月の声明公表後、労働者の権利侵害に関する改善が労使で合意された経緯がありますが、再びこうした事態が起きたのは極めて遺憾です。

C.CAWDUは、Zhong YinB工場による仲裁評議会の判断の無視、および労働組合員に対する差別行為は、労働組合の自由を保障する国際法に反するだけでなく、ファーストリテイリング社の行動指針に反するとしファーストリテイリング社に対し、Zhong YinB工場が12月30日付けの仲裁判断に従い、不当に解雇された労働者を復職させるよう要請することを書簡にて求めています。C.CAWDUのファーストリテイリング社に対する書簡の全文はこちらからご覧いただけます。

 

ヒューマンライツ・ナウはC.CAWDUの要請を受け、ファーストリテイリング社への書簡を公表することになりました。
サプライチェーンにおける人権配慮、労働者の人権配慮は重要な課題です。
ヒューマンライツ・ナウは、ファーストリテイリング社をはじめ、同工場に生産を委託している国際ブランドに対し、国連ビジネスと人権指導原則に基づき、事実関係を確認し、労働者からも意見を聞き、事態の改善のために役割を果たすよう要請します。

 

C.CAWDUのファーストリテイリング社に対する書簡 [PDF]

Zhong YinB工場労働者解雇について [PDF]