【イベント報告】記者会見「『AV出演被害防止・救済法』成立・施行に向けて」

国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは6月15日(水)に記者会見「『AV出演被害防止・救済法』成立・施行に向けて」を行いました。
ヒューマンライツ・ナウの伊藤和子副理事長、ぱっぷすの金尻カズナ氏(代読)、 内田絵梨氏、岡恵氏、Springの納田さおり氏、アクティビストのくるみんアロマ氏が登壇し、そのほか立法にご尽力いただいた議員の方々にもお越しいただきました。

 

伊藤和子副理事長は、被害にあった方が弁護士に相談しても救済する手立てが何もなかったこれまでの状況を考えると、被害者を救う有効なツールができたことは大変貴重な一歩であると述べました。さらに、今後この法律で被害者を救うために、法律の周知、国会や裁判所による取り組みが必要であると訴えました。

金尻カズナ氏は、代読で、法律成立までの流れと、この法律の有効性と強力さを解説し、これまで撮影と称して行われてきた人権侵害も規制の対象になることを述べました。

内田絵梨氏は、デジタル性暴力は現在・過去・未来の全てを奪う暴力でありながら、これまでは本人やその代理人が謝り続けるしか手立てがなかったと訴えました。この法律によって出演者等が初めてその被害を止めることができるようになったと感慨を示しました。

くるみんアロマ氏は、ご自身の経験に基づいて、実際にAVの撮影現場で出演者が断ることができるのかという懸念を示しつつ、罰則がある法律が成立したことは一つの大きな前進であったと評価し、歓迎の意を示しました。

納田さおり氏は、コロナ禍で深刻化する女性のAV出演被害への有効な法律ができたことへの喜びを述べました。また、立法の趣旨でもある貧困や性差別性暴力の問題の根本的な解決の必要性を訴えました。

宮崎正久議員は、与野党を超えた取り組みによって、これほど短期間で、罰則まで設けた実行力のある法律を整備できたことへの感慨と、活動をしている方々への敬意と感謝を示しました。

塩村あやか議員は被害者救済の強い想いを述べ、業界を潰すのではなく適正化するための法律であるということを訴えました。

やまのい和則議員は、被害者にとって命綱になり得るので、この法律を用いれば「契約販売しても取り消すことができる」ということを知って頂きたい、と強く訴えました。

佐々木さやか議員は、1人でも多くの苦しんでいる方々が被害から回復できるようにこの法律が使われることを願っていると述べました。

 

さらに、法案成立に寄せて、アーティストで元女優の大塚咲氏、タレント実業家で元AV女優の小室友里氏から頂いたメッセージも代読されました。

・大塚咲氏
「この法案により出演者を守ることが出来ると感じます。しかし、18歳という年齢は適正ではない。出演者の立場を守り、被害者を生まない業界であって欲しいと強く願っています。」

・小室友里氏

「法案成立に添えて

このたびの法案成立につき、多くの方々のご尽力がありましたこと、元AV女優の1人として感謝申し上げます。

20数年間、少し離れたところからAV業界を静観してきましたが、内包する人権問題に対し、自分ごとにはならないAV業界の他力本願的体質を抜本的に改革してくれる法案だと思います。

20数年前のAV女優には、性行為をする、しないの選択権が与えられていました。それがモザイク技術の発達と顧客への過剰サービスにより『性行為はして当たり前』のものとなりました。これは女性のへの性的搾取、そしてAV女優が業界を離れた後も、自尊心を持って生き続ける権利の搾取だと考えます。

私はこの度の法案で、意に反する性行為はしてはならない、騙したりしてはいけないと明記されたことがとても嬉しかったです。

契約から撮影、発売までかなりを時間を要すること、発売後、当面2年間の無条件回収など、AVメーカーにとっては死活問題以上の条件を突きつけられているものだとも思います。

しかし、前出の通り、少し離れたところからAV業界を静観してきた元AV女優としては、ここまで追い込まれないと自分ごとにできなかった悪しき体質こそが、今回の法案を『作らせてしまった』原因でもあるとみています。

