【イベント】5/16開催AsianActivist-α2009 報告

ヒューマンライツ・ナウは、今なお続くアジアの女性に対する深刻な人権侵害の実態に正面から光をあて、問題克服を目指し、世界を変えようとする女性活動家を、「Activist-α( アクティビスタ) と呼び、その活動を応援しています。

このたびは、LUSHジャパン・チャリティプログラムからの助成金を得て、深刻なDV被害が広がるインドで暴力に抗して果敢に活動する”アクティビスタ”のナンディーニ・ラオさんをゲストにお招きし、5月16 日に東京、17 日に大阪で「Asian Activist-α 2009(アジアン・アクティビスタ)世界を変えようとする女性たち」を開催しました。

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Asian Activist-α in Tokyo  2009/5/16

≪基調講演:ナンディーニ・ラオ≫

「インドの女性に対する暴力は、コミューナルな暴力、社会における宗教的な暴力、多数派から少数派へのn-rao.jpgのサムネール画像暴力、宗派の対立による暴力など複雑な要因があり、女性はカースト、性により二重に差別を受けている。

加えて、昨今の新自由主義的な経済政策に基づく暴力があり、特に女性に対する大きな要因となっている」と、インドの女性に対する暴力の現状を語ってくれたナンディーニ・ラオさん。

女性の社会的地位が低いため、女児の出産をためらう者が多く女児の出生率は男児よりも低いなど、統計的にもインドの女性に対する差別、暴力が根深いことがお話からわかります。

 さらに2005 年に制定されたDV法やインド女性運動の状況について、熱く語ってくださいました。

 「直面する最大の課題は、人々が女性に対して持っている先入観。伝統的な考え方であり、容易には変わらない。社会で平等を目指すには、ジェンダーの平等を語らなければならない。」と言うナンディーニさん。「男女双方のためによいものとして社会を変えることを認識しなければならない、そのようなメッセージを届けようとしている。」という言葉には、会場からも共感の拍手が沸き起こりました。

 ≪後半 シンポジウム≫

*ナンディーニ・ラオ(インド・女性NGO Jagori コーディネーター)
*コーディネーター:伊藤和子(弁護士、ヒューマンライツ・ナウ事務局長)

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*林 陽子(弁護士、女性差別撤廃委員会委員)

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*大崎 麻子(開発政策、ジェンダー専門家)

 冒頭、HRNの事務局長の伊藤和子氏は「インドではショッキングな現状がある一方、女性たちの運動が非常に盛んで学ぶ必要があると感じている」と述べHRNの女性に対する暴力に関するプロジェクトや、昨年9月のインド現地調査の報告書「尊厳ある女性たちの生を求めて」の完成が報告されました。

 女性差別撤廃条約委員会の委員を務める林陽子氏は、今年で採択30 年を迎える女性差別撤廃状況の批准状況や、女性に対する暴力をめぐる国際的な取り組みの歴史について概観した上で、移住労働者、難民、疾病、貧困等の事情がある女性など、権利を回復するために通常の女性たちよりも大きな障害がある女性たちに対する「複合差別」の問題について触れ、形式的な平等的取り扱いではなく、特別な配慮や措置が必要な女性たちについては、個々の状況に応じた対応が必要であると指摘しました。

 また国の役割について、女性差別撤廃条約の選択議定書においては、女性に対する暴力について、国家が相当な注意を払って予防、調査、訴追、処罰、補償等を行う義務があるとされているが、日本においても、特に身近な男性からの暴力について被害者が声を上げていない現状があり、被害者の救済のための国の対策がまだまだ不十分で、これは日本だけでなく各国に共通する問題であるということでした。      

 複合差別の問題に現れているように、さまざまな境遇の女性がいる中で、果たして女性が女性であるというだけで連帯ができるのか、との問題提起もなされました。 大崎氏は、開発のゴールは世界中の男女が人間らしい生活ができるようになることであり、開発は人権の原則に基づかなければならないとして、開発と人権が不可分であると述べ、女性に対する暴力の要因として、男性と女性の力関係、社会通念、経済的不均衡、法整備の遅れ、女性参画が不十分であることなどを指摘しました。そして、女性に対する暴力は人権侵害として許されないだけでなく①被害女性への影響、そのケアのためのコスト②経済社会的な
コスト ③MDGs 達成の障壁としてのコストなど、社会的な「コスト」の観点からしても看過できない、と女性に対する暴力を「開発のコスト」という視点から分析しました。

 日本の開発支援政策においては、こうした「コスト」に関する認識を高め、ODA 政策、予算配分、事業の実施に、ジェンダー主流化を徹底し、暴力対策へさらなる支援をすることが必要であると、ドナー国としての日本の責任について指摘がありました。

 その後の討論では、日本のODA 政策の問題点や、インドのDV法の施行状況、経済不況、グローバリゼーションの影響など幅広い議論がされ、会場からも複数の質問や意見が出され、予定時間を過ぎてもなお議論がつきないほどの熱気でした。

 ラオ氏からは「女性の価値をおとしめる考え方は絶対に受け入れられない。どのような場でも訴えていかなければならない。どのような立場でも、どのような場所でも。林先生が言っていた、女が女であるが故に連帯できるかどうかという問題について、連帯していかなければならないのだと言いたい」と力強いメッセージをもらい閉会となりました。

※この後の第二部では、インド料理を楽しみながら、呼びかけ人やゲストのリレートーク、インド舞踊団コンテンポラリー・ナティヤム・カンパニーの井上佐知子さんによる華麗なインド舞踊が披露され、会場は大いに盛り上がりました!