【イベント報告】2020年1月22日院内集会「スウェーデンに学ぶ被害者重視の刑法改正」・公開セミナー「Yes means yes!スウェーデンの性行為同意法がレイプの定義を変える」

2020年1月22日、ヒューマンライツ・ナウはスウェーデン大使館等の協力のもと、以下2つのイベントを開催いたしました。

◆院内集会「スウェーデンに学ぶ被害者重視の刑法改正」

◆公開セミナー「Yes means yes!スウェーデンの性行為同意法がレイプの定義を変える」

以下、各イベントの報告です。


1月22日、HRNは性暴力の被害・当事者支援団体「一般社団法人Spring」との共催で衆議院議員会館にて院内集会を開催いたしました。

 

2018年の7月に性犯罪に関する法律を改正し、同意を得ていない性行為を罰する規定を新設したスウェーデンの司法当局者の二人、ヴィヴェカ・ロング氏(スウェーデン司法省上級顧問)とヘドヴィク・トロスト氏(スウェーデン検視庁上級法務担当)が来日しました。

スウェーデンの改正法では、レイプ罪を「自発的に参加していない者と性交し、または性交と同等と認められる性的行為を行った者は、レイプ罪となる」と規定しています。つまり、積極的な同意が示されていない性行為はすべてレイプだと定義されています。

ヒューマンライツ・ナウは、「刑法改正市民プロジェクト」に参加し、スウェーデンと同様に同意のない性交を処罰するよう求めています。

スウェーデンでは被害者の声を聞いて法に反映しているのに対し、日本の刑法では、相手が同意していなかったということだけでなく、加害者が暴行や脅迫を用いたことが立証される必要があります。そのため、性暴力の被害者団体などは性的暴行をめぐる裁判で被害の実態が踏まえられず、無罪が言い渡されるケースが存在するなどとして刑法の見直しを求めています。琉球大学教授の矢野恵美氏は、日本は誰のために改正しているのかという視点が抜け落ちていると指摘し、「日本の法改正も(スウェーデンのように)被害者のためであるべきだ」と強調しました。そして、日本社会の中で議論を起こしていくことが今後重要であると付け足しました。

一般社団法人Springは、スウェーデン改正後でも完全ではないが、日本の刑法がスウェーデンにはほど遠いと指摘し、刑法改正の実現を促しました。同意について、年齢や発達レベルを考慮し、同意することもしないことも尊重されること、そして自発的に決定することが大事だと主張しました。

続いてヒューマンライツ・ナウ(HRN)事務局長の伊藤和子氏は、性犯罪規定の改正に関して地位関係性や低すぎる性交同意年齢などスウェーデンの内容に至っておらず、まだまだ日本では積み残された課題があるといいます。日本の刑法では、「むりやり性行為をされた」というだけでは犯罪とみなされません。「抗拒不能」という曖昧なものではなく、性犯罪として認めることが必要だと強調しました。世界水準と同じ保護を日本の女性たちにも与えられるように、時間をかけずに法改正を求めていると語りました。

スウェーデンの司法当局者は、「私たちの法律が日本の法律の見直しの際に参考になればと思います」と話しました。「スウェーデンも20年近くに渡って、カナダとスコットランドの法律を参考にしながら、やっと今回の性的完全性の尊重と保証する法律ができました。私たちができれば日本にもできる」と日本の性犯罪規定改正の実現を応援しました。

HRNはスウェーデン大使館と共催し、上智大学にて、公開セミナー「Yes means yes!スウェーデンの性行為同意法がレイプの定義を変える」を開催いたしました。

2018年の刑法改正に携わったヴィヴェカ・ロング氏(スウェーデン司法省上級顧問)とヘドヴィク・トロスト氏(スウェーデン検視庁上級法務担当)の2人が招かれ、約150人が参加しました。

登壇者は以下の通りです。

後藤弘子(千葉大学法科大学院、ヒューマンライツ・ナウ理事)

三浦まり(上智大学、ヒューマンライツ・ナウ理事)

スウェーデン大使

ヴィヴェカ・ロング氏(スエーデン司法省上級顧問)

ヘドヴィク・トロスト氏(スェーデン検視庁上級法務担当)

大学生団体 Speak Up Sophia(上智大学)

大学生団体 Tottoko Gender Movement(東京大学)

伊藤和子(ヒューマンライツ・ナウ事務局長、弁護士)

※スウェーデンからのゲスト2名の発言に関して、前述の院内と同様の内容部分については省いております。

上記の院内集会と同様の内容で、自発的参加の定義の重要性、女性も許可を出していく必要性について語りました。

東京大学から性差別や性暴力をなくし、ジェンダー平等キャンパスを実現すること目標に活動しているサークルTottoko Gender Movementは、東京大学の今後の課題やキャンパスハラスメントなど性差別問題に関することについて話しました。東京大学では、ジェンダー比率が偏っていることを指摘し、大学が主体となって実態を調査するべきだと語りました。もう一つの問題は、キャンパスハラスメント防止委員会の不透明さだと

上智大学の学生団体Speak Up Sophia は教育の重要性、性的同意について発信するメディアの協力が必要だと述べました。

 

HRNの伊藤氏は、法改正は良い方向に進んだが、日本では未だに被害者が責められてしまう現状であると語りました。スウェーデンができるのなら、日本にも導入しないということはないと強調し、2020年の国会に提出して法改正したいと伝えました。