2015年10月9日に「トークイベント:海外から見た日本の言論の自由」を開催致しました。
当日は、満席となり多くの方が参加され、3名のゲストスピーカーが、日本の言論の自由について鋭い視点で問題提起されました。後半の質疑応答でも多くの方から質問を頂き、非常に内容の濃いトークイベントとなりました。
ご来場いただいた方ありがとうございました。
また、今回参加できなかった方も、ヒューマンライツ・ナウでは国内人権問題について今後も様々なイベント・セミナーを開催していきますので、ぜひ次の機会にご参加いただければ幸いです。
尚、IWJのアーカイブリストに、当企画の動画と記事が掲載されました。ぜひご覧ください。
2015/10/9 「日本人には革命の歴史がないから民主主義の大切さがわからないのでは」
~前ニューヨークタイムズ東京支局長らが日本の言論の自由の「惨状」を痛烈批判!
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/269678
参考>2015/10/9岩上安身による元最高裁判事・濱田邦夫弁護士インタビュー(動画)
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/269676
以下、イベントに参加したインターンの方の報告を紹介いたします。
トークイベント:海外から見た日本の言論の自由
昨今、政府・与党によるメディアへの干渉・圧力が強化され言論の自由が脅かされていることを受けて、HRNと青山学院大学人権研究会により「トークイベント~海外から見た日本の言論の自由~」が10月9日夜に開催されました。ゲストには元New York Times 東京支局長であるマーティン・ファクラー氏、上智大学国際教養学部教授の中野晃一氏、弁護士/元最高裁判事の濱田邦夫氏をお迎えし、真剣な議論が展開されました。金曜の夜であったにもかかわらず会議室が埋まるほどの多くの人が参加し、日本の言論の自由と私たちにできることを考える有意義な時間となりました。
まず、ファクラー氏は現在日本のマスコミは戦後最大の危機にあると指摘し、マスコミの経済的問題と自粛問題について触れました。インターネットの普及で経済的に苦しく余裕がなくなっているメディアは、政治的圧力や世論の圧力に負けてしまい、また攻撃を受ける他のメディアを守る余裕もないため、結果として歴史修正主義には反論しないといった自粛問題に発展していると言います。このタブーの要因としてファクラー氏は安倍政権のアクセス問題もあると分析します。政権は気に入っているメディアにのみ情報を積極的に与えるなどの優遇策をとっています。そのため、厳しい財政状況も相まって日本のメディアは主体性、独立性がなくなり、権力のための番犬に成り下がっていると言いメディアを批判しました。「僕は責任はどこにあるかというとメディア側にもっとあると思うんですよ。そういう圧力に負けてしまうメディアが悪いと思うんですよ。なぜ立ち向かわないのかと聞きたい。」中央政府の力が強くなってきている今だからこそ、唯一の政府に対するチェック機能としてのメディアが力を持つべきであると述べました。
中野氏は安倍政権の言論・報道の自由の抑圧が成功したことを受けて政権与党が歴史修正主義を強く推進していることを話しました。「政権与党、特に自民党、の公式な政策に歴史修正主義がなったという現実」があると言います。民主党の弱体化と読売新聞の右傾化により野党やメディアがチェック機関として機能しなくなったことを受けて、安倍政権は慰安婦問題を朝日新聞のねつ造であるというレッテル張りに成功し、歴史修正主義の海外キャンペーンも始めています。安保法案に関しても、米国に気に入ってもらい日本の歴史修正主義を受け入れてもらうために安倍政権は行っているのではないかと、中野氏は疑念を表します。そして現状として、「彼ら(現政権)は本気で海外キャンペーンを行っている。」と述べ、海外メディアや各大学に総領事館から日本の外交官が訪れ、記述の訂正に圧力をかけていること、また中野氏自身が陥れられそうになっていたことも明らかにしました。中野氏は「非常に心配なんですよね。日本はこれでどこに行ってしまうのだろうかと。」と不安を露わにしました。
「日本の政治家にも国際的に通用するためには知性・品性・理性が必要ではないですか。そしてこれらは国民にも政治家を選ぶために必要だ。」濱田氏は政治が激動する中で「そのままで流されていてたまるか。自分のためにも発言しなければならない。」と思い、自身でマニフェストを作成しました。その中で、主権者が自分の主権を行使する方法として国民が声を上げることが重要だと言います。「知性と品性と理性を尊重した内外の活動行動をしないと日本という国自体の存立が国際的には認められない。」「これを正すのは日本国民。我々が立ち上がってそれぞれの立場に立って言うべきことは言う」とはっきりと述べました。笑いもありながらの熱いトークの最後に中野氏は「言論の自由・学問の自由・憲法、法の支配をみんなで真剣に守っていく。そういう社会を作るために、私も微力ながら今後も頑張るつもりです。」と自身の決意を表しました。
ゲストの三方からお話を伺った後は、質疑応答で熱い議論が行われゲストの願いも見られました。印象的であったのは、言論の自由についての質問に対し三方全員から「言論の自由はあるかどうかではなく、行使するかどうかである」という発言が共通して出たことで、国民が声を上げていくことの大切さを改めて感じました。それに続いて、中野氏は「私たちもひとりひとりで孤独に考えて言論の自由・表現の自由を行使できるそういう人間であるか、その勇気があるか。知性というのは後からついてくるわけですよね、学べばいいわけですから。ただ真実を知ることにも勇気があることなわけで、歴史修正主義者というのは臆病なわけです、真実と直面する勇気がないから。だからやっぱり勇気なのだと思います。」と勇気が根本として必要であることを述べ、最後に濱田氏が「空気を読みすぎるな!」と参加者を激励しました。
最後に伊藤和子HRN事務局長が「言論の自由は一人ひとりが行使しない限り日本は危ない。しかし新しい民主主義を私たち一人一人がこれからどう盛り上げていくのか、取り返すために一緒に頑張っていきたい。」と述べ、閉会しました。(文責・雑賀光)