それでも海外を見ればAVは『裏クールジャパン』などと称されることもあり、多くのファンがいます。この場でこのようなことをお伝えすることが正しいかわかりませんが、AVはすでに日本の一文化として認識されていることはれっきとした事実なのです。

文化であるならば、誰かが苦しんだり、泣いたり、人生を脅かされるものであってはならないと強く思うのです。

今回の法案は『被害者救済』のための法案ですから、今、ご出演なさっている方々へのものではないとはいえ、いわゆる当事者意識を持つ現役AV出演者様にとっては、非常に受け入れ難いものとも思います。

将来の課題となった公表期間、本番行為の問題など、まるで自分達ばかりが責め立てられているようにお感じのことでしょう。

今回の法案で『私たちは出演したくてやっている、プライドがある』と奮起されるのであれば、今回の法案を以て『日本の文化として、正しいルール(法)のもと、誰かが悲しむことなく、出演している間も、出演しなくなった後も笑って生きていける』AVとは、AV出演のあり方とはなにか。考えていただきたいと思います。

不平でも不満でも、言いたいこと伝えたいことがあれば、インターネットの中だけで発信するのではなく、然るべき場所で、然るべき人たちに向け、ご自身の声で、伝わるように発信していく。

つまり、『自分ごと』にする。それが、これまで無法地帯だったAV業界に携わる人間の全員がこれから持つべき、プライドと呼べるものではないでしょうか。

『そんなことはできない』とおっしゃる方もいるでしょう。

諦めるなら、AVへの関わり方がそれまでだったということです。

できないことをできるように考え、変化させていくのが、事業であり、ビジネスです。

自分たちの世界(ビジネス)を脅かされると感じるなら、明るい法のもと、AVに出演する側と、それを見る側の人たちと、これから一緒に考え、変化させ、誰もが『これならAVも悪くないよね』と言ってもらえるAV業界を目指していただきたいと思います。

3月に議員の皆様の前で『未成年者取消権消失による真の被害は、20年後に家族や子供ができてから、その重大さを知る』ことをお伝えさせていただき、私のような元AV女優というバックボーンを持つ人間でも、きちんと向き合い、真摯に耳を傾けてくださる方がいるんだと、心から感銘を覚えました。

立憲民主党の塩村あやか議員を始め、ご尽力いたただきました議員のみなさま、伊藤和子弁護士、ぱっぷすさま、他、関わっていただいたすべての皆様に、元AV女優の1人として感謝申し上げます。

とはいえ、問題は残っています。過去に契約書がないまま、二次利用三次利用されているAVに関する問題は、まさに私も当事者です。

1981年にAVが初めて作られて以後、今日まで引きずってきた問題にも目を向け、これからも取り組んでいただければ幸いです。

ご静聴ありがとうございました。」

 

■以下のURLから詳しい記者会見の模様を動画でご覧になれます。

 

■また、本記者会見の様子は、下記メディアに掲載して頂きました。
以下のリンクより、記事をご覧いただけます。

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【メディア名】

朝日新聞デジタル

【記事名】

AV出演救済法成立、「議論尽くされず」の声も 残る課題は…

【リンク】

https://www.asahi.com/articles/ASQ6H6586Q6FOXIE013.html

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【メディア名】

毎日新聞

【記事名】

「地獄からの貴重な一歩」AV救済法 被害者ら会見 断れるか懸念も

【リンク】

https://mainichi.jp/articles/20220615/k00/00m/040/260000c

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【メディア名】

日刊スポーツ

【記事名】

AV出演被害救済に向けた新法が成立「出演拒否や相談への勇気につながる」と歓迎

【リンク】

https://www.nikkansports.com/general/news/202206150000928.html?cx_testId=162&cx_testVariant=cx_undefined&cx_artPos=1#cxrecs_s

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【メディア名】

弁護士ドットコム

【記事名】

AV被害防止法が成立、支援団体「貴重な一歩となった」 元女優・小室友里さんも評価

【リンク】

https://www.bengo4.com/c_23/n_14592/

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