【声明】ガザ紛争:2月26日国連総会決議を受けての声明「日本とヨーロッパ諸国の賛成を歓迎する一方、国際社会のより積極的な行動が今後不可欠」

ヒューマンライツ・ナウは、ガザ紛争:226日国連総会決議を受けての声明を発表しました。

 

 

 

ガザ紛争:226日国連総会決議を受けての声明

 

 

   = 日本とヨーロッパ諸国の賛成を歓迎する一方、

           国際社会のより積極的な行動が今後不可欠 =

 

 

2010年3月2日

ヒューマンライツ・ナウ

 

 

新たな国連総会決議と真実究明の遅れ

 国連総会は226日、ガザ紛争に関する事実調査について、国連事務総長に5ヶ月以内にさらなる報告書を提出するよう求める決議を採択しました。

 200812月から20091月にかけてのガザ紛争では、民間人を含む1400名もの市民が犠牲になりましたが、国際人権・人道法の違反に対する責任追及は紛争後1年以上が経過した今日も進んでいません。

 国連人権理事会の任命した独立調査団(ゴールドストーン調査団)が紛争両当事者に国際人権・人道法違反があるとの報告書を公表したのを受けて、国連総会は200911月、紛争の両当事者に対し、「3ヶ月以内に、国際基準に立脚した独立した信頼性の高い調査」を行うように求める決議を採択しました。しかし両当事者とも求められる調査を履行しなかったため、さらに5ヶ月間延長されることとなったものです。

 ヒューマンライツ・ナウは、調査の遅延が被害者の願いに反するものであり、なし崩し的な不処罰の容認につながりかねないことを懸念し、国連が漫然と5ヶ月の経過を待つことなく、積極的な行動を取ることを求めます。

 

不十分な調査結果

 201025日の期限に先立ち、イスラエル政府、パレスチナ自治政府、ハマスは、国連総会決議に対する返答を、国連事務総長に提出しましたが、いずれも公正で独立した調査を実施したとは到底認められません。

 イスラエルは、2010129日に公表した調査報告書の中で、150件 の事件を調査したと発表していますが、調査の全容は公表されておらず、調査プロセスの透明性が確保されていません。そのうえ、調査方法は、① ガザの現地調査は行わない、② 被害者や目撃者からの事情聴取は行わない、③ 軍内部の非公開のブリーフィングをもとに事実を認定する、という極めて一方的なものであり、④現場で作戦に従事した兵士のみを調査対象としており、軍による命令や軍事行動の計画そのものの合法性、指揮命令系統に遡った責任を調査していません。また、調査の主体は軍から独立しておらず、公平・独立性もきわめて疑わしいものです。調査の結論も、「住宅密集地での白リン弾の使用は、国際人道法の違反にはならない」とするなど、国際人道法から著しくかけ離れた内容となっています。

 一方、2009129日にパレスチナ自治政府が、国連事務総長に提出した書簡は、パレスチナ自治政府による独立調査委員会の設置を通知するもので、実質的な調査内容の報告は一切含まれていません。201022日にハマスが提出した内部調査の要約は、ゴールドストーン報告書によって戦争犯罪に相当すると結論づけられたロケット攻撃について、軍事目標を狙ったものであり、文民の死傷は意図したものではなかったとしていますが、詳細は公表されていません。

 こうした状況に鑑みれば、単なる期限延長によって、国際水準に基づく、国際人権・人道法に立脚した真摯な調査が行われる保障はありません。

 ヒューマンライツナウは国連事務総長に対し、この段階で、国連人権高等弁務官および国際人道・人権法の専門家に意見を求め、イスラエルとパレスチナ側の調査の現状に関し国連としてすみやかに独立した評価を行い、独立、公正、透明な調査への具体的な勧告を行うことを要請します。

 

日本政府等の賛成を歓迎し、国際社会のさらなる役割の発揮を求める。

 今回の国連総会決議には、ガザ紛争以降国連総会、人権理事会で一貫して棄権票を投じてきた日本政府も賛成票を投じ、さらにイギリス、フランスを含む多くのヨーロッパ諸国が棄権から賛成に回ったことが積極的な前進として評価できます。

 ヒューマンライツ・ナウは、とりわけ日本政府に対し、日本の市民社会と共同して、数回にわたり要請、院内集会を開催してきましたが、今回の投票行動を歓迎するものです。今後も、パレスチナ問題、とりわけガザにおける国際人権・人道法の尊重と不処罰の根絶のために日本政府が総会、人権理事会、そして安保理などを通じて積極的な役割を果たすよう期待します。

 一方、これまでこの問題に役割を果たしてこなかった安保理には、イギリス、フランス、中国の常任理事国3ヶ国が今回の総会で賛成票を投じた新たな情勢のもとで、また両当事者が調査を履行しないなか、より積極的なイニシアティブが求められます。

 ヒューマンライツ・ナウは、安保理に対し、昨年9月のゴールドストーン調査団の安保理に対する勧告を考慮し、5ヶ月の期限を待たずにこの問題を集中的に討議する機会を設け、国際人権・人道法に即した独立、公正な調査が履行されているかをモニタリングすること、そして調査の不履行の場合は国際刑事裁判所の付託も含めた真剣な検討を行うことを要請します。安保理非常任理事国である日本政府にも安保理におけるイニシアティブの発揮を求めるものです。

 

以上