【NY事務所】NY人権高等弁務官事務所(OHCHR)

NY人権高等弁務官事務所(OHCHR

市民団体との取り組み向上に向けたミーティング

去る2018年11月15日にNY国連本部にて、人権高等弁務官事務所による市民団体との取り組み向上に向けたミーティングが開かれました。下記は、ヒューマンライツ・ナウNY事務所代表らによる報告です。

 

ミーティング内容

以下の内容が、主なテーマとして話されました。

  • 人権活動家の保護と市民社会スペースの確保
  • 貧困との戦いと、経済・社会・文化的権利の保証
  • 危機や紛争への対処
  • 差別との戦い
  • 全ての面で民主的かつ透明性のある統治

まずCIVICUS (市民社会と市民によるアクションの強化を目的とした市民団体の世界同盟) の代表から、地域・国・国際レベルでもっと市民参加型の民主的な市民主導の統治が必要であることが述べられました。また、経済の民主化による全ての人のための経済の必要性を強調するとともに、国連開発援助枠組み (United Nations Development Assistance Framework, UNDAF) に非営利団体がもっと参加することが呼びかけられました。

持続可能な開発目標(SDG)の枠組み内で市民参加型の統治プロセスをもっと育成する方法に関して、OHCHRは人権理事会へ報告するよう要請されている点が指摘されましたが、OHCHR側としては市民社会と相談していく方向でいることが述べられました。報告の締め切りは2019年9月です。一方でOHCHR代表からは、市民社会はこれら諸問題に取り組む役人に直接働きかけることができるし、そうするようことが奨励されているので、市民団体も基準的な報告要請だけに頼らないでほしい、とのリクエストがありました。何よりもまず、国連が諸問題を動かすために市民社会の存在は不可欠であることが強調されました。OHCHR代表はまた、人権の監視を怠る政府に代わって、最近は地方自治体が緩みを引き締めるためのステップ・アップをしてきていると言います。さらには、国連、国際通貨基金(IMF)、世界銀行(World Bank)、その他の国際機関内に市民社会のスペースを置く必要があることも指摘されました。OHCHR代表は続いて、これらを考慮する上で念頭に置くべきなのは、「21世紀の市民社会の参加とはどういったものか?現在のニーズに合った方法で非営利団体と取り組んでいくには、国連機関はどう変われば良いのか?」などの問いかけではないか、と述べました。最後に、個人的に力を入れている問題は、世界中全ての人のためのシステムを開設すること、富や財産の極性可(極度の偏り)と戦うこと、ならびに民営化や自由化にともなう問題に取り組むことで、特に懸念されるのが政治的占領(Political capture)だということが述べられました。

質疑応答(Q&A

質疑応答では、数人の市民団体の代表者らによって、ロヒンギャ問題の状況にフォーカスが当てられました。そのうちの一人は、ロヒンギャの強制帰還が国連総会の第三委員会で扱われているが、現時点では難民保護のための国際的な取引なしに進められている、と指摘しました。難民は市民権を持たなければならなく、帰還された難民は「モデル村(model villages)」と呼ばれる収容キャンプへ強制的に入れられのでは、という恐れを共有しました。数人の市民団体代表者からは、カレン(Karen)族やシャン(Shan)族など他の民族グループも攻撃されている中、ロヒンギャ問題におけるミャンマーのアカウンタビリティ(罪への責任を問う)への物差しとして何が適用されるのか知りたい、という声もあがりました。

それに対してOHCHR代表は、公共施設やサービス面だけでなく、大量虐殺の対処法、被害者への保証準備、弱い立場の人々の保護、そして進行中の残虐行為の阻止も含めた現場状況が揃うまでは、難民は帰還されるべきではない、というのがOHCHRの公的ポジションであると伝えました。この点において、将来の刑事訴追に向けた証拠保存を含め、事実調査団やフォローアップ・メカニズムへの勧告は不可欠です。それに加え、市民権の必要性、移動・行動の自由、少数民族の迫害や抑圧からの解放、などのロヒンギャが直面する問題の根底に対処する必要があります。

