【イベント報告】3/8(火)国際重大犯罪追及の現場からーICC,カンボジア、スリランカ-野口 元郎氏

3月8日、ヒューマンライツ・ナウは、青山学院大学人権研究会と共催で、元カンボジア特別法廷国際判事で、現在、国際刑事裁判所(ICC)・被害者信託基金(TFV)理事長、最高検察庁検事である野口元郎氏をスピーカーにお呼びし、実際の国際司法の現場での経験を元に、国際重大犯罪の追及について考えるセミナーを開催しました。

以下、当日参加したインターンによる報告を紹介します。

野口氏は、1970年後半のクメール・ルージュ政権期に起こった大規模な重大人権侵害を受けてカンボジア政府と国連との合意に基づいて設置されたカンボジア特別法廷で国際判事を務められました。同法廷は被害者参加制度を取り入れたことで評価される一方、裁判のプロセスが長引き判決が出る前に被害者が亡くなってしまったり、財源不足から、被害者に適切な賠償ができないなどの課題も残された、と指摘されました。初めての常設の国際裁判所であるICCについては、裁判の長期化、訴追対象がアフリカ諸国に偏っているとの批判や、非加盟国での犯罪に対する訴追が難しいなどの課題を指摘。他方で、ICCは国際裁判所で初めて被害者信託基金を設置し、被害者への賠償、支援に力を入れていますが、確定判決が出た事件がまだわずかであることや予算不足などによりまだ十分な力は発揮できていません。「なぜパレスチナ問題や米国の対テロ戦争についてICCが取り組まないのか」との会場からの問いに、野口氏は、非加盟国に対する管轄権行使の可否の問題や、国連安保理がこのような事案をICCに付託しないことなどを挙げられました。紛争下で発生する重大な人権侵害を処罰することを通じて戦争被害を世界から根絶していくというICCの重要な使命を達成するためにICCへの加盟国・国際協力のさらなる協力の必要性が確認されました。HRNは今後も国際重大犯罪の責任追及、被害者補償のための実効的な制度の確立を実現するため、政策提言・意識喚起の活動を続けていきます。

DSCF2800 DSCF2811