【報告書】「グリーン」なEVの陰で ― 公正な移行(Just Transition)に向けたニッケルサプライチェーンの人権課題と日本政府の義務および日本企業の責任 ―

 

国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、電気自動車(EV)バッテリーに使用されるニッケルサプライチェーンにおける人権課題と日本企業・日本政府の対応に関する調査を実施しました。

近年、カーボンニュートラルの実現に向けてEVの普及が急速に進むなか、EVバッテリーの原材料であるニッケルの需要も世界的に拡大しています。一方で、ニッケルの採掘・精錬現場では、土地収奪や環境破壊、地域住民や先住民族の権利侵害、労働者の権利侵害など、深刻な人権問題が報告されています。

本報告書は、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、ニッケルサプライチェーンにおける人権リスクと、日本企業および日本政府の対応状況を調査・分析しました。日本の自動車メーカーおよび総合商社11社を対象にアンケート調査を実施し、うち、自動車メーカーにつき、アンケート結果及び公開資料をもとに、人権デュー・ディリジェンス、グリーバンスメカニズム、サプライチェーン管理、ステークホルダー・エンゲージメント等の観点から分析を行いました。

本調査では対象企業11社のうち4社から回答を得ることができ、調査の透明性を確保する観点から、回答企業の回答原文についても本ホームページの下部にてあわせて掲載しています。

調査の結果、ほとんどの自動車メーカーにおいてニッケル特有の人権リスクへの対応やサプライチェーンの透明性確保、採掘現場の労働者や地域住民が利用できる実効的な救済制度の整備などに課題が残されていることが明らかとなりました。

また、日本政府は「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定しているものの、その内容は企業の自主的な取組に委ねられており、人権・環境デュー・ディリジェンスを義務付ける法制度は未整備のままです。さらに、人権侵害に関する救済や監視を担う独立した国内人権機関も設置されていません。

本報告書では、日本政府に対して、国際人権基準に沿った人権・環境デュー・ディリジェンスの義務化、独立した国内人権機関の設置、ILO第169号条約の批准および関連法制度の整備等を提言しています。また、日本企業に対しては、経営レベルでの人権コミットメントの強化、鉱業・鉱物調達に特化した人権リスク評価の実施、労働者や地域住民が利用可能な実効的なグリーバンスメカニズムの構築、NGOや地域コミュニティを含むステークホルダーとの継続的な対話・協働の強化等を求めています。

脱炭素社会への移行は、人権の尊重を犠牲にして達成されるべきではありません。本報告書が、ニッケルサプライチェーンにおける人権リスクへの適切な対応を通じて、日本企業および日本政府による責任ある資源調達の推進と、公正で持続可能なエネルギー移行の実現に向けた議論の一助となることを期待しています。

 

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