帰還の面で中心的な問題は、任意性です。誰しも本人の意に反して送還・追放されるべきではありません。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、この「任意性」の判断を委任されており、「帰還への同意は疑問の余地のない絶対的なものであり、報告されなければならならず、プレッシャーや偽の主張によるものであってはならない」としています。このように、安全で威厳のある任意的帰還であることが基準とされています。

別の市民団体からは、市民社会の「参加」とは、声明文を読む数分間の参加以上のものでなければならないことが述べられました。市民団体はむしろ、会議の準備や決定・交渉プロセスに参加する権限を持つべきであると同時に、その点においてジュネーブの人権理事会は真の意味で市民団体の参加を許している、との指摘もありました。

これに対してOHCHR代表は、市民社会の参加の基準に関して以下の点を挙げました。

  • 市民社会の参加は、自由でアクティブで有意義(実際に結果に影響をもたらすことができる)でなくてはならない
  • その点では、持続可能な開発目標(SDG)文書作成は良いスタートだったと言える
  • 市民団体の参加については、長い伝統のあるジュネーブの方がわずかに良いと言えるが、それでもジュネーブにおける市民団体の参加時間がここ数年で大幅に減らされている
  • 人権に背いたり市民社会スペースを崩したりして、正当な市民団体への貴重な制限時間を奪う「非営利団体」(国がスポンサーで、束縛状態にあるような団体)に、同じ非営利団体として立ち向かうことも必要である

別の市民団体代表からは、高齢者の権利に関するOHCHRの取り組みについて知りたい、という声が上がりました。高齢者の権利を保障する条約の必要性は認めるものの、政府が条約草案に向けて動きだすためには、国レベルのプレッシャーをかける必要があり、特にヨーロッパ諸国を説得するのは至難ではあるが、興味深い討議はヨーロッパでも展開されていた、とOHCHR代表は述べました。

Jacob Blaustein Institute という団体の代表者からは、中国におけるウイグル人の迫害問題が持ち出されました。OHCHR代表はそれに対して、中国政府との話し合いは進んでいると述べました。また、最新の普遍的・定期的レビュー(Universal Periodic Review, UPR)への批評に対しては、「各レビューは、三つの報告書をOHCHRが一つにまとめて、最終的報告書として出しています。報告漏れや見落としなどないよう最大限の努力はしていますが、非営利団体や全ての国連人権メカニズムによるモニタリングは常に重要です。」という応答がありました。

シーク教徒連合(United Sikhs)と世界シーク教徒議会(World Sikh Parliament)は、増加中のヘイト犯罪やヘイト・スピーチについて話し、どうすればアメリカ国内のヘイト犯罪を告訴したり防止するためのメカニズムをつくることができるのか質問しました。また、シーク教徒ディアスポラを代表して行っていた取り組みの概要についても述べました。それに対しOHCHR代表は、「我々は、極度な宗教的不寛容の時代に生きています。」と前置きし、政治的リーダーたちは国際人権法に違反して、そのような不寛容さを奨励したり、そうでなくても反対せずにいる、と述べました。このようなリーダーシップは、ヘイト犯罪やヘイト・スピーチの増加にとって直接的関連性があり、それらリーダーのアカウンタビリティを追求する必要があることも指摘されました。さらには、19条(言論の自由)はこの点で重要である中、ヘイト・スピーチの防止、告訴、原因の取り除きに対する強い義務を課する20条が見過ごされていることが述べられました。

そしてOHCHR代表は、シーク教徒団体がバシェレ人権高等弁務官に送ったこの件に関するメモランダムには返事が来る、と伝えました。また、テロリズム法がどのようにマイノリティに対する迫害や恐怖の種を撒くのに使用されるかに現在フォーカス中のテロリズム防止に関する特別報告者 (Special Rapporteur on counterterrorism) にも、シーク教徒団体から報告を提出することが勧められました。