【声明】個人通報制度の実現に関する要請書

ヒューマンライツ・ナウは、以下の通り個人通報制度に関する要請書をリリースいたしました。
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内閣総理大臣  野田佳彦殿

法務大臣    小川敏夫殿

外務大臣    玄葉光一郎殿

 

                             2012216

                    (特定非営利活動法人)ヒューマンライツ・ナウ

                        理事長   阿  部  浩  己

 

               要  請  書

今年の通常国会において、国際的な人権条約に対する個人通報制度を導入するため、自由権規約第一選択議定書、女性差別撤廃条約に関する選択議定書を批准するとともに、拷問禁止条約、人種差別撤廃条約について個人通報制度受け入れの宣言を行うよう、要請します。      

 

1      個人通報制度導入の必要性

人権条約によって保障されている人権を侵害された個人が、国内での人権救済を求める措置を尽くしたのに救済されない場合に、条約で定められた人権条約機関に直接救済を申し立てる制度である「個人通報制度」は日本が批准する自由権規約、女性差別撤廃条約、拷問禁止条約、人種差別撤廃条約、強制失踪条約について既に発効し、さらに社会権規約、子どもの権利条約についても個人通報制度が誕生しています。

日本はいずれの個人通報制度も批准していませんが、OECD諸国のなかで個人通報制度を批准していないのは、日本を含む2か国のみ、G8では日本のみ、現在では、近隣の韓国、モンゴルをはじめとするアジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国にも個人通報制度が広がり、日本は世界のなかで取り残された状況にあります。


民主党政権の公約と現状

民主党は政権交代直前の2009年衆議院選挙マニフェストに、「人権が尊重される社会をめざし、人権侵害からの迅速かつ実効性ある救済を図る」という政策目標のもと、具体策として、「個人が国際機関に対して直接に人権侵害の救済を求める個人通報制度を定めている関係条約の選択議定書を批准する」と明記し、国民に公約しました。この公約から既に2年以上が経過しており、今こそ、政治決断を求めたいと思います。

20108月下旬に、民主党政策調査会の外務・法務合同部門会議は、個人通報制度を実現する方向性を決め、官房副長官に早期批准を要請したと伝えられています。また、2010830日には、法務省・外務省で個人通報制度を担当した当時の政務官が別紙のとおり覚書を交わして、省庁間の役割分担をすでに定め、個人通報制度批准に向けて具体的な詰めをしていくことを確認しています(当団体が情報公開請求で覚書を入手)

ところが、その後発足した野田内閣のもと、既に半年近くが経つにも関わらず、こうした前内閣での到達点を踏まえた前進は何ら見られません。

20122月上旬に当団体が外務省、法務省に確認したところ、批准のための具体的な計画について何ら明確な回答を得ることができず、内閣官房がこの問題について対応しているかも不明、との回答であり、覚書に記載された関連省庁との調整について開始されているかも明らかではありません。

このように、合理的な理由もなく、公約に掲げられた政策の実現が著しく遅滞している状況は遺憾といわなければなりません。


3  
一日も早い個人通報制度の実現を

日本は、国連人権条約機関による定期審査のたびに、人権状況の改善を求める勧告をいくつも出されてきましたが、日本はこれらの勧告の多くを履行せず、国際人権基準と日本の実情に大きなギャップが生じています。人権条約の個人通報制度を受け入れ、日本の人権状況の個々の事案について国際人権条約の基準によりレビューする道を開くことは、国際水準と日本の人権状況の深刻なギャップを解消し、日本の人権状況を抜本的に改善するために極めて重要です。

日本は国連人権条約機関から、個人通報制度の受け入れを何度となく勧告されてきました。2008年の国連人権理事会普遍的定期的審査においても、日本は個人通報制度の早期受け入れを勧告され、日本政府は「検討する」として勧告を受け入れました。しかし、日本は、これら勧告に従わず、未だに個人通報制度を批准しないまま、今日に至っています。このような状況を国際社会は厳しく受けとめています。

国連人権理事会による日本に対する第二回目の普遍的・定期的審査は2012年後半に控えており、日本の姿勢が世界からも問われています。

2012年通常国会中に、人権条約の個人通報制度導入を実現するため、政治主導による決断と政策の実施を強く求めます。


※資料※

個人通報制度に関する対応について(20110830)法務省・外務省.pdf