【声明】ワコール:「CSR調達ガイドライン」の策定を歓迎し、その確実な実施と、さらなる透明性の確保を期待する。

ヒューマンライツ・ナウは本日2017年11月17日、声明「ワコール:『CSR調達ガイドライン』の策定を歓迎し、その確実な実施と、さらなる透明性の確保を期待する。」を公表しました。

PDFはこちらよりダウンロードできます。また、下記に声明の全文をご覧になれます。

 


ワコール:「CSR調達ガイドライン」の策定を歓迎し、その確実な実施と、さらなる透明性の確保を期待する。

1  「ワコール」ブランドで知られる女性下着のメーカー株式会社ワコールホールディングスは11月1日付で、「CSR調達ガイドライン」を公表した。[1]

東京を本拠とする国際人権NGO、ヒューマンライツ・ナウ(以下、「HRN」)は、こうした動きを歓迎するとともに、株式会社ワコールホールディングスおよびその調達先に対し、この方針の確実な実施を呼びかける。

プレスリリースでは、「本年1月、東京を拠点とする国際人権NGOから、当社子会社である株式会社ルシアンの調達先工場における労働環境の問題について指摘を受けました。当社は、この内容を重く受け止め、ただちに当該工場に対する独自の調査を実施して是正を求めるとともに、当社グループの調達プロセスにおける社会的責任活動の調査・見直しを目的とする「CSR調達プロジェクト」を発足しました。当プロジェクトでは、「CSR調達ガイドライン」を策定するとともに、調達先における本ガイドラインの取り組み状況をモニタリングする仕組みを整備し、継続的な改善活動を実施してまいります。」とされている。株式会社ワコールホールディングスは、「まず、日本で販売する製品の80%程度をカバーする調達先を対象に実施し、順次、対象ブランド・地域を拡大します。並行して、原材料の調達先を対象に加える予定です」としている。

CSR調達ガイドラインを要約すると、HRNの懸念してきた事項に関しては、以下のとおりの条項が導入されている。

1) 従業員の人権尊重と、差別・ハラスメントの禁止、

2) 従業員が健康的、文化的な日常生活を送ることができるように、違法な長時間労働や過度な仕事の負荷を禁止、

3) 従業員が利用する施設の衛生の確保と、職場の衛星従業員の身体的負担や、危険物、その他悪影響を及ぼすものへの被曝への適切な対策、

4) 結社の自由と団体交渉権の保障、

5) 労働関係法令の順守、特に強制労働、児童労働の禁止、賃金・労働時間、休日、有給休暇等の労働条件に関する法令順守、生活賃金への考慮、

6) 外国人・移住労働者(技能実習生を含む。)を雇用する場合は、関係法令を遵守し、外国人・移住労働者の人権侵害につながるような不当な労働管理を行わない。

 

2   HRNは、2017年1月28日に、 「ワコール」ブランドで知られる、ワコールホールディングの国内グループ企業である株式会社ルシアンの委託先工場における人権・労働環境の調査結果を公表した

調査では、2016 年 8 月に 短期間に調査を行っただけでも、労働 安全環境が、ミャンマーの労働法の保障を下回ることが確認された。 また、最低賃金違反の疑い、及び、女性労働者への保護の欠如に関する労働者の訴えが確認された。

そこで、HRNは、株式会社ワコールホールディングスおよび株式会社ルシアンに対し、当該工場に関し、第三者機関による調査の実施と環境改善を求めるとともに、ミャンマーにおけるサプライヤー工場において、国際人権・労働基準及びミャンマー法を明確に遵守するよう提言を行うとともに、株式会社ワコールホールディングス全体として、サプライチェーンを通じた人権尊重のための取組みを要請してきたものである。

今回の「CSR調達ガイドライン」公表は、当団体の指摘を踏まえ、国連ビジネスと人権に関する指導原則に基づき、株式会社ワコールホールディングスおよび株式会社ルシアンがサプライチェーンを通じた人権・労働環境改善に真摯な取り組みを進めた貴重な成果のひとつと評価することができる。

そして、これをひとつのグッドプラクティスとし、未だ同種の調達指針を策定していない縫製業・製造業企業に対し、これに習った行動をとることを呼びかけたい。

 

3   同時に、株式会社ワコールホールディングスおよび関連企業に対し、この方針に即して、サプライチェーン上の労働環境改善を確実に進めていくために、 HRNは、以下のことを要請する。

(1) 委託先工場の経営層に対し、国際人権基準及びILO条約、現地法に基づく人権遵守に関する理解を促進する教育を実施すること

(2) 一次サプライヤーにとどまらず、国内外の製造委託先工場、素材工場、原材料調達先に早期にこの方針を徹底すること

(3) サプライチェーンを視野に置いた労働環境改善のアクション・プランとスケジュールを公表して、 説明責任を一層果たしていくこと

(4) サプライヤー・リストの公表を行うこと

(5) 監査の透明性と適正化を実現するために、第三者機関、特に現地の信頼できるNGOの協力を得ること。

(6) 当団体が調査対象としたZES 社における改善を引き続き、現地労働者の声を反映して進めていくこと

 

なお今回、外国人・移住労働者(技能実習生を含む。)を雇用する場合の法令順守、人権侵害につながる不当な労働管理の禁止に関連しては、HRNの本年1月の調査報告書公表後も、HRNに情報提供が複数寄せられており、深刻な懸念を抱いている。技能実習生含む外国人労働者を雇用しているサプライヤーについては早急な実態把握を行い、人権侵害をなくす施策を強く求める。

以上

[1] http://www.wacoalholdings.jp/news/2017/post-72.html