【レポート】第三国定住―各国再定住政策の比較検討(2009/05/18)

ヒューマンライツ・ナウは、2009年5月18日、「第三国定住―各国再定住政策の比較検討」と題するレポートを発表しました。

 

【レポート前書】

HRN理事長 阿部浩己 

 

 難民条約を実施するために難民認定手続が新設されてから2008年12月末までの27年間に、日本で難民としての保護を申請した者は7297人おり、このうち、508人が難民と認定され、その他に882人が人道配慮による在留を認められました。

 

 7300弱という申請数あるいは500強という認定数について抱かれる印象は様々でしょうが、これらの数字は、他の先進工業国はいうまでもなく、寛大な難民受け入れを行っている多くの発展途上国の実績に比べるのならなおのこと、圧倒的に僅少といわざるをえず、世界有数の経済大国の振る舞いとして、とうてい誇るべきものとはいえないでしょう。

 

 ただそうではあっても、問題の位相を精査してみると、日本における難民の保護・処遇については、近年いくつかの注目すべき変化を感得できることもまた確かです。一つは、難民申請者の「急増」であり、現に、12年間にわたって3ケタで推移していたその数は2008年についに4ケタに達しました。2009年も同様の傾向に拍車がかかっています。こうした「難民圧力」は、小規模な申請数を前提としてきた認定手続の有効性に大きな疑問符を投げかけるものとなっています。

 

 もう一つは、第三国定住プログラムの導入です。第三国定住とは、出身国以外の地に避難している難民を第三国が自発的に受け入れることを意味します。その「第三国」として日本が新たに名乗り出ることになったわけです。日本はインドシナ難民について第三国定住を実施してきた実績がありますが、その受入れが終息したことに伴い、新しく、パイロット・プロジェクトとしてですがビルマ(ミャンマー)難民を2010年から3年間、毎年30人づつ受け入れていくことになりました。

 

 難民に対してけっして寛大な政策をとってきたとはいえぬ日本が難民の再定住に自発的に乗り出すことは大いに歓迎すべきことに相違ありませんが、こうした機会をさらなる「前進」へのステップとするため、ヒューマンライツ・ナウは、パイロット・プロジェクトについての閣議了解を受けて見解を発表し、幅広い難民受け入れの推進や条約難民の処遇改善など6項目の提言を行いました。

 

 その際、ヒューマンライツ・ナウは、各国が先行的に実施している第三国定住の実態を精査する作業も執り行いました。本書は、その成果の一端を公にするものです。「パイロット」として開始されるプログラムを本格的に定着させ、いずれは世界に冠たるものに育んでいくためにも、各国の取り組みから学ぶことは少なくありません。本書がその一助になれば幸いです。

 

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0905183rdc.pdf