【イベント報告・動画掲載・メディア】7/5開催 HRN伊藤和子『ファストファッションはなぜ安い?』出版記念イベント「エシカルな世界を目指して」

7/5開催 HRN伊藤和子『ファストファッションはなぜ安い?』出版記念イベント「エシカルな世界を目指して」 の動画をアップしましたのでどうぞご覧ください。https://youtu.be/zEiiij0PsEc

(ゲスト:一般社団法人エシカル協会 末吉里花氏、ジュエリー株式会社HASUNA代表 白木夏子氏)

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イベントでは、まず始めに書籍の著者であるHRN事務局長伊藤和子から、本の内容である縫製工場における搾取的労働の現状など、続いて一般社団法人エシカル協会の末吉里花氏より「日本におけるエシカルの現状」、そしてエシカルジュエリー株式会社HASUNA代表の白木夏子氏より、エシカルなビジネスについて、ご紹介頂きました。

私たちが安くファストファッションを得ている背景に苦しんでいる人々がいること、エシカルに向けての動き、エシカルビジネスの取り組みと、「現状」「これからの取り組み」「アクション」が示され、充実した内容でした。バッグプロデューサー 吉田美子氏コーディネートによるパネルトークでは、それぞれのチャレンジや熱い思いが語られ、これからのエシカルな世界=人・社会・地球環境に配慮した倫理的に正しい消費・ライフスタイルへの多くのヒントが感じられました。

ヒューマンライツ・ナウは今後も「ビジネスと人権」に取り組み、ビジネスの陰で人々が苦しむことのないように、また、ひいては持続的な社会が築かれるよう活動いたします。

 

☆イベントの詳細はこちらをご覧ください。https://youtu.be/zEiiij0PsEc

 

☆「ファストファッションはなぜ安い?」はこちらから購入いただけます。https://goo.gl/JpdEgI

 

☆掲載記事

*情報サイト「ウートピ」

ファストファッションの裏側にあるもの 地球と人に優しい消費のカタチ  http://wotopi.jp/archives/38929

*弁護士ドットコムニュース

途上国の「労働搾取」で成り立つ「ファストファッション」、消費者はどうすべきか議論  https://www.bengo4.com/internet/n_4871/

 

以下、弊団体ボランティアによるイベント報告です。

 

HRNでは、7月5日、一般社団法人エシカル協会代表理事の末吉里花さん、エシカルジュエリーブランドHASUNA代表の白木夏子さんをお招きし、ファストファッションの現実をどのように変えるべきかについて議論するトークイベントを開催しました。

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私たちが安くてスタイリッシュなファストファッションを楽しんでいるその陰で、たくさんの人が驚くほどの低賃金で過酷な労働を強いられ、未来も奪われている。こうした現状に光を当てたHRNの伊藤和子事務局長の新刊書籍「ファストファッションはなぜ安い?」が出版されたのを記念して、HRNは7月5日、「エシカルな世界をめざして」と題したトークイベントを開催しました。イベントの第一部は、「エシカルな世界」を共通テーマに、伊藤和子氏、末吉里花氏、白木夏子氏が、それぞれのエシカルな世界をめざす活動について紹介しました。

 

市民一人一人の声が現状を変える力に

p4-5-%e4%bc%8a%e8%97%a4%e3%81%95%e3%82%93伊藤氏は、ファストファッション産業が発展途上国の労働者の犠牲の下に成り立っていることを、HRNが実際に行った調査を例に説明しました。バングラデシュの縫製工場「ラナプラザ・ビル」倒壊事故被害者の実態調査(2014年)や、香港NGO と共同で行った中国ユニクロ下請け工場での潜入調査(2014年)、カンボジアの縫製工場での聞き取り調査(2015年)について話し、途上国の労働者がいかに劣悪な環境で、低賃金の長時間労働を強いられているかを語りました。

また、中国ユニクロ下請け工場の調査結果は、記者会見で発表したところ、NHKやYahoo!ニュースなどのメディアに取り上げられ、大きな話題になったと述べました。このことが大きな脅威になり、ファーストリテイリング社が改善に乗り出す力になりました。このことから伊藤氏は「まだ道半ばとはいえ、私たち一人ひとりの消費者、市民が見ていることが現状を変えていくのではないか」と語りました。

 

エシカル消費とは「おたがいさま」の精神

p4-5-%e6%9c%ab%e5%90%89%e3%81%95%e3%82%93末吉氏は「エシカル」とは「人・社会・地球環境に配慮した『倫理的に正しい』消費行動やライフスタイル」のことだと考えていると述べた上で、一人ひとりの消費行動が最終的には労働者の貧困問題・人権侵害・環境破壊を生み出してしまうと指摘しました。そして、リサイクルやフェアトレードなど「エシカル消費」の重要性を訴えました。

また、企業・国連・日本における、エシカル消費に向けた取り組みについて紹介しました。エシカルな認証ラベルやフェアトレード認証製品の話に始まり、国連開発計画や、日本の消費者庁・東京都・教育現場などの取り組みについて説明しました。

最後に、エシカルは、日本人が大切にしてきた「おたがいさま」「足るを知る」の精神と通底するものがあると指摘し、「エ:影響を シ:しっかりと カル:考える」という形で「エシカル」という言葉を皆様に覚えていただきたい、一人ひとりの毎日の消費行動が何かしらの影響を与えており、重要になってきていると思うと語りました。

 

