イラク戦争から 10周年、イラクでは罪もない新しい命が今も奪われ、苦しんでいる。
人権団体ヒューマンライツ・ナウが、2013年イラク・ファルージャにおける先天性障がいに関する事実調査報告書を公表。
今年はイラク戦争開戦から10周年目にあたる。開戦以来、特にこの数年間、イラクの医者らは先天的障がいの例の著しい増加を訴え、戦争による環境汚染が地元住民、特に乳児や子どもの健康に非常に大きな悪影響を及ぼしたことが疑われている。
例えば、2004年にアメリカ軍により2回に渡り激しく攻撃されたファルージャでは、ファルージャ中央病院の記録上、2003年以来ファルージャで生まれた15%の乳幼児に先天性障がいがあるという。
東京を本拠とする国連特別協議資格を持つ国際人権NGOであるヒューマンライツ・ナウ(Human Rights Now)は2013年初期、イラクでの先天的障がいの増加の実態を調査するため、イラクのファルージャで1カ月にわたり、ファルージャ総合病院の協力を得て事実調査を行った。今日、ヒューマンライツ・ナウはこの調査について“Innocent New Lives are Still Dying and Suffering in Iraq”という50ページ以上の報告書を公表した。
報告書: 報告書
付属書類:
これは、国際人権団体が行った、2003年以降イラクでの先天的障がいについて調査した初めての報告書である。イラクに事態が深刻であるにも関わらず、アメリカやイギリスによる、または国連などの独立国際機関による、イラクにおける毒性兵器の健康影響に関する十分な調査は行われてこなかった。
一ヶ月に及ぶ広範囲にわたる調査を行った結果、事実調査チームは先天的障がいの性質と蔓延が異常な事態になっていることを確認した。調査結果は、イラク戦争後にこうした健康被害が著しく増加したことを示すものである。ヒューマンライツ・ナウはファルージャで健康に関する権利と子どもの命が深刻に侵害され、イラクでの先天性障がいについて直ちに国際社会の関心が寄せられるべきであると考える。
報告書には、70以上もの最近の先天性障がいの乳児の症例と写真が、ファルージャ総合病院と父母の了解のもと公開されている。「このような写真の公開はセンシティブな問題であるが、家族、特に母親たちはイラクにおける先天性障がいの蔓延を強く訴えたいという意向を示していた。深刻な事態を世界の人々、とりわけ責任を負うべき国・国際機関に是非とも知ってほしい」と事務局長伊藤和子はコメントした。
2003年のイラク戦争中および占領下で使われたウランや兵器用の重金属に含まれている環境汚染物質が、先天的障がいの結果に起因する強い可能性があることは様々な科学文献が指摘している。しかし使用された毒性兵器に関する詳細情報が十分に公開されていないため、問題の原因は未だ明らかになっていない。
無実の子どもたちの犠牲をこれ以上拡大しないため、イラクにおける先天性障がいや、有害物質に関係する病気の蔓延について、イラク戦争で残された軍需品の部品や破片との因果関係も含め、包括的な調査を早急に行うことが重要である。先天性障がいを引き起こす物質と蔓延の状況を調査し、原因を突き止め、有効な公衆衛生政策および医療を確立し、被害者への適切な補償の提供をしなければならない。
また、ヒューマンライツ・ナウはイラク政府に対し、戦後の健康被害状況に関する調査を行う独立調査委員会を設置するよう要請している。さらに、国連人権理事会に対し、イラク戦争の非人道的、毒性兵器の使用を含めたすべての人権侵害、および健康に対する権利を取り巻く現在の状況について調査する措置をとることを要請する。
WHOは、イラクにおける先天性障がいを調査しているが、その結果は未だ公表されていない。ヒューマンライツ・ナウは、WHOに対し、公衆の健康に関する問題が明らかになった場合には、これに対処する政策策定に必要な技術援助とガイダンスを提供すること、現象の疫学性質を明確にするため更なる調査を行うことを要請した。
以上