【イベント報告】7/3(金)開催: 女性が活躍するってどういうこと?~女性活躍法を問う~

2015 年通常国会で、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(通称:女性活躍推進法)が審議され、成立。ヒューマンライツ・ナウ は同法案審議中の2015 年7 月3 日にシンポジウム「女性が活躍するってどういうこと?~女性活躍法を問う~」を開催。「女性の活躍」を推進する様々な方針が打ち出されている中、この法案が、女性の政治参加、職場での女性の地位、子育てと仕事の両立支援、格差と貧困など、現実に女性たちが直面している深刻な問題に応えるものになっているのか?という観点から議論をしました。スピーカーとして、マタハラnet(マタニティハラスメント対策ネットワーク)代表の小酒部さやか氏、東京都議会議員の塩村あやか氏、上智大学法学部教授の三浦まり氏をお呼びし、問題提起をいただきました。

マタハラ- 女性だけ、男性だけ、でなく社会全体の改善が必要

小酒部氏は、ご自身が世界の勇気ある女性100 人という賞を先進国主要7 カ国(G7)出身者で初めて受賞したということを紹介、これは日本が女性の労働環境の分野でまだ後進国であることの表れだと指摘。そして、マタハラの加害者は実は女性の方が多く、マタハラの原因である長時間労働や性別役割分業の意識などの社会的土壌を根本的に改善しなければ、パタニティハラスメント(男性親に対するハラスメント)といった新たなハラスメントにもつながりかねないと警鐘を鳴らしました。また、マタハラ解決は、少子高齢化が進む中で労働人口減少の歯止めや介護環境の改善につながるとし、社会としてマタハラ解決に取り組むことの重要性を示されました。

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女性の政治参加-日本は世界134 位の現状

次に、塩村氏は、日本の女性の政治参加について、日本の女性国会議員の割合が9% 台と世界134 位であり、世界平均の22%台に対し大きな開きがあること、地方議会では女性議員ゼロの議会も一定数あると説明し、女性議員が少ないことは深刻な問題だと訴えました。また、その原因として政治活動や支持者とのつきあいなどの活動と家事の両立の困難性、マイノリティである女性議員の意見が反映されにくい文化・慣行を指摘。また、ご自身への「セクハラヤジ」以降も根拠のない誹謗中傷が続いたこと、メディアによる悪質な歪曲報道の影響も説明されました。最後に、政治家が女性議員に対して理解を深めたり、制度改革を進めるだけでなく、有権者がより真剣に政治を考え、積極的に政治参画していくことが重要であると訴えました。

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誰のための女性活躍法なのか

最後に三浦氏は、女性活躍法について、女性の採用・昇進等の積極的な機会提供、職業生活と家庭生活の両立を目的とした法案であるとしつつ、非正規雇用や家庭内労働、男性の労働環境問題に関しての施策が置き去りにされており、結局エリート層など限られた女性の活躍を促進する法律に過ぎないのではないか、と指摘。特に、働くシングルマザー率が5 割超と世界基準に比べても高く、シングルマザーの貧困問題や非正規雇用の拡大が深刻である日本の現実を指摘されました。政治参加については、現在世界の潮流であるパリテ(男女同数)について説明され、公職選挙法に「性別比例原則」を導入することを提案されました。

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その後、HRN のインターンが渋谷で行った、女性活躍に関する意識調査に関する街頭アンケートの結果が報告されました。「女性がもっと働きやすい社会にするために必要なことは」との質問に、若者から様々な声が寄せられたことが紹介されました。会場からも、学生と社会人の方が発言。実際に会社でパワハラに遭った経験などを訴えていただきました。

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最後に、国連広報センター所長の根本かおる氏、自身の裁判などの経験をもとに派遣労働の問題について発言・取り組みを続けてこられた廣瀬明美氏、女性と人権全国ネットワーク共同代表をされている佐藤香氏より、それぞれの立場からコメントを頂き、議論を掘り下げました。

イベント後、2015 年8 月25 日に女性活躍法が成立し、今後も様々な政策が推し進められていくと考えられます。このシンポジウムを通して、実際には企業、国会、家庭など様々な場面で課題が山積みであることが確認されましたが、同時に、これらの課題の解決のために、多くの方と経験・意見を共有しながら、より良い政策、改善策のために、議論していくことの重要性を感じさせるイベントとなりました。HRNでは、今後も女性の権利とエンパワーメントのために提言や発信等の活動を続けていきたいと思います。( 波江優)