フェアトレードでエシカルなジュエリーを

p4-5-%e7%99%bd%e3%81%8d%e6%a7%98白木氏は、2009年4月にご自身が立ち上げたジュエリーブランドHASUNAについて紹介しました。HASUNAでは、素材調達の際に、白木氏自らが現地の発展途上国に赴くか、もしくは第三者機関の認証がとれたものを使用することで社会・自然環境に配慮したジュエリーを作っていること、現地のNGOを介したフェアトレード取引を行っていることを紹介されました。特にパキスタンでは、採掘された宝石の9割以上が密輸業者に買い叩かれ、現地の人々が貧困状態に陥っていると指摘し、現地の人々をサポートするNGOから適正価格で取引する重要性を述べました。

また、HASUNAを立ち上げたきっかけとして、貧困問題の研究をしていた大学時代、インドの農村部に住み込んだ経験を語りました。その際、学校にも通えず鉱山で働く子どもたちの暗い表情が脳裏に焼き付き、大好きなジュエリーを作ることで状況を改善したいと思ったのだといいます。

 

大企業に立ち向かうために

p4-5-%e5%90%89%e7%94%b0%e6%a7%98トークイベントの後半は、Y’s445 Bag Lifeプロデューサーの吉田美子氏をコーディネーターに、パネルトークを行いました。

伊藤氏に対し、白木氏は「ユニクロのような大企業に対して声を発するのは怖くないのか」、末吉氏は「調査報告を出すとき『いつまでに改善してください』という要望は出すのか。調査対象はどのように決定しているのか」と質問しました。

白木氏の問いに対して伊藤氏は「諸外国では、政府を批判する自由を奪われている国の人々に代わって、たとえ怖くても声を上げていかなければならないと思ってやってきた」と答えました。また、ユニクロの調査報告書を出した際は、名誉棄損訴訟やメディアを使ったバッシングの可能性を危惧したが、だからこそ潜入調査により証拠を積み上げ、反論のできない報告書を作成したと述べました。

末吉氏の質問に対しては、ユニクロの調査報告書を出した後、ユニクロ側からタイムスケジュールを示した改善計画が発表されたと答えました。一方でその改善の進捗については公開されず、消費者への説明責任が不足している状況を批判しました。また、調査対象決定のプロセスについては、様々なNGOとのネットワークから日常的に上がってくる訴えを聞いて選定し、調査に乗り出していると答えました。

 

エシカルがライフワークになるまで

吉田氏は末吉氏に「エシカルをライフワークとして捉えるようになったきっかけ」を尋ねました。

末吉氏は、TBS系『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターをしていた2004年、タンザニアのキリマンジャロに登頂したことがターニングポイントとなったと述べました。キリマンジャロの山麓には、山頂にある氷河の雪解け水で生活している人々がいるにも関わらず、自分が登頂してみると、その氷河が地球温暖化により9割方溶けてしまっていたことに、大変ショックを受けたのだといいます。この時、こうしたことを日本人に伝える活動をしたいと決心し、フェアトレードの活動を経て、エシカルをライフワークとするに至ったのだと述べました。

 

エシカルなブランドも成功できる

吉田氏は白木氏に「収益も得ないといけない中でどのようにブランドを存続させているのか」と質問しました。

白木氏は、原価を抑えられないことによるビジネス上の難点を認めた上で、高い技術をもつ日本の職人たちによるクラフトマンシップの担保と、妥協なきデザインの追求により、工夫しながら進めていると答えました。

 

NGO活動の原動力とは

吉田氏は伊藤氏に対して「一気に解決できない問題が多い中で活動を続けている原動力」について問いました。

伊藤氏は、全体としては進歩があり、誰かが笑顔になることがかけがえのない宝物だと思うと答えました。また、ミャンマーでの人権活動を例に、1年単位では困難でも5年単位、10年単位では確実に変わってきていて、それが喜びになると述べました。

 

「エシカル」という言葉の意味

トークイベントの最後には、参加者による質疑応答がありました。末吉氏に対しては「エシカル」という言葉が実質的意味を理解されずに広まることへの懸念や、「エシカル」の定義は人それぞれではないかという疑問が呈されました。

末吉氏は「エシカル」という言葉だけが先行してしまう点については、消費者庁と頭を悩ませているところだと答えました。「エシカル」の定義についても、行政が企業にエシカルな基準を設ける中で問題となっていると話しました。一方で、現状の環境問題に立ち向かい、社会に働きかけるために「エシカル」という価値観を有効に使うことの大切さを訴えました。

 

エシカルな消費はどのようにできる?13615178_1378720088810864_1132497712440133454_n

参加者からは、「エシカルを広めるにあたってそれぞれが心掛けていること」「自分自身で行っているエシカルな取り組み」についての質問もありました。

これに対して白木氏は、企業としてはエシカルという言葉を掲げるよりも、途上国の最高のジュエリーを作っていくというスタンスをとっていると述べました。また、自分自身では「楽しい気持ちで毎日を生きたい」という思いの中で、ブランドの理念に共感するものを購入していると答えました。

伊藤氏は、SNSを通じて企業に向けて「この商品は好きだけど、この問題は困る」というメッセージを発信することの重要性を訴えました。そして、批判するよりも、消費者としてメッセージを投げかけることで、企業の商品開発に影響を与え、トレンドをつくってほしいと語りかけました。

末吉氏は、伊藤氏に共感を示し、消費者の権利を最大限生かしてほしいと話しました。また、自分自身は顔の見える製品を手に取るように心掛けていると述べました。

最後に伊藤氏は、三人とも違う立場ではあるが「今後も良い社会をつくっていくために連携していきたい」と挨拶し、会は閉会となりました。(近森優衣)