ヒューマンライツ・ナウは、3月2日、「イラク戦争から13年 泥沼の紛争はどうしたら解決できるのか。 高遠 菜穂子 氏 イラク報告会」を開催しました。
以下イベントに参加したインターンの報告を紹介します。
3月2日、HRNは、イラク戦争から13年が経ち、自称「イスラム国(IS)」の活動によって混乱を極めているイラクの情勢を受け、長年現地で紛争に向き合ってきた高遠菜穂子氏(エイド・ワーカー、HRN会員)をゲストに、報告会を開催しました。高遠氏は、紛争地域へのアクセスが極めて難しいことに加え、ISがジャーナリストをターゲットにしていることから現地の実態を報道することが非常に難しくなっているとしたうえで、写真・動画を見せながら貴重な現地の生の声を伝えました。特に、欧州に辿りついた難民がメディアに取り上げられる一方で、金銭的な理由などで国内に留まらざるを得ない国内避難民や、シリアからイラクに逃れている近隣諸国の難民の問題などが十分に把握されていないと指摘。また、病人やけが人、障がい者が自らを家族の重荷だと捉えて一人で第三国定住へと向かう事例が多いなどメディア報道では見られない過酷な現実を紹介。特に迫害されるスンニ派の苦悩を伝え、こうした現在の惨状の背景としての国際社会の10年以上にも及ぶ無関心に言及しました。
一方で、そのような困難な状況の中でも「日本は戦争をしないでくださいね」と声をかけてくれる現地の人がいると述べ、戦争をしない国として日本が貴重な価値を持っていることを改めて示しました。会場からは、国連職員、JVC職員など、イラク問題にかかわる方々も発言、イラクの危機的状況を紹介しました。最後に、高遠氏は、日本が平和的にこの問題に貢献できる道はあるとして、国内避難民支援や近隣諸国への難民支援に力を入れることが大切だとしました。イラクの惨状は国際社会の無関心によってもたらされたことを改めて強く認識するイベントとなりました。HRNでは、今後もイラクで起きている人権侵害について声を上げ続けていきます(高橋知子)