【声明】麻生太郎副総理兼財務大臣の日本国憲法改正にかかわる「ナチス」発言について

ヒューマンライツ・ナウは、本日8/2付で下記の声明を発表し、
安倍晋三総理大臣、麻生太郎副総理大臣、菅義偉官房長官宛てに
送付いたしました。

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【声明】

麻生太郎副総理兼財務大臣の

日本国憲法改正にかかわる「ナチス」発言について
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1   麻生太郎副総理兼財務大臣は、7月29日の国家基本問題研究所月例研究会で発言し、日本における憲法改正に関連して、ナチス・ドイツについて言及し、「民主主義によって、きちんとした議会で多数を握って、ヒトラー出てきたんですよ。ヒトラーはいかにも軍事力で(政権を)とったように思われる。全然違いますよ。」などど述べた。そして、「だから、静かにやろうやと。憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。」と述べた。[1]

8月1日、麻生氏は、「私のナチス政権に関する発言が、私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾である。私は、憲法改正については、落ち着いて議論することが極めて重要であると考えている。この点を強調する趣旨で、同研究会においては、喧騒にまぎれて十分な国民的理解及び議論のないまま進んでしまった悪しき例として、ナチス政権下のワイマール憲法に係る経緯をあげたところである。私がナチス及びワイマール憲法に係る経緯について、極めて否定的にとらえていることは、私の発言全体から明らかである。ただし、この例示が、誤解を招く結果となったので、ナチス政権を例示としてあげたことは撤回したい。」として、発言を撤回した。[2]

発言の撤回は当然であるが、7月29日の発言は、「あの手口学んだらどうか」としてナチスに言及しており、「悪しき例」として取り上げた趣旨でないことは明瞭である。

2   第二次世界大戦で最悪の惨禍をもたらしたナチスのファシズム政権は、ユダヤ人迫害と強制収容所収容、大量虐殺、表現の自由の弾圧、反対派の弾圧、数々の戦争犯罪など、人類史上最悪の人権侵害をもたらした。この反省に立ち、人権侵害を生み出し、民主主義を否定するファシズムを二度と繰り返さないことは第二次世界大戦後の国際社会の最も基本的なコンセンサスである。ファシズムの到来のプロセスについて、肯定的な評価をし、「手口学んだらどうか」等と示唆することは到底許しがたいことである。ナチスを肯定する発言は、民主主義国家の主要閣僚としてあるまじき言動・姿勢である。

麻生副総理・財務大臣は、ファシズムの犠牲となったすべての人々に謝罪すると共に、直ちに辞任すべきである。

3   麻生副総理・財務大臣は、「憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった」と述べた。

現実にはナチス憲法は存在せず、ドイツのワイマール憲法および立憲主義そのものがファシズムの到来と全権委任法によって停止に追い込まれたものであるが、その過程は静かなものではなく、こうした動きに反対した人々が苛烈な人権弾圧を受け、表現の自由を奪われた歴史がある。

こうした、人類史上最悪の人権侵害が完成した過程に対する著しい無理解のうえにたって、日本の憲法改正を議論し、推進しようする動きは重大である。憲法は、人権尊重・立憲主義・民主主義を定めた国の最高法規であり、国民の十分な議論を尽くさないまま「だれも気づかないで変わった」等ということは到底あってはらない。麻生発言は、民主主義・立憲主義についても著しい無理解と言わざるを得ない。

4   東京を本拠とする国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、この言語道断の発言に強く抗議するとともに、麻生副総理・財務大臣が重大な発言の責任をとって、直ちに辞任することを求める。

同時に、安倍首相に対し、ファシズム到来のプロセスを肯定し、立憲主義・民主主義に対する理解に著しく欠ける、麻生氏の発言について、公式に強く非難するとともに、この発言に関する内閣としての基本姿勢を内外に示すことを求める。

                                                                                     以上


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[1] 朝日新聞・発言詳細 http://www.asahi.com/politics/update/0801/TKY201307310772.html

[2] 産経新聞 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130801/stt13080114060009-n1.htm



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